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白鷺で7年前のリクエスト消化してみた。「宝箱から生まれたんだよ」
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7年前のリクエスト消化しました(ドヤ!)
もう謝らない!ごめんなさい!!←
リク内容は【白鷺家「赤ちゃんはどうしたらできるの?」】です。
風が強い土曜日の昼下がり。ソファの上で父と息子が和気藹々と会話を楽しんでいた。
だが息子のある一言が開幕の合図となり、平和は一気に崩れ落ちる事となる。
そう、それは……、
「お父さん、赤ちゃんはどこから来るんですか?」
ついに、きて、しまったか。
白鷺が覚悟を決めていた質問がこの日、ついに、来てしまった。#あい#はどこだ?#あい#は……残念ながら娘の相手をしている。白鷺しか居ない。完全に詰んでいる。
どうして母親であるあいにその質問が行かなかったのか、あいなら上手くかわせるものを。
寄りにも寄って、何故自分。何故、私。正直に答えることは出来ないが、どうやってかわすかが解らず白鷺は固まってしまう。
「お父さんにもわからないですか?」
ああ、幼児期はパパと呼んでいたあの日が懐かしい。お風呂の水がどこに行くのか、なんて言っていた息子がこんなに立派に。
子供の成長の早さに現実逃避をしていたかった白鷺だったが、涼の好奇心一杯に光る瞳は未だ輝いたまま。
嘘ではないが、真実でもない……そんな理由がパっと出てくればいいのに。ああ、何故普段高速回転する脳はこんな時に使い物にならないのか。
「……知っては、います」
でも説明したくはありません、とついつい言外に漏らしてしまう白鷺。だがそんな事、子供の涼には関係ない。
「じゃあ教えてください」
「そうですね……一言では説明出来ないのですが、」
赤ちゃんとは雌しべと雄しべが……いや、それでは突っ込まれた時に痛い。ならばキャベツ畑伝説やこうのとり伝説……いや、この利発な涼をごまかしきれるはずが無い。
なんせ彼はあいが死に物狂いで自分の妹を産んでいる事を知っている。こうのとりが運んではいない事も、キャベツ畑に行ってはいない事も知っている。
それならばお父さんとお母さんが愛し合って、それで愛の結晶が……いやいや、それもまた一番知られたくない場所を突っ込まれたらかなりきついじゃないか。
「えぇ……と、ですね、」
白鷺が我が息子に窮地へと追い詰められているその時、ついに笑いを殺しきれなくなったあいがぶっ、と大きく噴き出す。
何が起きたかわからず、白鷺があいの方へと視線をやれば彼女は思いっきり上を見上げて惜しげもなく喉を晒して笑っていた。
「もぉーだめ! 我慢できないぃー!!」
白鷺が苦悩に苦悩を重ねているというのに、何故あいが大笑いしているのか全く理解できない。
待ってくれ、何故こんなに苦しむ自分を見て笑っているのか。笑う事が出来たのか。
「りょーまさん、真面目すぎ! 真剣すぎて顔が怖いですよ!」
言いたい放題のあいを恨めしそうに睨む白鷺、状況が全く読めずに首をかしげる涼。
夫のミニチュアのような息子に見られてやっぱりおかしくてケラケラ笑うあい。
あいは感慨深そうに難しげな表情をする涼を改めて見つめる。昔は中身だけは自分に似ていたのに、やはり涼は白鷺の息子だった。仕草なんてまるでコピーだ。
「あい……一体何がおかしいんでしょうか?」
「いや、おかしい事だらけですよ!」
「別に面白い事なんてどこにもなかったと思いますが……」
「だって、如何にも核心を突かれましたって顔して……!」
また白鷺の困った顔を思い出してあいが噴き出す。流石につまらなくなった白鷺、そしてそのミニチュアである涼は不満げな顔を並べる。
ああ、そんなに似たような顔で睨まれても面白いだけなのに。が、しかしだ。
確かに息子が純粋に疑問に思って、それに真摯に向き合うお父さんを笑うなんていけない事だろう。断じていけないだろう。
「まぁまぁ。ふたりともそんな顔しないで。確かに私が悪かったです」
突然神妙な顔をしたって、先ほど大笑いしていた人物の反省など信用できない。
白鷺と涼はジト目でひたすらにあいを見つめている。父と息子が猜疑心を隠そうともしないでいると、あいが利き手の人差し指だけをピンと立てて胸を張る。
「涼、子供がどうやって出来るかはママが教えてあげる!」
「な……っ!」
何故このようなナイーヴかつ繊細な問題に対してそうも明るく言えるのか。決してこの問題はそんなに明るい顔で話せるものではない。
しかしあいは楽し気に、そして高らかに話し出そうとする。そんなあいに対して興味津々の息子、涼。
「赤ちゃんは、神様が授けてくれます!」
「は?」
あいの堂々宣言に白鷺は思わず口を半開きにして聞き返す。白鷺の傍に居た涼はおお、と驚いていた。神様がスペシャルにスゴイ!という事はもう解っているお年頃だ。
「涼真さんと私ですっごくすっごくつよぉ~くお祈りして、神様がまぁ、そこまで言うなら……しょうがないなぁ、うちの可愛い子だからちゃんと可愛がってよって事で私のおなかの中に涼と真奈を入れてくれましたっ!」
拳を作り、熱く持論を展開するあい。間違っちゃいないような、でもやっぱり間違っているというか、いやそうであったらどんなに良いか……少なくてもあい説が真実ならばこの世界で悲しい顛末を追う子供は少なくなるのに。
というか、そんな説明で自分たちの息子は納得するのか。妙に利発で勘の鋭い涼をちらり、と窺うと……そこにはキラキラと目を光らせる年相応のお子様が居た。
「すごい……! じゃあ、僕も真奈もお父さんとお母さんが神様に認められたから生まれて来たの……!?」
「そう! 涼と真奈は神様からの授かりものです! すごいね!! 勢いって大事!!!」
意味の解らないノリで素敵だね、そうだね!と母子がはしゃぐ側で完全にアウェーを味わう白鷺は声に反応して泣き出したもう一人の授かりものである真奈の元へと歩き出す。
行けばどうやら寂しかったようで父親の顔を見るなり泣き止む真奈に苦笑いをする白鷺の表情には少し疲れが出ている。あいのようには絶対になれない。
勢いだけでズバ!と言えば案外子供なんてすぐ納得する、と彼女がよく言っていた。要は大人になった涼と真奈に恥じない自分でさえあればそれで良いのだ、とも。
「真奈、私には勢いが足りないようです……、」
「うー?」
白鷺の苦悩を、小さな赤子だけが聞き届けていたが……残念ながら子供はどこから来るか、というガチ議論から今日のランチは何にするかにシフトしている涼とあいの耳には届かなかった。
宝箱から生まれたんだよ
宝物は大体そこに入っているからね
リクエストありがとうございましたー!