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いつか、きえるのなら
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みっつも越えるところがあった。
退団を決心する瞬間。
退団を告げる時。
退団を、発表するとき。
あぁ。
そして昨日
ドキドキが終わった。
あとは、もう全力で
迷わずに高みを目指して走り抜ければいいのか。
心の何処かがホッとしてる。
そう。いつだって
舞台に総てを集中したい。
もうそれだけをすればいいんだ。
花組は大丈夫。
かいちゃんも、まいまいも、ゆきちゃんも。
わたしも、みんな大丈夫。
うん。
ふと手元を見る。
さっき受け取った
差し入れのカード。
かわいい紙箱。
ふふ。
なにかなぁ。
綺麗な字だなぁ。
あれ、………
〈花束は不可とのこと、
残りを渡したいです。朔〉
朔。
心臓がばくばくした。
紙箱のなかには
可愛い薔薇の蕾部分だけが
ちょこん、と入ってる。
リオサンバ…。
茎まで切ってあるのに、
まだ元気な蕾。そんなに、時間がたってない。
朔、そばにいるの?
朔、どこにいるの?
薔薇の箱の内側に電話番号を見つけた。
朔に、会いたい。