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桂木で1時間使って駄文書いてみた。「初恋を飲み干したなら」
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お名前変換可能なので試行錯誤してもらうか、お近くのはちを捕まえてくださいw
かかった時間
120分←オイw
注意
○この二次創作は書き手の妄想と勘違いの産物です。
○本編読んだけど断片的にしか記憶ねぇもの。
○だからもう適当に書いてる
○桂木さんは偽物
○主人公ちゃんも偽物
これ見ても大丈夫?
それならばお暇つぶしにどーぞ!><
高校生の時、あいの周りのクラスメイトはみんな思い思いに恋をしていた。
右を見ても左を見ても慣れない恋にそわそわしている子も居たし、幸せそうに彼氏に甘えている子も居たし。
でもあいの隣に王子様は居なかった。というか、好きな人すら出来なかった。でも恋に恋はしていたけれど。
理想は自分より背が高くて、イケメンで、優しくて、ちょっと年上であいを甘やかしてくれる人で。勿論、デリカシーが無いとか絶対ダメ。
勿論頭も良くなくちゃ嫌だし、あいが髪型を変えたら直ぐに気づいてくれないとダメだし、ちょっと落ち込んだ日は頭を撫でて欲しい。ついでに俺が傍に居るから大丈夫だよ、とか言って欲しい。
そんなエベレスト級の理想を掲げてしまっているものだからあいには彼氏なんて出来ないし、好きな人も出来ない。もっぱらテレビの中の人があいの憧れの人。
実際会ったらそうでもないかもしれないけれど、別にテレビの外で憧れてるくらいはタダだもん、とあいは拗ねたように周りの女の子を見ていた。
だって恋なんてあいは良く知らない。漫画で出てくるヒーローはそれこそ人外を疑う程完璧で、ちょっと強引でもヒロインにとても甘い。そんなものばかり見ていたからあいの理想はどんどん膨れ上がっていく一方だ。
そんなあいの周りにも一応恋愛イベントが発生した。好きだ!付き合ってくれ!なんて、吃驚するイベントだったけどあいの心はいつも震えたりなんかしなかった。
漫画で見た甘く震える、とかきゅんきゅんときめくとか全く無い。だから多分これは運命じゃないんだ、とあいは首を横に振り続けた。いいの。だって運命の人が必ず白馬に乗って、急いでここまで来てくれているはず。
そんな事を言っていたあいは大学生になってしまい、成人までしてしまった。ああ、運命の人の白馬に何かあったのかもしれない。うん、仕方ない。
寄り道しているとか、迷子になっている訳じゃないと良いけれど。真っ直ぐあいの元へと歩いて来て欲しい。
待ちぼうけなんて嫌だなぁ、出来ればもうそろそろ会いたい。あいから行かないといけないのだろうか?どうせなら迎えに来て欲しいのに。
でももうあいは二十歳になってしまった。妥協も最近覚えてきた。待っているだけじゃダメなら、そろそろ行動を起こさないと、なんて。思っていたら突然人生が一気に急展開した。
近寄ったら明らかにヤバそうな人から逃がしてくれたのは女装している変な男の人。そしてヘリで連れて来られた先に現れたのがあいの運命の王子様だった。主役は後からやってくるとは言うけれど、まさかこんなドサクサで出会うなんて。
「失礼します……初めまして、桂木です」
顔は厳つくてちょっと怖い感じだけど声は優しくて、それにその時会った人の中では一番まともに見えた。
安全は確保した、信頼してくれとか言われても、怖くて、訳わからなくて。でも、それでも桂木の声に安心してしまったあいは八つ当たりのように泣きじゃくって叫ぶのに、男は優しくハンカチを差し出してくれたのだ。
完璧だ。あいの理想の人そのものだ。さっきのヘリの中に居た人なんて超イケメンだったけど超怖かったのに、この人はあいが安心できるように細心の注意を払ってくれている。
あいの事を待ちぼうけにしていた運命の人に違いない……でも、あいの人生内で最大のピンチには現れてくれた。安心させるように、傷つかないように気遣ってくれる人。もう恋に落ちないはずがないじゃない、なんて。あいは確信する。待っていた瞬間は今この瞬間だ、と。
世界一のSPなんてすごい肩書を背負ってここまで来てくれたから、桂木はあいの王子様でしかないのだ。そうに決まっている……と、盛り上がっているところであいがふと、ある事に気づき青ざめる。
どうしよう。初恋は実らないのに。今気づいた。好きになったら誰か他の人が傍に居るなんてパターンは本当に嫌だ。あいは直ぐに桂木の左手の薬指を確認するが、そこはガラ空きだ。
でも安心はできない。単に結婚してないだけかもしれないし、職務上指輪はしないのかもしれない。だってあいがもっと早くに桂木の側に居たら絶対に放っておかない。
どうせならもうどうでも良い人相手に初恋を済ませておけばよかった。なんで大事にとっておいたんだろう。ああ、なんでもします。なんでもするからこの恋は実らせたい。神様でもこの際悪魔でもなんでも良いから。
自分より背が高くてイケメン、あいに対して甘すぎるくらい甘いし……ちょっとどころかかなりの年上、デリカシーは若干ないけど、でも、真面目って事でカバーできる。
