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ジークで1時間使って駄文書いてみた。「世界はいつも加速してる」
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お名前変換可能なので試行錯誤してもらうか、お近くのはちを捕まえてくださいw
かかった時間
100分
注意
○この二次創作は書き手の妄想と勘違いの産物です。
○本編読んだけど断片的にしか記憶ねぇもの。
○だからもう適当に書いてる
○ジークは偽物
○主人公ちゃんも偽物
これ見ても大丈夫?
それならばお暇つぶしにどーぞ!><
「話がある、あい」
「はぁ……でもそろそろハンスさんが来ますよ?」
「まだ時間はある、それよりも今俺達にとって必要な話がある」
「……そうですか」
ジークとあいが居る場所はふたりの部屋の出入口ドア前。
今ふたりはまさに公務へと向かおうとしていたところだった。それなのに。
「良いか、俺達はそろそろ3年目を迎えようとしている夫婦だ」
「はい……解ってます」
「慣れ親しむと言えば聞こえはいいが……愛情の伝達を疎かにすれば倦怠期というものにも繋がりかねない。そうだろう?」
「……そうですか?」
「そうなんだ! この愛と薔薇の日々にも載っているように……っ!」
ジークがまた登場人物の感情やその背景について熱く語るがあいはぼんやりと自分の両親を思い出す。少なくても自分の両親は毎朝ちゅっちゅちゅっちゅキスはしていなかった。
彼氏持ちの友人の愚痴ランキング1位と言っても過言じゃない、「なんで言葉や態度ではっきり愛情を示してくれないの!?」が基本なオリエンス出身なのでジークの愛情表現は過多であると言っても良い。寧ろあいは基本食べ物も愛情表現もオーガニックな薄味を好んでいる。
勿論ドストレートなジークの愛情表現も嬉しい。安心する。けども、なにも、そんな。
「……起き抜けのキスはいやだって言っただけじゃないですか」
「その回数が最近増えていると言っているんだ!!」
結婚当初……否、そもそもお付き合い当初からジークはあいより朝が早い。
あいが起きれば大体ジークは今日の情勢を確認していたり、あいが好みのハーブティーを用意していたりと活動的だ。そもそも起きたら……というのは成功例で、下手をすれば起こされていたりする。
おはよう、なんて言いながらキスをしたりされたりしていたのだが……最近、あいは朝一番のジークとのキスをなるべく避けていた。理由は言えない。
「良いか良く聞け。1日1回キスをするとする」
「え? ノルマキツくないですかそれ」
「それくらいクリアしろ! とにかく、1年は365日しかないんだ……後はわかるな?」
ここまで説明したのだから、後は悟れ。そうジークが言うのであいは鷹揚に頷く。
「365回もキスが出来ますね」
「365回しか出来ないんだ!」
あいが満足げに言うのにジークが速攻反論する。そんなジークに困りました、と表情を曇らせながらため息を落とす。
「よくばりですね……」
「なんとでも言え。俺は365回など納得しない」
ジト目で見られてあいはふと悩むポーズをする。
ジークが言いたい事は解る。本当に1日1回、目指せキッスでオリンピックという話ではなく、勿論冒頭の倦怠期云々も論点ではない。
この話の本質は「ジークは朝一番のキスが減って不満である」という事だけだ。それを理解しながらもあいはそのまま話を進める。
「……じゃあ、目標ノルマはいくつなんですか?」
「目標だと?」
「そうです。具体的な未来像が見えないと私だって努力しようがないじゃないですか」
「そうだな……年間3億くらいか?」
「キャリーオーバーしてても無理じゃないですか!」
「それくらいキスをしたいという比喩だ! そもそもお前が拒否しなければ問題なかっただろう!」
「別に拒否なんて……」
「今朝してただろう……!」
ああ、してたしてた。そりゃそうだ。乙女の事情がある。だけど夫であるジークには言いたくはない。
しかし女はアラサーゾーンに行くと色んな悩みも出てくる。どうしたって出てくる。最近流行の乙女ゲームじゃ避けて通るデリケートな悩みが山ほどある。
必死に年齢に抗っても、どんなに努力して体も魂も磨いたってどうしたって抗う事が出来なくなる瞬間があるのだ。例えば口臭とか。寧ろ口臭とか。
「ジーク……色々私だって頑張ってるんです」
「……一体なんの話だ?」
突然の会話の急展開、温度差に着いて行けずに首を捻るジークだがあいは深刻な表情で続ける。
「夜は臭いがキツそうな食べ物はなるべく避けるし、歯磨き……ピュオーラだって使ってます……!」
「……お前がライムミントのマウスウォッシュを愛用しているのは知っている」
だからどうした?論点はきちんと繋がっているのか?
