-
ソウシで8年前のリクエストを消化してみた。
-
ソウシで妊娠発覚☆がリク内容です。
ソウシが何か薬の調合をしている時は、当然だけどあまりあいを構ってくれない。というより構えないのが実情だろう。
最近はソウシにちょくちょく薬草の種類を習って、簡単な胃薬くらいならば調合出来るようになったあいだったが、今ソウシが何をしているかはチンプンカンプンだ。
手伝いたいけど、お邪魔虫になるのは嫌。
だからあいは邪魔にならないようにひっそりとソウシの背中を見つめて見守るしか出来ない。
因みにそんなあいの可愛い様子にソウシの集中力が切れていたりするから実は邪魔になっていたりするのはご愛嬌だ。
そもそも、その場合はあいに罪はないだろう。これはソウシ個人の問題なのだから。
つまりあれもこれもどれもそれも、全てソウシがあいにメロメロ過ぎるのが悪い。そして愛らしすぎるあいが悪いのだ。
今日もあいの可愛さに負けて、ソウシはあいを構おうと算段を始める。こんなにも意思が弱かっただろうか?男は困ったものだと自覚はしている。
「あいちゃん、ちょっときてくれるかな?」
「はいっ」
ソウシに呼ばれてあいが嬉しそうに駆け寄っていく。
何か手伝える事があるのだろうか?と、あいが全身から喜びを放っているのがもう眩しい。
「なんですか? 私、何か薬草でもとってきます?」
「ううん。それよりもここに座って」
「……え?」
ソウシが指差すのは自分の脚の上だ。あいは仕事中なのに、と怪訝な顔をするが男はニコニコといつもの笑みを浮かべながら繰り返し自分の脚を軽く叩いて愛妻を呼ぶ。
夫に呼ばれてあいは困惑顔だが、やはり嬉しくてトコトコと近寄りソウシの脚に座り、背中を預ける。あまり迷いが無かったのはもちろん普段からこの状態でイチャついているからで。
「ソウシさん……そろそろお客さん来ますよ?」
「うん、知ってる。だからえっちな事はしないよ」
「何言ってるんですか!」
「ははは、顔が真っ赤だねあいちゃん」
「ソウシさんのせいでしょー!」
海賊を辞め、ヤマトの辺境地で居を構えたソウシに嫁いだあい。
日夜患者と真摯に向き合い、そして日夜妻と真摯に愛し合う慎ましくも幸せな日々。
彼の物腰柔らかで誠実な人柄は直ぐに街中で評判になって、あっという間にソウシは街で人気の医者になった。
しかも彼はあからさまに妻一筋であると公表して歩くから男からの評判もなかなか良かったりする。
ソウシは男女隔たりなく、いつだって真剣に病魔と向き合ってるのだから当然の結果のようにも思えるが。
さて、そんな頑張るソウシさんにビックリサプライズのお届けです。
「……うー……」
あいが朝弱いのはいつもの事として。寝坊助で朝から若干不機嫌そうな顔になっているのは仕方ない事として。ソウシのキスですぐ機嫌が直るから問題ない事として。
そんなあいが健気に旦那様の為に食事を作るのもいつもの光景で、が、しかし。
いつもと違うあいの顔色。気持ち悪そうな顔をして味噌汁をかき混ぜている。医者であるソウシは一目見ただけで彼女の異常に気付いた。
「……あい?」
ソウシの顔が不安げに揺れる。
愛しい愛しい新妻が元気がないどころか具合を悪そうにしている姿を見るのは身を切られるより辛い。
「あ、なんか風邪気味っぽくて。そんな本気で辛い訳じゃないから心配しなくて大丈夫ですよっ」
「本気で辛くなってからじゃ手遅れなんだよ。良いからおいで」
医者である自分が側に居ながら何故頼ってくれようとしないのか。
連日忙しそうに立ち回るソウシを気遣ってくれているのは解るが、一番守りたいあいが自分の隣で苦しんでいるなんて本末転倒も良いところだ。冗談じゃない。