頭も良いからあいの勉強を見てくれて、世界一のSPなんて言われちゃうくらい強くて、あいの髪型が変わると気づかな……そうに見えたのに結構見てくれているのには驚いた。似合ってるって褒めてくれた、高得点。
落ち込んだ日は優しい表情で気遣ってくれて、頭を撫でてくれたし、あいを受容するように言葉を選んでくれる。ああ、もう。なんでもします。もうどんな存在にでも縋り付くからどうかこの男性をあいと結んでください。
「あい……そろそろ、もう……」
終わりにしてくれ、と。桂木が顔面紅潮させて下を向いたまま前を見れないでいる。ここは桂木の家で、今ふたりはテレビの前のソファで仲良く並んで座っている。見ているものは良くある恋愛物の映画で、やっぱりテレビの中の男女も運命的な恋をしている。
「私、桂木さんに会った時……初恋は実らないって有名なのに初恋しちゃったなぁ、どうして初恋どっかで済ませておかなかったんだろ~! もっと手軽に誰かと恋とかすれば良かった~、なんて、本気で思ってたんですけどね、」
先ほどまで下を向いていた桂木がガバ、と姿勢を正し慌ててあいに向き直る。若干青ざめたような顔で、彼が焦っているのは見て明らか。しかも何に焦っているかも解っているのであいは桂木が愛らしくてたまらなくなる。
あいが思った以上に良い反応をしてくれた恋人にニコニコ笑っているが、桂木はそれどころじゃない。いや、こんなに若くて可愛い恋人を得ておきながら初恋も欲しいと思うのはおこがましい。まして自分には過去に恋人が居たのだから言える立場じゃない。が、それでも欲しいものは欲しい。あいの初恋は自分が良い。
「そ、それで……、」
「大丈夫です。桂木さんに会った後に誰かに恋してもそれってもう初恋じゃないから、もう何が何でも叶えようって決めたので……私の初恋、叶っちゃいましたね~」
くふくふ、となんだか勝ち誇っているあいに桂木が心底安堵して肺から小さく息を漏らす。そしてそれはそうだ、と自分に冷静にツッコみを入れる。
何を焦っているのか。初恋をした後の恋はもう初恋じゃない。よって、他に恋をしても初恋をした事自体は無くならない。こんなに判断力が無くなるなんてあり得ない。どんな窮地に立たされても無かったのに。
ことあいに関してだけは、桂木は冷静さを保てない。まして心なんて絶対広くは持てない。あいの全てを占有していたいという欲は否定出来ないだろう、多分一生。いや絶対。桂木が自分に呆れていると、あいが彼の服の裾をつん、つんと小刻みに軽く引っ張っている。
「ん……? どうした?」
「わたし、」
もじもじ、と今度は自分の服の裾を弄ったり、視線をテレビに向け、中の男女が熱烈なキスシーンに入っていて気恥ずかしげに視線を自分の足元に戻したりと忙しいあい。愛らしい、可愛いは正義だと本気で感じながら見守っている桂木。
しかし、あいが突然うん、と頷く動作をする。何かを心に決めたらしく、気合を入れて桂木の方に顔を向けるあい。顔は真っ赤、表情は強張っているのが矢張り可愛い、愛おしい。
「桂木さんのためにハジメテぜぇんぶ大事にとっておいたので……全部面倒見てくださいね!」
ハジメテをぜぇんぶ、大事にとっておいた。しかも自分のために。
あまりの甘美な響きに先ず感情ばかりが蕩けてしまい一番情報処理をしている脳に上手く言葉の意味が入って行かない。それなのに彼の中に去来する音はファンファーレである。
とんでもない事を無邪気に言われて直ぐ、桂木は様々な想いを脳内で旋回させる。疾しい事、純粋な事、疾しい事疾しい事疾しい事。男はこれだからダメなんだ、という思考で脳内を一杯にしてしまう。
「……あい、」
「なんですか?」
「男に、そういう事を言うものじゃない……」
弱々しく、男はオオカミなのよと言わんばかりに注意喚起をする桂木。とても弱々しいが、なんとか大人の男の矜持を保とうとする桂木にあいがにっこりと笑う。
大丈夫。いつだってソーイウ事になって良いように、桂木の家に遊びに来る時は常に勝負下着を身につけている。装備は万全だ。ソーなったらドキドキするだろうし、緊張はするけど手を握ってさえいてくれれば大丈夫。
それにあいは桂木の恋人で、彼の家にホイホイ気軽に入ってきている……一般的にはカモである。それなのにあいのタイミングとかそこら辺を大事にしてくれる桂木にあいがまた甘く胸を震わせきゅんきゅんときめく。なんて良い男なのか。理想の男そのものだった。
でもね。もう正直、理想とかそんなの関係無いの。貴方に出会ってからずっと、私の脳内には桂木大地が棲みついてるんだから。
誰よりも高い理想を掲げて生きてきたけど、そんなの全部桂木規格になるに決まってるの。No1にしてOnly1、NO大地NOLIFEを掲げて私は生きていく。
だから絶対この恋は実らせないといけなかったの。1分1秒だって無駄にしたくない。私の大好きな王子様、白馬じゃなくて防弾ガラス搭載の車で迎えに来てくれた運命の人。
「大地さん、だいすきですよ」
素直に今の心境を伝えてあいが桂木の頬に軽く口づけると彼の体温がグっ、と上がる。意外とあいのハジメテのひとつを捧げる日は近いのかもしれない。
ここは理性と乙女心の交差点。
彼の強固な理性が崩壊するのもあと、少し。
初恋を飲み干したなら
向かうところ敵なし、負け知らずの乙女心と