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キースで書いた小ネタ3つまとめてみた。
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○あの子が欲しい、あの子じゃわからん
昔友達と話した理想の男性とは程遠い気がする。いや、基本的には多分、世の中の女の子が憧れる相手なんだと思う。
だって王子様だし、運動神経抜群だし、頭だって良いし。見た目だってその辺のアイドルなんて蹴散らせる程良いし……そりゃぁ、好きだなんて言われたらイチコロだよね。
「おい、」
でも私は違う。私は別に王子様との禁断の恋なんて憧れた事は無いし、平凡だって良いんだもん。
見た目だってそんなに良くなくて良いから私を愛してくれる人で、生きていくのに不自由がない収入があればそれでいい。家族全員病気にならない様に、家庭を守っていけたらいいなぁって思ってた。それなのに……。
「おい、話聞いてるのかよ?」
なんでこんな王子様が私の行く手を阻んでるんだろう?
別にこの王子様とどうこうなってる訳じゃないけど、最近なんかしつこい。
他の子は羨ましいとか色々言ってるけど、正直私は別にこの王子様に憧れはないし。
「聞いてますが……シャルルのデザイナーの部屋までご足労いただくような用事が此処にありますか?」
「お前が居るだろ?」
「私は居ますよ。だってここは私の仕事場ですから」
「だから来た」
「はぁ……」
王子様の考える事は私には解らない。こんな問答したって時間の無駄だ。
もう早く帰っていただいて仕事に戻りたい。だって別にこのやりとりになんの実りもないだろうし。
「ではご用件をどうぞ」
「リバティに来い」
「……遠慮させていただきます。では、」
踵を返そうとしたら頭を鷲掴みにされた。ちょっとありえない。
「うちにはアルマっていうデザイナー長がいる。勉強になると思うぞ?」
アルマ、という名前を聞いて私は一瞬だけ体が固まる。
その人は……そりゃあ、ピエールさんだって凄いけど、アルマさんだって私たちの業界じゃ神様みたいな人だ。会って話せたら最高に幸せに決まってるし。
でも、私は……。
「私は……、この国に来て困ってる時に救ってくださったエドワード様との契約が切れない内にどこかへ行く気はありません」
そうだとも。一番辛い時拾ってくれたエドワード様を裏切るような事、絶対に出来ない。
そう心に決めてキース様を睨みあげると、彼もまた凄い顔で私を睨んでる。
ちょ、なんでそんな顔をされないといけないんですか?私そんなにいけない事言いましたっけ?
「ムカつく」
「は?」
私の頭を掴んでる手が私の後頭部へ移動して上を向かされる。
なんか痛い事されるのかと思ったら、唇になにかプニ、とした感触が……って言うかキスされてるし!!
振り切ろうとしても力じゃ勝てない、でもこのままとか絶対悔しい。
「……っツ!」
振り切れないなら、噛み付いてやれって勢いだけで唇に噛み付いてやった。
王子様の唇に噛み付くとかありえないけど、そもそもそっちだって悪い。私は正当防衛だもん。
「謝りませんから!!」
こんな状況なのに彼の手は未だに私を離そうとはしない。
殴られるかもしれない距離だけど、私だって人権はある。絶対に怯むものか。
歯を食いしばって衝撃に耐える準備をするけど、キース様の唇は大きく弧を描いた。
「悪くねぇな」
私に噛み付かれて血を流す部分を舌で舐めとる姿は獣みたいだ。
そんな状況を至近距離で見る私の心臓は嫌でも大きく跳ねる。
「じゃあ、またな」
そう言ってまた彼は私のアトリエから出ていく。しかもまた来るって言ってる。
暫く体が動かなかったけど、思考が動き出して直ぐ、私も後を追い掛けた。また来る?冗談じゃない!
「もう来なくて結構ですー!!」
渾身の拒絶をしたのに、彼はこっちを見向きもせずヒラヒラと手を振って廊下を曲がった。
冗談じゃない、二度と来ないでほしい。
未だにバクバクする心臓の上に手を置いて、私は2回深呼吸をして落ち着けって心臓に命じた。
っていうね。
徐々にキースが主人公侵略に来ましたよ!!っていう(・∀・)b
この話は読み切りでも読める感じで続けます。
キースが来た
色々した
で、帰っていく
の繰り返しです。
さぁ、主人公の陥落はいつか!?
主人公の陥落が先か!?
はちさんが完全に飽きるのが先か!?
