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創で8年前のリクエストを消化してみた。
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創のお子様と新規事業部の絡み、がリクエスト内容です。
お子様ネタとごりっごりのオリジナル要素が許せない方はお逃げくださいまし~!
「創のお子様にまた会いたいなぁ」
そんな桜澤の一言から真昼のランチ会が決まってしまった。
場所はいつもの大森亭、ガヤガヤと大忙しの店内の一角にやたら良い男が7人。そこに元気な女性とよく似た顔立ちのお子様ふたりが混ざっている珍妙な光景があった。
お子様達は双子のようで、姉と弟、どちらも見た目は誰が父親か説明は要らない程に創に似ている。
「涼、こっちに来い! 菓子食うか? 饅頭あるぞっ」
ニカニカ笑って手招きする郷田に近寄り双子の弟である涼はス、と親指をしまって他の指を4本立てた。
「パパママ真奈おれ」
「よーしよし。勿論全員分あるからもってけっ」
「ありがとうございます」
ぺこり、と。お礼はきっちり言うように両親に仕込まれているからそこはキチンと言えた。
我が家は4人家族だから4つくれとなんら遠慮もなくヅケヅケと物申すのは如何なものかと思うがそこはお子様だからで全て片付く。
流石はあの俺様で有名な虎之介の子供だ、大人しそうな様子だが全く遠慮が無い。将来有望な涼に郷田が嬉しそうに笑う。
しかも自分の分じゃなく家族の分を求めているのがまたなんとも微笑ましいじゃないか。
涼は郷田からせしめたお菓子を4つ持って、トテトテと小走りで家族の元に凱旋する、が。
ぼと、と。無慈悲な音を立てて饅頭がひとつ、大森亭の床とキッスを交わしてしまった。
「………ぁ、」
涼が落としたお菓子をささっと拾い上げる。
……別に落としたお菓子には包みがあるから特に問題は無い。
だけどなんとなくあいや真奈に渡すのは気が引ける。
その場合自分が食べれば良いけどそれ以上に適任者がいるから……。
キョロキョロと今の事件を誰かに見られていないか確認しているが、バッチリ父親に目撃されていた。
しかし矢張りそこはお子様。
虎之介に見られていた事に気付かず落としたお菓子をそ、と優しく父親に差し出した。
「……落としたヤツを俺に食わせる気か?」
なんだ、見てやがったか。涼が残念そうにお菓子を引っ込めた。
しかしその場でシャッフルしてまた落とした物を父親に優しく差し出す涼。
「よぉし、それは挑戦だな? いい度胸だかかって来いっつーの!!」
「虎之介! 大人げないし、皆さんの前だからやめて! あとその口調、子供たちに移ると困るからやめて!!」
「おう……」
奥様からの苦情のオンパレードに創がたじろぎ、涼がにやりと笑う。
俺様、何様、創様が奥様には勝てない、という珍しい光景に久留巳と桜澤が楽しげに顔を見合わせる。
「あの創先輩が奥さんの言うことは素直にきいた!」
「しかも若干しょげてるところが驚愕ポイントだね……」
「お前らなぁ……!」
生意気な口を叩く後輩と小憎たらしい同僚に仕置きを……と創が口を開こうとするが即、奥様から鋭い視線が飛んでくる。
「とらっ!!」
「勿論俺は叫ばねぇし、仲良くしてるけどなぁー!!」
「ならばよし!」
そんな元気な様子を見て甲斐や白鷺も微笑ましげに笑っている。
「いつの時代も母親という存在は強いですね」
「そうですね。すっかり彼女も母親になってる」
心底感心している甲斐の言葉にあいが大きくため息を吐いて首を縦に振る。
「そりゃそうですよ。あんなマンモスみたいな人に似ちゃった双子に囲まれてるんですもん」
あの状態の創や涼の日常風景……想像するのは容易い。
郷田と白鷺、甲斐がうん、うんと頷きながらあいを気苦労を忍ぶ。
「あぁ……。気苦労耐えなそうだな」
「立派です」
「……なんかお礼言うのも変な気がしますが……ありがとう、ございます?」
「ねぇ! ねぇ! パパママ!!」
話が一段落しそうなその時、もうひとりの双子の相方、真奈が興奮したまま駆け足でやってくる。
