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ナポレオンの誕生日なのでお祝いに書いてみた。「隠し味はスリルと愛情」
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勢いが欲しかったので主人公にメシマズ属性をつけてます_(:3 」∠ )_
つまりはギャグ路線目指してます、さぁーせん!!
どっかで時間作れたらちょろっとお色気あるナポレオン誕生祭をしたいなぁ、と思ってます。はい。多分忘れますごめんなさいMAX!
。゚(゚ノ∀`゚)゚。アヒャヒャ
ナポレオン推しで料理が苦手なお姫様に捧げますwww
因みにワシ、入居者の料理作ってたので……もうミルクリゾットを作ったりするあの日には帰らないのでワシ、メシマズ属性卒業します!☆
「ナポレオン! お誕生日、おめでとう!!」
「……あ、ああ」
言われて吃驚、とはこのことだろう。全くもってナポレオンは自分の誕生日を意識していなかった。
寝耳に水と言った表情をしているナポレオンにあいは予想通りだと笑う。毎度この調子なので彼のその態度にはもう慣れっこだ。
「そういう訳で、ナポレオン……私、セバスチャンと美味しいの作るから! 今日は色々と忙しいから、またね!」
後でねぇ!とあいがそのままキッチンへと向かってしまう。いつもの誕生日ならサプライズを仕掛けようとあいがこそこそしているが今日は真っ向勝負なのか、と。
だがまぁ、そんな日もあるか。多分。ナポレオンはもうそろそろジャンヌと剣の手合わせをする約束が入っているのでのんびりと歩き出す。
歩き出して数歩。今日も空が澄み渡っていて綺麗だ、なんて周囲を見渡す余裕すらある長閑な昼下がり……その日、ナポレオンは思い出した。 あいの創作料理の恐怖を……半日ベッドの中に囚われていた屈辱を。
「待て待て待て!」
あいが進んだ道を慌ててナポレオンも辿る。ヴァンパイアなのでナポレオンはそう簡単には挫けないし、体調も崩さない。
前、あいの料理を食べた時も体調自体は問題無かったのだが気分の問題だ。あいに隠れてこっそりとベッドの中で打ちひしがれた良い思い出がある。
料理を担当するのは自分で良い。ジャンヌとの約束が迫っていたがナポレオンはなんとかあいのとんでもクッキングを阻止すべくキッチンへと急行した。
「そんな訳で、セバスチャン! 私にクレープの作り方をご教授ください!」
「はい。勤勉な学生は好きですよ」
「ありがとうございます~!」
あいの料理の腕前は普段共に家事をこなすセバスチャンはきちんと知っている。だからあいでも出来る事ばかりをさせてきた。
しかしこの同郷のあいが恋人のために好物のスイーツ、クレープを作りたいと言っている……セバスチャンはナポレオンをとても尊敬している。大ファンなのである。
なんとしても彼の命を守ってさし上げねば、と。ナポレオンの命を守る為にセバスチャンはあいのお料理の先生を買って出た。しかし、
「何故、生クリームの色が変わるんでしょう?」
「ちゃんと言われた通りに混ぜてただけなんですけど……」
「後、今にも笑いかけてきそうなこの不思議な生地は一体……!」
「あ、それ! モチモチ触感とかは私には無理だから先ずはプレーンな生地にしようと思って……」
「プレーンッ!?」
何もしていないのにプスプスと蠢いているこれがプレーンの生地の元だと?これが簡素であっさりしたさまだと!?
セバスチャンが驚いていると、あいは自分がちょっとズレている事に空気で察した様子で恥じらうように笑う。
「やっぱりこの時代はホットケーキミックスとかないから初心者にはクレープは難しかったかなぁ~」
そういう問題だろうか?それでも小麦粉も牛乳もあるのだからそう難しい工程は無い筈だ。
美味しいか美味しくないかは置いといて、何もこんな不思議な生地は生まれないはずだ。寧ろこの生地を産み出せた事が奇跡に等しい。
「解りました……ではやはりここは私が生地を焼きましょう」
「えぇ~? やっぱり初心者にクレープは難しいですか?」
いえ、ぶっちゃけるとそこまで難しくはないです。確かに薄く焼けない人間はいるが、普通混ぜて掻き混ぜるだけの工程で不思議が起こる人間は珍しい。
「じゃあさっき私が作った生地を使って大丈夫ですよ!」
「わかりました。ではあい、申し訳ないですが倉庫からチョコソースを持ってきてもらって良いですか?」
「あ、はい! 直ぐ持ってきますね~」
あいが走り去ったのを確認してセバスチャンは一息つく。あいの頭上にチョップしたい気持ちを押し隠してよく我慢したものだ、とため息もひとつ。
明日からの業務で少しずつあいに料理スキルを身に着けさせないと、いつかナポレオンが本当にあいの料理の毒牙にかかってしまいそうだ。
心優しいナポレオンなのでどんなに危険だと知っていてもあいの料理なら命を張って口にするだろう。ヴァンパイアだから大丈夫、と言うのは一体どこまで大丈夫なのか?
「おい、セバス、」
「あ、ナポレオンさん……今の、」
「見てたって言うか、アイツが何か作る宣言していったから様子を、な」
後は察しろよ、と首を傾け苦笑いをするナポレオン。自分の恋人がとんでもクッキングをしているから阻止しに来た、とダイレクトアタックは出来ないのでセバスチャンのお察しスキルに託せばセバスチャンが鷹揚に頷く。
「心配なさらないでください。あいには生地と生クリーム、果物を添えるだけの簡単なお仕事をしてもらいます」
「……それでアイツは満足するのか?」
「きっとしませんが……まぁ、この有り様なので」
未だに色が変わったままの生クリームやプスプスと妙な音を立てる生地を見て身を凍らせるナポレオンとやっぱり普通はその反応ですよね、と頼もしく頷くセバスチャン。
「納得はさせます」
「あ、ああ……そうか、」
「ではそろそろあいが戻る頃なので、ナポレオンさんは他の用事を済ませて来てください」
「いつも悪いな、セバス」
数時間後。
「……ナポレオン、お誕生日おめでと、」
しゅん、とあいが綺麗なクレープを持って食堂に居るナポレオンの元へとやってくる。
切ないです、と。悲しいのです、と。力及ばず無念です、とばかりにしょげているあいを見て……ナポレオンの良心だとか優しい気持ちが潰れそうに痛み出す。
結局彼は愛情だけが命綱の不思議なクレープを食べて、討死する事になったとかならなかったとか。あいが作ったものなら矢張り命張って食べるナポレオンにセバスチャンは更にファン心を熱くさせた、かもしれない。
隠し味はスリルと愛情
君が作ったものなら何でも消化してみせよう