それは神のみぞ知る……(´ー`)w
○俺の世界の永住権を
『私にはもったいないですよ』
と、彼女は笑ってキースの誘いをけっとばす。
しかも王子達の会合に何故か良く居合わす時も彼女はド庶民丸だしの台詞を良く口にする。
『わぁ、こんな凄いご飯を食べられる日が来るなんて!』
これはノーブル城での会食の際に言い放った台詞だ。
ノーブル様に誘われないと先ず食べられない、とも言っていたが……キースにしてみればこれくらいなんてことはない。
『こんな場所……初めて見た。人住んでるんだ……』
彼女がフィリップ城に招かれた時にこんなことを言っていたとキースは覚えている。
なんて庶民臭いことを、と言えば庶民なんですよ!と返されたのも最近の話だ。
『すっごい……こんなゴージャスな乗り物もう二度と乗れない……』
これはキースが用意した自家用ジェットに乗せた時の台詞だ。
二度と乗れないか決めるのはお前じゃない、俺だと言ったが彼女はきょとんとしていた。
これまでキースが当たり前としていたことが庶民の彼女にはとても珍しいことだったらしい。
彼女はいつも目を丸くして驚いていた。
そして彼女はいつもキースと自分の間に見えない壁を作って笑う。
「庶民、一緒に飯を食いにいくぞ」
ジェット機でどこか遠くに美味いものを食べに行き、更に時間がなくなってリバティの城に泊めてしまえば彼女はきっと慣れていくだろう。
キースの取り巻く世界にも、キース自身にも。
だから何度も誘っているのに、彼女は今日もキースを拒否した。
『私にはもったいないです』
『やっぱり住む世界が違いますね』
うるさい、お前はどこの星の人間だ。
住む世界は同じ地球だし、同じ人間だろ。
そこまで考えて、ようやくキースは一つの考えにたどり着く。
そうだ、彼女も自分も同じ地球人で、なにも変わらないのだ。
言語が2人を隔てている訳でもないじゃないか。貧富の差なんてそれこそどうでもいい。
女が順応性高いのは今も昔も変わらない。だったらお前が俺に合わせろ。よし、彼女を自分の世界に引き込んでしまおう。
「よし、飯食いに行くぞ」
「あれ? キース様私の話を聞いてました?」
「聞いてた、聞いてた。そんなにお前と俺の世界が違うっていうんならお前の世界を見せてみろよ」
「はぁ!?」
「あまり変わりがなかったら二度ともったいないとか違うとか言わせねぇからな」
さぁ、あいの言うキースの世界の永住権をくれてやろう。
そうしたら「ばーか!」って大爆笑してやって、人が住んでるかわからない場所で一生暮らせばいい。
○君に関わる全てを担当しよう
「このピアス、可愛いんですけど……私、ピアスの穴空いてないんですよ」
キースは痛恨のミスをした事に気づきその場で一瞬固まる。
あいに似合うと思って勢いで買ってしまったピアスだったが、あいの耳にそれを付ける穴が無い。
だが、あいはそのピアスを見てニコニコ笑っている。
「このピアス、直ぐには付けられないけど……ちょうどよかったです」
「……何がだよ?」
「ピアスの穴、あけてみようって思ってたんです。切っ掛けが出来たから空けてみようかなって」
あいが屈託なく笑う。確かにピアスは空ける予定だったのだ。ただ未定でもあったが。
にこにこと笑うあいとは対照的に、キースは苦い顔をする。
「このピアスのためになら、空ける必要ない」
「違いますって! ナオミとかとピアスがあるとお洒落の幅が広がるって話してたんです!」
「……でも、いてぇだろ」
「大丈夫ですよ~。ピアスなんてみんな空けてるし、どこかの民族なんて子供の内から空けるんですよ?」
あいが笑顔のまま言えば、キースは彼女の耳を甘く噛んだ。
痛くはないが……変な気分だった。そこに血液が集中しているような。そこが受信機になっているような気さえした。
血流が全て耳に向かっているかのように、真っ赤になっているだろう耳にキスをされればあいは背筋が震えて甘く痺れる体を持て余す。
「この身体に傷を残すのは、俺だけでいい」
「えっと……でみょ、っ!?」
それでもピアスホールは空けたいと伝えようとするあいの言葉を遮るように、キースが彼女の両頬を軽く引っ張る。
「ひゃにふんでふか!!」
「もし本当に空けるなら、俺がやってやる」
妥協案、を提示してキースがあいの頬を開放すると彼女は驚きを隠せない顔をそのままに、恋人の顔を凝視する。
「……キース様がやってくれるんですか?」
「まぁな。任せろよ。処女膜も俺が空けてるんだからそれくらいの穴、平気だろ」
「少しでもときめいた自分を殺したいです」
まぁ、言いたいことはたくさんあるけれど。キースがあいに付けたいと思って衝動的に買ったピアスを早く身に着けたい。
なんだかキースのものだというしるしになってくれるような気がした。心にも、体にもキースのしるしが欲しかった。
「何だよ。機嫌良さそうだな?」
「愛されてるって、なんとなくこんな感じだよなぁ、って思いまして」
んで、実際やる時はやっぱり穴を空けたくないって大騒ぎするんよw
ピアッサー選びから喧嘩するカップルを今度書きたいなー^^