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創で8年前のリクエストを消化してみた。
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大きな休みを取れるほど暇ではないふたり。
そんなふたりが結婚したので、なんとか仲間たちが捻出した数日間で行ける場所。
ハネムーンですらドタバタと時が去ったがそんなものは現地に行けばなんてことはない。
「虎之介~、ハワイだねぇ!」
「そうだな、ハワイだな」
「ハワイと言ったらなに?」
「肉だろ」
「海ぃー!! 海に行くのぉー!!!」
日本から遠い異国の地で、あいの悲痛な叫びが木霊した。
ここはワイキキビーチ、しかし創はしれっと有名な肉の店へとあいを引っ張っていこうとする。
「おかしいでしょ! なんで着いて早々にお肉食べに行くのー!?」
「うっせ! 先ずは腹ごしらえだろ!」
「水着も買ってきたんだから! ほら! アンフィニットの最新作のパレオ!」
「お前な! そんな布の少ないやつ持ってくるんじゃねぇよ!」
「担当したの虎之介でしょ!!」
あいに言われて直ぐに創は言葉に詰まるが、まさか自分の彼女が着るとは思っておらず。
とりあえずばつが悪いのであいと視線をあわせず、
「忘れた」
と、しれっと言い放つ。しかしそんな事で納得するあいではない。
ああ、全国の嫉妬心が強い男性諸君。俺が作ってしまったパレオのせいでつらい思いをさせたかもしれねぇ、正直すまなかった、と。
創が適当に反省しようと残念ながらあいの気持ちは変わらない。海に行って泳ぐことしか頭に無いあいを止められようはずが無い。
「いーから海! お肉食べてもいいから海に行こう!」
「……わぁーったよ、」
渋々、といった態度の創だったがあいは見ない振りして有名な肉屋の方へと脚を進める。この前テレビで有名人が食べていた店だと創がマークしていた店の肉は分厚くて、矢張り美味かった。
このままホテルに戻ってハネムーンらしくしっぽりしたい創だったが、残念ながらあいはそんな事を許してくれるはずも無く。
食べて、少しショッピングをしたら今度こそ海へと繰り出すのだった。
「虎之介ー! 早く行くよー!」
「おぉー……眩しいな」
あいのパレオ姿に創が遠い目になる。ああ、出来ればだからこのままホテルに戻って以下同文。
惜しげもなく肌を見せるあいに色々と疲れた気持ちやら、不思議と疲れがぶっ飛ぶ気持ちやら複雑な思いに駆られている。と言うか、オイルで艶々のあいの太腿とかエロ過ぎる。
と、言うか。おい、そこの観光客。勝手に人のもん見てんじゃねぇ、俺の分が減る、猛烈に減ると叫びたい。今すぐ叫びたいが、叫べばあいが不機嫌になる。折角の旅行でそれは避けたい。
「よし! 海に行くぞあい!」
「およ? いきなりやる気出たの?」
「俺はいつだってやる気に溢れてるっつーの! 行くぞ!」
「お、おう!」
本当は海の中に入ってあいの水着姿を隠したいだけだったりもしたが、そうとも知らずにやる気になった創にテンション爆上げのあい。
いいのだ、全てが丸く収まれば問題ない。だって地球は丸いのだから。
「虎之介! 海綺麗!」
あいが嬉しそうに海の中に入っていく。それに続いて創もあいに並んで泳ぎ始める。
正直あいのペースで泳ぐのは創にとって退屈な物であるはずだが、やれ地平線だの、やれオーシャンビューだのはしゃぐあいの傍に居れば退屈にはならない。
そうこうして遊んでいたふたりだったが、矢張りあいの限界の方が早かった。
「虎之介……疲れた……」
「マジかよ。体力残しとけっていったろ?」
「だってぇ、折角のハワイだからもうちょっと浸ってたかったっていうか」
「しかたねぇな。陸に近づくまで運んでやる」
「え……どーやって?」
「しがみつけ。そのまま泳ぐから」
何事もないように言い放つ創に仰天しましたとばかりに目を見開き、肺一杯息を吸い込み、そのまま勢いをつけて吐き出す息に声を乗せるあい。
それだけの力があればまだ泳げそうなものだが、それはそれ、あれはあれ。とりあえずバタ足をめっちゃ頑張っていたので足が怠いのだ。
「えぇー!? やだよ、恥ずかしいし!」
「うるせぇな。このまま泳いで戻ったら直ぐバテるだろ?」
そんな事になったらあいの事だからホテルに着いた途端に力尽きるだろう。そんな事は許さない……!絶対にだ。
問答無用であいを引っつかみ、さっさと陸へと戻る創。流石に人目が多くなるとあいが逃げるように離れたが、少しでも体力温存させることが出来たので問題ない。
こうしてふたりはワイキキビーチを全力で楽しみ、ショッピングに勤しみつつホテルの方へと戻っていった。
「はぁ……すごいねぇ」
「まぁな」
ホテルの中のプールがピカピカ光っている、なんて。幼稚な言葉で表現するあいに苦笑いをする創。
夕食もしっかりと食べたふたりはホテルの中をフラフラと散策している最中だ。
「うーん、心なしかハワイの月は一段と綺麗に見えるね」
「それは良かったなー、お前が単純でよかったよかった」
「虎之介はロマンが無いよね!」
「さっきデュッフェでどれを食べたら元が取れるかとか言ってたやつにだけはロマンを語られたくねぇ!」
言い争いながらもふたりは仲良く自分達の部屋に戻ってきた。今日はもう十分遊んだから、また明日。敢えて口には出さなかったが自然とふたりの足はここに戻っていた。
「みんなにお土産は買える時でいいもんね。シャワー浴びて寝よっか」
「そうだなー」
「虎之介先に使っていいよ」
「おう、サンキュー」
そう言ってしれっとあいを横抱きにする創。突然の事にあいが目を見開くが、残念ながら逃げ場は無い。
「何、そのまま寝るって顔してんだ。夜はこれからだろ?」
「だって! 明日もあるのに!!」
「明日があるからこそ、今やらないといけないことがあるんだよ」
「少なくてもこれはやらなくていいー!」
そうこう叫んでも全ては無駄なあがき。あいは創にペロリと食べられてしまうのだった。
次の日、あいが力尽きていて折角のハワイに居ながら日本に居るのとほぼ変わらない半日を過ごしてしまい文句を言うことになるわけだが、創はそれこそしれぇっと何食わぬ顔であいにキスを贈ったとか。
お待たせしました!タイトル未定ですwww
リクエストありがとうございましたー!