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白鷺で書いた小ネタ3つまとめてみた。
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○私とランチを
「やぁ、頑張ってるね」
「桜澤先輩、お疲れ様です」
「お疲れ様! これから一緒にお昼いかない?」
「あ、最近節約でお弁当を用意しているんです」
「そっか、残念だなぁ。じゃあまた今度一緒に行こうね」
「はい!」
彼女は最近お弁当にしたのか、と思いつつ白鷺は大森亭へと向かう。頭の中では彼女と桜澤の会話が繰り返されている。
自分の趣味は料理だ。弁当を用意するなんて容易い。明日も彼女はフロア内で弁当を食べるのだろうか?
何故か白鷺はここまで思考するとワクワクするような、そんな感覚に見舞われる。
「卵を買いに行かないといけませんね」
と、ぼそりと呟いた声は誰にも届かない。何しろ本人すら意識していなかったのだから。
それから彼は多少残業をしたが、スーパーがやっている時間帯に家路につき弁当に使う材料を購入する。
ついでに飼い犬のチョコのおやつも買って満足気にしながらまた家を目指す。
脳裏では明日の弁当の中身と、どうやって彼女と自然に食事をとるかを無意識にシミュレーションしていたりする。
まだ付き合っている訳でもない、そんな状態でも自然と誘う言葉を探すが……それはプレゼンでの発表内容を纏めるより難しかった。
「課長! 今日はお弁当なんですか?」
「……ええ」
結局白鷺は朝になっても上手い口上を思いつかず、昼になってもダメだった。
それ故に、隣の席である事を利用して彼女側の席にお弁当を置く作戦に出た。姑息だ。
彼のイメージカラーとも言える深いブルーのランチョンマットに包んだのは本当に偶然だったが、如何にも白鷺の弁当であると良く主張している。
「じゃあ私と一緒に食べませんか? 私も今お弁当組なんですけど、友達の殆どが外食派で……」
「ええ、構いません」
何が構わないのだろうか?彼女と弁当が食べたくて昨日の昼から悶々と思い悩んでいた癖に。
しかし白鷺のプライドが邪魔をして、彼女と昼食が取れて嬉しい、と素直にはなれない。
「1人でご飯って結構寂しくて味気ないんですよね。課長と食べれて嬉しいです!」
「それは良かった」
ああ、彼女の様に素直になれれば良いのに。素直とは対極の場所に居る白鷺は今日も表情筋を強張らせながらここに居る。
だが心はとても温かい。彼女と並んで食事が出来る。
先程までの悶々とした心が嘘のように晴れていた。
「あ、僕も混ぜて~」
「俺も」
普段外で昼食を取る癖に、コンビニ袋を片手にやってくる邪魔者が現れるまでは。
うふふ、あはは。課長ったらお料理上手ね!って展開にした後やってくる悪魔たちw
勿論白鷺はコンビニ弁当の分際で邪魔をするな!!と内心で激おこぷんぷん丸になりますw
○スーパーダーリン!
「涼真さんはスパダリってやつですね」
「……スパダリ、とは?」
「スーパーダーリンって事です。つまり涼真さんが私にとって完璧なダーリンって事ですよ」
何故か私が偉そうに言うと、涼真さんは不思議そうな顔をしてこっちを見てくる。
なんでそんなに不思議そうにしてるんだろう?だって貴方は誰がどうみてもスーパーダーリンなのに。
「……私はその、スパダリではないと思いますが」
「そんな事ないですよ! だって頭良いし、運動神経も良いし、高身長、高収入、仕事は出世街道まっしぐらの出世最速記録保持者……めっちゃくちゃカッコいいのに料理も掃除も完璧って……涼真さんがスパダリじゃなかったら世界中からスパダリが消えちゃいますよ!」
「……そうですか?」
「そうです!」
私が鼻息荒く言えば涼真さんはぼんやりと空を見て、逡巡してるかと思うとまた私を見る。
その顔はやっぱりどこか不思議そうにしてる。
「収入だって同世代の男性と比べれば一定水準は越えていますし、出世最速も否定はしません。事実です。ですが……私は嫉妬深く、性格もあまり良いとは言えないでしょう」
「そんな事ないですよ! 涼真さんは凄く優しいですっ!!」
「それは貴女に嫌われたくないから必死なだけです」
……今、なんかすごい事言われた気がする。うん、なんて言うか、限りなく愛の告白に近いって言うか、愛の告白でしたって言うか……。
しかもなんか涼真さんはまだ考えてるような顔をしてる。
「……貴女には、私はスパダリ、というものに見えるんですね」
涼真さんが確認するように言うから、私は強く頷く。だって私のスーパーダーリンは無敵なんだから!
