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ありがとう
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もうすぐライブが始まる。王様はいつも通り余裕そうに鼻歌を歌っている
「王様、そろそろ準備するよぅ」
「わはは☆分かった準備するか」
と言って、衣装に着替えて
「おお!霊感が湧いてくる」
「だめですよ。今から始まるんですから…」
「…ああ、分かった」
急に冷めたように喋る。急にテンションが低くなり少しびっくりした。
『それでは次はknightsです』
放送が流れる。
「じゃあ、行くか!」
と言ってステージに上がる。いつものように対応しているけど、いつも以上にテンションが低かった
だけど、歌はいつも以上に上手かった。
「~♪」
ライブが終わり控室で
「今日は、王様いつもよりテンション低かったわね。どうしたの?」
「そうだねぇ。王様、霊感が湧いてくるって言ってからなんかおかしかったけどー」
「そうかー?別にいつも通りだぞ☆」
と言うとさっそうに帰る。
「…本当に王様どうしたんだろうね」
と言って、他の人も帰る。
次の日もその次の日も王様の様子がおかしい
なぜか、いつも書いている作曲を全くしない。
しかも、いつも以上に来る頻度が多い。なのに、やっぱり、作曲をやろうとしない…
「…おうさまー、どうして、作曲しないの?すればいいのに…おうさまらしくない」
「…うん?別に霊感が湧かないから書かないだけだけど?」
少し暗い感じで言われる…
「ふーん、王様が霊感湧かないなんて珍しい…」
そんな話をしながら練習を始める。
練習はいつも通りなのに、テンションは低い…
王様が帰った後…
「…もうすぐ王様の誕生日ねえ」
「そうだね、だけどあの感じで大丈夫なのかな?」
皆王様のテンションが気になってあんまり、考えがまとまっていない。でも、折角の王様の誕生日なのでグループ皆で祝いたいという気持ちが皆にもあるようだ。
とりあえずその日は何も考えずに家に帰った。
次の日…は、土曜日だったが、王様の妹が家に来てほしいと言っていたので王様の家に皆で向かっている。
「王様の家なんていつぶりかしらね」
「本当に久しぶりにおうさまの家に行くよね。だけど、夜がよかったな…暑い」
「しょうがないでしょ!それに夜に家に呼ばれても、来ないでしょ」
と話していると王様の家に着いた。家の前には、王様の妹のるかちゃんが立っていた。
「皆さん急に呼びごめんなさい。だけどお兄ちゃんの様子がおかしかったから…」
(おかしいのはいつもだと思うけど、妹の前ではきちんとしてるんだっけ?)
妹に部屋を案内され、王様の部屋に入る。
王様の部屋はすごく荒れていた。前に来た時も汚かったけど以上に汚かった。っというか、血がところところについていて、王様は、紙の前で何かをやっている。部屋の様子からして作曲だとは思えないので
「王様!何やってるの?というか部屋汚いんだけど!」
と言っても返事がない。ずっと、何かを一生懸命書いている感じだった。
「おうさまー?もしかして、こんな状況で作曲してるの?」
と凛月が王様のそばによる。
近くで見てみると、王様の手が血だらけ。しかも、その血で曲を書いているようだ。さすがにやばいと思った
「王様!こんな状態なのになにのんきに作曲してるの?」
と言うと気づいたのかこちらを見て
「セナ、今は作曲中だから話しかけるな!!!」
耳がおかしくなりそうになるような大声で叫ぶ
「とりあえず、作曲はいいから手当しましょう?」
嵐が王様の手を強引に鉛筆から離した。
「だめだ…もっと刺激がないと曲が書けない」
と言って。ハサミを出す。こんな状況の王様だから何をするのか察し、凛月と嵐で止めにかかる。
「だめよ!王様!それ以上ケガしたら貧血とかで倒れちゃうわ」
「そうだよ、おうさま少し落ち着こう…?」
皆で王様がこれ以上作曲しないように手足を抑えた。王様は抵抗はしない。いつもなら、いやだと言って捕まる前に逃げるのに…