さっきまで南雲と平和に遊んでいたのに、もうお転婆プリンセスに戻ってしまっていた。
「海外のディズニーランドはすごいらしいの!」
「へ、へぇ……」
ま、まさか……連れていけとか言うんじゃ……と、あいが身構えているが真奈は創の娘だ。
いつもあいの想像の斜め上を電光石火で駆け抜けている彼女は今日もやっぱり爆弾を落としてくれる。
「だから! こーじとの新婚旅行はアメリカね!」
「「「はぁー!?」」」
「えぇー!!!!!!! な、何言ってるの真奈ちゃんー!!」
創や新規事業部のメンツだけならいざ知らず、当事者のはずの南雲が誰よりも声を上げている。
いや、なんて恐ろしいことを。あんな恐ろしいモンスターを敵にするなんて恐ろしい、兎にも角にも恐ろしい。
「ね、ねぇ、真奈ちゃん……? そんな話は、」
「だってさっき一緒に行こうねって言ったでしょ?」
「言った。確かに一緒に行こうねとは言ったけど、」
「じゃあ決まりね! 口約束だけなんて男じゃないわよこーじ!」
「い、いやぁ……一緒に行くのと新婚旅行はまた、別の話……」
南雲が本気で焦っているが、そんな事はどうでも良い。
てめぇ、うちの愛娘を何誑し込んでやがる、ロリは犯罪だぞごらぁ!と今にも爆発しそうな勢いで創が南雲の元へと接近している。
「なぁぐもぉぉおおおおぉおぉっ!! どういうことだっ!?」
「ぼ、僕にもさっぱり……!」
「い、いや虎之介! この状況どう考えてもうちの真奈が悪いっぽいでしょ! どこをどうしたらそうなるの!」
「いいや、きっとこいつが純粋無垢な真奈をたぶらかしたんだ……!」
そうじゃないと目頭から汗が出るだろ!と、創が声を大きく荒げる。
「てゆーか真奈! どうして南雲君なの? 好きなの?」
「うん!」
「でも結婚するなら普通の好きじゃダメなのよ? 特別な好きじゃないと」
こんな真昼の大森亭で幼稚園児に向かって恋愛の好きについて説き始めたあいもどうやら冷静ではなかったようだ。
それはそうだ。だってまだまだ自分の腕から娘が旅立つ想像なんてしたくない。
しかしもっと冷静じゃない創が小さな真奈に本気と書いてマジで詰め寄る。
「南雲のどういうところに惚れたんだよ……!?」
「こーじは私の言うことちゃんときいてくれると思うから」
「へ?」
「だって新婚旅行って強気で言えば断れないでしょ?」
ま、間違いない。これは間違いなく創家のDNA……!
あいがちら、と夫を見ると思い当たる節がありありのせいか直ぐに目を逸らしてくる。
そして第三者、他人事視点で冷静な久留巳、郷田、甲斐、桜澤、白鷺は何事も無かったかのように食事を進めつつ今起こった事について的確な答えを出す。
「要するに、南雲先輩……真奈ちゃんのパシリ任命ってことっすよね?」
「まぁ、そうなるな」
久留巳がから揚げを口にしながら言えば、郷田がビール代わりの麦茶を飲みながら同意する。
「年若い女性からの求婚なんて、喜ばしいじゃないですか」
「僕なら創がお父さんになるとか死ぬほど嫌だけどね~」
「それは同感ですね」
フォローしたいんだか、どうでも良いんだか。白鷺が適当にコメントしながらメニューに書いてあるあんみつという文字を何度も読み上げている。
白鷺の適当なコメントに続いたのは桜澤、そして珍しくそこに同意を示す甲斐。
みんなみんな生きているんだ、どうでもいーんだと軽快にスルーしているが創はひとり、桜澤と甲斐の発言に噛みつく。
「ざっけんな! 俺だってお前らの親父なんて冗談じゃねぇ! しかも方や同い年じゃねぇか!」
同い年じゃなくてもお前のみたいな面倒くさい男には娘はやらない、とエキサイトする創のズボンをくいくい、と愛らしく引っ張り宥めるのは先程から会話について行けない涼だ。
「パパ、落ち着いて。ほら、おまんじゅう食べる?」
「だからそれは落ちたやつだろー!!」
今日も元気な大森亭。元気なアンフィニット新規事業部の一味のせいで一段とうるさくしていたが、店主はいつもの事だと笑い飛ばしていたようだった。
リクエストありがとうございましたー!