ジークが不安そうにしているが、あいにしてみれば全て繋がっている。キスと歯磨き……かなり解りやすく密接に繋がっているじゃないか。それこそ察するべきだ。
「私だってクリアクリーンで大丈夫だった時代もあるんですよ! CMで良くやってる三十路過ぎたら、みたいな話も全部他人事でしたよ!!」
「あ、ああ……」
「きっと、いつか私だってああなるんだ……!」
「ああなる?」
「怖くて口にできません!!」
そう、20代後半アラサーの内は笑っていられるけど……実際三十路になったら口臭どころじゃない。
ぱんてぃーらいなーとかそんなもののお世話にだってなるのだろう。恐ろしくて何故お世話になるかは言えないけれど。
今から骨盤底筋をして未来に備えておいて損はない。レッツ華麗な加齢計画……と、その時点であいは色々と脱線している事に気づく。
「じゃあ、そういう事ですので」
「何も解決していないだろう!」
あいの勢いに圧倒されていたジークだが何ひとつ解決していない事に気づきあいを引き留める。
するとあいは絶望したような顔をして、堪り兼ねたように非難の声を喉から苦しげにひねり出す。
「なんで……っ! ジークと同じ歯磨き粉を使ってるのに私の方が朝の口臭がキツいんですか!?」
「……どういうことだ」
「大体ジークが用意したものを食べて、ジークと同じタイミングで歯磨きもしてるし、歯磨きチェックまでされてるのにどうして朝、私は臭ってジークの口臭はしないんですかって言ってるんですよ!!」
あいが言わんとしている事を理解は出来たジーク。だが理解は出来たが納得は行かない。
朝起きぬけなど人間誰しもある程度口臭はあるだろう。まるでない人間など稀だ。寝起き早々口臭がフルーティーだったりしたら逆に不安を覚える。
「……人間なのだから、朝起きれば多少の口臭くらい普通あるだろう?」
「してませんよ! ジークはぜんっぜんしてませんよ! 私は朝から不快感で一杯なのにっ!!」
なんなんだ、どういうことなのだ。女子力なのか?もう全ての細胞に女子力が組み込まれて人体の匂いがしないとでも言うのだろうか?そんなのズルい!
「兎に角私は朝一番はキスをしません! 歯磨きしたらしますので!」
「しかし……お前の朝一の口臭に不快感など一切ないぞ?」
「へ?」
何を言っているの?とあいが戦々恐々といった様子でジークを見返すと、男はバツの悪い表情をして視線を横に反らす。
「……俺の方が先に起きているんだ。キスくらいする」
「……っな!?」
あいは朝一のキスをしているつもりはなくても、ジークは朝一番に眠るあいにキスをするのが習慣化している。
今回文句を言っているのは目覚めたあいにキスをしようとしたら拒否をされた事に対して、だ。別に朝まるでキスをしていないとは言っていない。
「ズルいじゃないですか! じゃあ私が必死に隠してた口臭を知っていたんですか……!?」
「……隠すほどのものじゃないだろう。実際俺はお前の口臭など気にしていない」
寧ろ気にしていたら真っ先にあいの歯磨きチェックを強化する。己のあいに虫歯でも出来ていたら大変である。
病気ならば尚更だ。あいの口臭など本人が気にし過ぎて敏感になっているだけ……良くある話だ。
「信じられないです……! だって私は気になるのに!」
お年頃の乙女による猛抗議が始まろうとしていたが、実際ふたりに時間はない。
ジークは疲れ切った顔であいの前に手のひらを翳し待ったをかける。
「解った。お前が気にしているのは良く解った。歯磨きをしてからキスをすれば安心するならそれで良い」
「後、私が寝ている時のキスは反則です! ちゃんと起きるのを待ってからにしてください!」
「………………それについて約束はしない」
「してくださいよー!」
よろしい、ならばグェッラだ。
公務から戻ったら愛するふたりは譲れないもののために戦うだろう。
このくだらない聖戦の果てにふたりは何を得るのか。それはもう誰も気になりはしない。ふたりだけの秘密で終わるのだった。