「はい! それはもう!!」
「……ならば、私の努力は無駄ではないと言う事ですね」
嬉しそうに笑いながらチョコレートを食べる涼真さんは凄く可愛くて、私は喉がカラカラと乾くのを感じた。
私のスーパーダーリンは可愛さも搭載されているのか。何それ最強過ぎる。
はちさんのスーパーヒーローにして主人公のスーパーダーリン!白鷺涼真!!
正直最近はいっそりょまたんは好きって言うよりは崇拝に近い気がしてきたよ。
ここまでりょまたんりょまたん出来るはちさんってホント一途だよね、うんうん。
白鷺「……迷惑です……」
○寝言に反応してはいけない
日曜日の朝、白鷺にしては珍しく早朝を過ぎてもまだベッドの中に居た。
勿論ベッドの中に白鷺を引き留めるだけの魅力があるからだ。
寒いから、なんて理由じゃない。そこに居るのはぷぅぷぅと不思議な寝息を立てる白鷺の愛しい恋人が居た。
「……りょ、まさ……、」
「はい?」
彼女が起きて、自分を呼んでいると期待して返事をしたが彼女はまだ寝ているようだ。
夢の中でも自分と話しているのかと微笑ましくなり顔が緩む白鷺だったが……ふと、寝言に返事をしたり話しかけると死んでしまう、魂が抜けるという都市伝説のようなものを思い出す。
それを思い出し、内心焦った白鷺は身を起こし恋人の頭を撫でる。
「今のは独り言です、気にしてはいけません」
話しかけているじゃないか、とツッコむ人間は居ない。寝言に話しかけていないからセーフなのだろうか?
しかし寝ている彼女はその面白い状況を知る事もなく、またもや幸せそうに口を動かす。
「パンケーキぃ……」
幸せそうな寝顔のまま、彼女がつぶやいた言葉はパンケーキ、だった。
少し驚いたような顔をする白鷺はもう一度彼女の頭を撫でて、ベッドから抜け出す。
そして確実に独り言になるだろう場所まで歩き、ぼそりと呟く。
「……パンケーキ、ですか」
愛しい恋人のリクエストに白鷺は暫く宙を仰ぐ。パンケーキを作る材料は全てある。
この前パンケーキミックスやホットケーキミックスに頼らずにおやつを作ると彼女が豪語したため、強力粉、薄力粉共に揃っていたし、ベーキングパウダーも完備していた。
しかもヨーグルトやらジャムやら色々買い込んでいた為、まだ残っていたりする。
「作りましょうか、」
白鷺がキッチンへと向かう時、恋人が今度はしゅてーき、やらカツ丼等の寝言を呟いている事を知らず、白鷺はパンケーキとサラダを作り始めた。
(・∀・)あ、大丈夫っすよ~
「涼真さん! 凄いですね! 私、パンケーキの夢を見たんですよ!!」
「そうですか」
「一枚はハチミツかけて食べてぇ、ヨーグルトもサラダも挟みたい!!」
(・∀・)本番ではこういう感じにしますからねぇ~。
でないとりょまたんが可哀想じゃないっすか―。
はてさて今日もお仕事行ってきまーす!ガッツリとしっかりと寝ちゃったけど……まぁ、頑張るっすよー!