「あい、そこに座ってごらん」
ソウシに言われてあいはちょこん、といつもふたりが食事を囲む座布団の上に座る。
「ちょっと診せてね」
あいの目の下、喉、胸の音を聴き取り体調を確認するが……特におかしな点は無い。不安要素を強いて上げるなら若干貧血気味なことくらいだろうか。
しかし、そもそも今のソウシの技術じゃ発見できない病があいの身体を蝕んでいたらと思うとゾッとする。
「あい、具合悪いと思ったのは今日、突然?」
「……えっと、」
「その反応だと今日に始まったことじゃないね」
「…………はい、」
言いづらそうにあいがソウシと目を合わせずに居る。気まずい、と思っているならば悪い事をしていると自覚は出来ているようだ。
ならば怒る必要もないし、責めるつもりもない。だが、次に同じ事をして貰っては困るから笑いかけてやるのは後少しだけ遅らせるが。
「それで、どういった時に気持ち悪くなるの?」
「ん……、」
あいが首をひねって考える。真剣に考えてはいるが、言われると直ぐには出てこないのが初期の自覚症状だ。
「じゃあ、どういう症状かわかる?」
「えーっと、今のところ吐いては無いけどなんだか気持ち悪いっていうか、ダルイっていうか、食欲ないっていうか……今は眠いです」
それら全て合わせると、すぐに思い当たるものがある。それも、かなり当たり前というか、当然の結果というか。
「……あい、最近月のものは?」
「んー……、あ! 曖昧だけど大分遅れてるかもしれませんって、ことは?」
「もしかしたら、そうかもね?」
ソウシがいつもの笑顔を浮かべると、あいの瞳が期待でいっぱいになる。
あいの熱感を調べてもあまり正確にはわからないが、やはり通常よりも熱はある気はした。
診察中、こういうケースも何件かある。風邪や病気かと思ったら妊娠でした、なんていう話は良くある話だ。
だが実際、自分の嫁がそうなったとなるとソウシも内心穏やかではいられない。
もしかしたら、違うかもしれないが……違うかもしれない現実を患者自身に伝えないといけないが。
「ソウシさん! 生まれたらどっちが良いですか!?」
「もちろんあいに似た女の子が良いなぁ~」
「残念でした、なんとなく男の子です、ソウシさん似の!」
「わかるの!?」
「なんか今私の中の誰かがそう言ってます!」
ソウシの脳内は完全に浮かれてしまっていた。いや。こんな日を想像してはいた。自分は子供が生まれたら喜べるか、なんて不安すら抱いていたのに。
だが実際にその日がやってくると「名前どうしようかな~」とか「今妊娠初期だから多分春ごろ生まれるかなぁ」なんて。
残念ながら、ソウシは普通の男だった。新妻との愛の結晶が出来たとなればやはり嬉しい。
「船長たちに教えたいですね」
「嫌でもそろそろ来る頃だからね、きっと喜ぶよ」
「どうしよ、ちょっと照れますね」
「ははは、未だに諦めてない奴らがこれで諦めると良いけど」
「何を?」
「色々と」
あい自身を、とは言わずにまたいつもの笑顔でニコニコ笑うソウシ。そんなソウシにあいもつられてニコニコ笑う。
そしてその数ヵ月後、お腹が大きくなったあいに向かって「母子共に育ててやる」とかの給う馬鹿を切っては捨てる事に若干気付いては居るけど今は見ない振りをする。
更にまたその数ヵ月後、あいのお告げの通りにソウシに似た男の子が授かるのは誰もまだ知らない。
いつも愛が届く場所で
いつだって愛を届けるの
あー……前回の創のタイトル付け忘れてたなぁテヘペローションw
。゚(゚ノ∀`゚)゚。アヒャヒャ
リクエストありがとうございましたー!