-
かさなる
-
朔の唇は
まるで対のようにわたしの唇と重なり、
朔の舌は
ずっとずっと
わたしのものだったの?と思うほど従順で。
今晩こそさらってしまおう。
花の香りのお姫様。
そのまま肩に手を置いて
腕から背中へ滑らせたとき
ぴくり、と朔の身体が固くなった。
唇を、離す。どうしたのかな。
「朔?……痛いの……?ここ、」
なんで、こんなところが痛いの。
「……」
朔が目をあわせたまま
こまったな、という顔をする。
でも何も言ってくれない。
彼女から離れドアまで行く。
openになったばかりの札を
くるり、と裏返す。
close.
そして壁のボタンを押して
木製のブラインドを降ろす。
カラ、カラ、カラ……という
どこかのんびりした音だけが店内に響く。
高い天井までガラス張りの店内が
ふんわりした明るさだけを残して薄暗くなる。
朔は静かに立ったまま、
止めもせず
そんなわたしを見ている。
外の光は遮られ
静かな植物園のような空間。
閉店後のお花やさんはこんな感じなんだ、
贅沢だ……と、思う。
花を、独り占め。
「朔?」
朔が何か言おうとして…
でも声にならなかった。
朔の前に戻り
ちゃんと向かい合って。
そっと右手をとると、
湿布が貼ってある。
……熱い。これ、捻挫で腫れてる……。
「朔、ねぇ」
エプロンのリボンを、しゅっ、とひっぱると
ぱたりと、床に落ちる。
「朔、どうしてなにも言わないの」
朔のシャツのボタンのひとつめに手をかける。
「……サユミ、開けないで」
「嫌。見るよ」
ふたつ、みっつ、
朔は静かに目を伏せた。
床のエプロンの上に今度はシャツが滑り落ちる。
……。
白い綺麗な肌に
たくさんのアザ。……打った跡。
肩も、腕も、背中も。
ちょっとした打ち身、なんかじゃなくて
もっと……違う。
そっと触れる。
「……っ」
「朔…こ、れ……骨とか、大丈夫……なの」
「うん」
うん、て。
そっとそっと、もう一度キスをする。
今どうしようもなく、抱きたいのだけど。
痛そうで
思い切り抱き締めることも出来ないのに。
キスしながら
ブラも外す。
現れたふたつの乳房は
完璧な美しさで
そこにはアザがない。
ああ。そっか。
小さくうずくまって、
蹴るか、殴るかされたんだ…。
胸の尖端に口付ける。
やさしく、やさしく、そっと。
口のなかで固くなっていくそれが
とても可愛くて、愛しい。