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【kai】
「桜が咲く前に」か。
窓から空を見あげる。
東京はもう、葉桜だ。
不思議な感じ。
「男役、七海ひろき」はもう居ないなんて。
でも、わたしはいま確かに
ここに居る。
ちょっと改まった集まりに出るとき
つい…ネクタイをしめてしまう。
だってこれが長年の習慣だったんだ。
美弥ちゃんからは
「いまのうちに独りを満喫しといて~。
もうすぐ月組も東京だから」なんて
優しいんだか冷たいんだか
さっぱりわからない
(でも嬉しい)メッセージを貰った。
ふふ。
急にスカートはいたり
パンプスはいたりしなくてもいいや。
フツウにしていよう。
自分は自分。わたしはわたし。
何事も無理はよくないよね。
と、思ったら
………………かわいいかわいい
星娘ちゃんからメッセージ。
「お弁当、作ったんですけど」
可愛いな。
:「食べたいな、お弁当」
:「持っていきますー!」
………なかなか積極的。
嬉しいけど。
そんなわけで
ごめん、名前は伏せるけど
急なデートだ。
しかもお部屋デート。
現れた彼女は
……お洒落して来てくれて。
「おじゃましまーす」
「どーぞ♪」
とりあえずお茶いれて、と
お湯を沸かしながら振り返ると
リビングの彼女はお弁当をひろげてる。
すごいな、お花見仕様だな。
「飲み物は、温かいのでしょ?」
「はい………!」
「覚えてるよもちろん♪
冷たいの飲まないよね。
でも、緑茶、ほうじ茶
それから烏龍茶があるよ?」
「………!ぇっええと、
ひろきさんといっしょで…」
ありゃ。
真っ赤になっちゃった。
と思ったら唐突に
「お独りの部屋に
ふらふら来たんですから、
覚悟は決まってますっ!」
「え」
「ずっと、好き、です」
そんなこと言われると邪念が。
「や。あの、彼女いるからさ」
「はい。
彼女さんになろうなんて
思ってません。
そんな無茶な………」
いや、むしろ
彼女にならないでアレコレOKて
無茶じゃない?
………ないか。
いいのかな。
ん?いや、よくないか?
「え、と
とりあえず………緑茶にするね」
「///初恋なので……す…」
「………ありがとね」
隣に座る。
ぴくん、と緊張する彼女の身体。
「…緊張するの?」
「………///」
下を向いちゃった。
「……幾度も。幾度も一緒に踊ったのに?」
顎に手をかける。
大きな目がこちらを向く。
真っ赤っか、だし
小鳥みたいにふるふるしてるけど
……真剣、だ。
そっか。
そのまま顔を近づけてゆく。
緊張して息が止まっちゃってるよ?
ショウではいつもこのくらい
当たり前にしてたんだけどな。
でもいまはショウじゃない。
だから
いつものように、止めずに
唇を触れあわせる。
「………///っ」
すこし離す。
「初恋の思い出になったかな?」
涙ぐんでる彼女は綺麗だ。
「………きれいだね」
「……これじゃ…足り、ませんっ………」
ん。じゃあ
もういっかい。
………ちょっと舌入れてみよ。
ちゅ、という音が部屋に響いた。
あれ。これ駄目な展開?
慣れない彼女のキスは………
上手じゃない。でもかわいい。
よし。わかった、大人のキスをしよっか。
両頬に手を添えて小さい顔を包み込んで
時々耳にもキスをしながら
小さい口のなかも
たっぷり味わって。
「おっと」
ぐらり、と
バランスを崩した彼女を支える。
あ、ふにゃふにゃだ。
「ふ。足りないとか言うから。
………だいじょぶ?」
「………ひろ、きさん………」
「刺激つよすぎたかな」
首をふるふると振る様子が愛らしくて
予定変更。
いかせてあげる。
ちょっと刺激的な初恋の思い出を
持って帰って。
ソファーに座って
「おいで?」
抱き抱えて
ブラウスのボタンをていねいに開けてゆく。
でも脱がさないけどね?
ブラの上から左手を入れる。
「………………!!!」
びくん、と跳ねる身体。
「だいじょぶ?」
「は、い………」
「怖くないよ?やなことはしない。
でも、ちょっと気持ちよくなって?
お弁当も………想ってくれたことも、
ぜんぶ嬉しかった、よ」
言いながら固くなった胸の先を
くるくる転がす。
「ゃ………ぁっ………はぁ」
すごい可愛い、びくびくしてる。
ちっちゃい耳に唇をつけて聞いてみる。
「これ、どうかな………キモチ、いい?」
「っ………い、い…です///
でも、あたまがっ、
ぼーっと………して」
「ふ。よかった。もっと気持ちよくなってね」
右手でスカートをまくって
下着の上から。触れる。
「すごい………熱く………なってるね…」
「あ、ぃ、ゃぁ………んっ、はぁっ、」
彼女の抑えていた声が
がまんできなくなってきてる。
何年も一緒に居たのに
はじめての声。
ぷっくり膨らんだところを
直接触る。
指は………入れないで、と。
それは恋人の領域。
初恋の思い出ごときのわたしは………
ココだけでいかせてあげる。
心を込めて。
指先でゆっくりやさしく柔らかく捏ねる。
「っぁ………はぁ、ひろ、き、さん」
「いい?」
「ん、っ、ぁ………ん、あん、ああぁんっ」
「ほんとにかわいいね、だいすきだよ」
囁いた瞬間、
身体がびくんびくんと波打って
ぐったり力が抜けた。
はや、い。
息が落ち着くまで抱き締めて。
ぐっしょり濡れたところを
ぜんぶ、きれいに拭いて
服を着せて
お茶いれて
他愛ない話をしながら
二人で、
美味しいお弁当をたべた。
「ひろきさんと。こうして居られたこと
………わたし本当にしあわせです」
「お弁当、ありがとね」
「あの、友達、いえっ、あの
ただ、下級生として………これからも
時々ご連絡していいですか?」
「もちろんだよ、
でも、今日はそろそろ暗くなるから送る」
車で彼女がふいに歌う。
ずいぶん、懐かしい歌。
そうだ、この声が
当たり前のように響いていた日々が
もう終わったんだ。
「ありがとうございました、ここで」
「ん♪」
「失礼します」
車に花の香りを残した彼女が
部屋に入るのを見届けてから
アクセルを踏む。
夕暮れの葉桜は
うすいピンクと葉の色と空が混ざって
溶け合って
夢みたいな色になってる。
この、きれいな色を
あなたも、見ているといいのだけど。