表情を見たら王様はすごくつらそうな顔をしていた。
「おうさま…本当に最近はどうしたの?前のライブの時から様子がおかしいけど風邪でもひいたの?」
「そうだとしたら、休んだほうがいいわよぅ」
こちらの心配を王様は
「大丈夫、大丈夫だから…」
の一言で終わらせた。
でも、けがをしている中で話すのもつらいと思うのでルカちゃんに頼んで救急箱を持ってきてもらった。
手当をしながら手を動かそうとするのでとりあえず、片方ずつ手当をした。
「レオ君…出来たよ。だから少し手を止めて話を聞いて?」
と話しかけてもなにも返事がない。返事ではないがさっきから
「浮かばない…浮かばない…」
とばかり言っている。
「…おうさまをここの部屋に置いておくと、また、怪我をしてでも書こうとするよね…?」
「そうねぇ、と言っても学校に泊まるのはせんせーに迷惑がかかるし…」
「うーん、それじゃあ誰かの家に泊まらせてもらうしかないかなー?」
と王様の様子を見つつ相談していると凛月の携帯に一件の着信が入った。それを見てみると兄者からだった。
「…少しうちに泊めてもらえないか聞いてみようか?事情を話せば入れてくれるでしょ」
と言いボタンを押す
「おお!凛月。出てくれるなんて珍しいのう。今日は、お兄ちゃんに甘えてくれるのかえ?」
ボタンを押した瞬間、あっちから、声が聞こえた。いつも通りのテンションで凛月は話したくないと目で訴える。
嵐は頑張ってのポーズ。泉はずっと笑っている。
「…兄者、静かに聞かないと殺すよ」
といった後事情を説明した。
「…ふうん、そうか月永君がそんな状態だったとは…分かった、家に泊めてもよいぞ。っと言うかいつもは聞かなくても勝手に連れてきていたのに珍しいのう。もしかして吾輩にあm…
ここで通話を終了する。
「っと言うことだから、今から連れて行こうか」
「そうねぇ、速いほうがいいかもしれないし」
「うん、それにおうさままた、刃物で手をやろうとしてるし…」
それを全力で阻止してから家族に事情を話し、王様を朔間家に連れていく。
その間は、凄くおとなしかった。っと言うよりは、疲れ切って、元気がない状態だった。
家に着き、ドアを開けると兄の姿が
「結構早く着いたんじゃな。月永君の家とここの家はそんなに離れていなかったかえ?」
と言いながら、王様を担いで
「みんなは、着替えなどを持ってきたらどうじゃ。ここにある服は全部黒じゃから…」
「それじゃあ、一回持ってくるー?」
「そうねぇ。そうしましょう。それじゃあ、その間凛月ちゃんと凛月ちゃんのお兄さん。王様をよろしくお願いします。」
ニコっと笑い二人は服を取りに家に帰った。
「…兄者、王様はどこにいるの?」
「うん?ここにいるじゃろ…っていない?」
いつの間にかどこかに行ってしまった。王様を探しに凛月は部屋の中を、兄者は外をくまなく探した。
「おうさまー、どこで作曲をしているのー?」
と一番上の大きな扉に着いた。確かここは、今は物置になっている部屋だったかな?と思いながら扉を開けた
「おうさま!」
その部屋の隅に王様の姿があった。その王様がいるところには写真が張って、その写真は、前に王様がうちに泊まりに来た時に
撮った。兄者と、俺と、王様が笑顔で写っている写真。王様はそれをまじまじと見ていた。
「…おうさま?この写真が気になるの?」
「…これって、俺が霊感が湧かなくってそれを手伝ってもらうために2日くらい泊まった時の写真だよな?」
いつもは覚えてないくせにこうゆうのは、覚えているらしい。確か王様は、興味のあるとこしか覚えていないはず…
「…そうだねぇ。懐かしい写真だよね」
「なあ、この時のようにまた笑える日が俺に来るのかな?」
「…きっと来るよ。だからさ、無理に作曲しなくてもいいんじゃない?俺たちが支えてあげるからもっと騎士に頼ってよ。王様」
「ありがとうな、リッツ」
少し笑っていた。笑う姿は久しぶり見たので少しうれしくなった。
「ほら、皆が心配するからそろそろ行くよ」
「…うん」
今回は素直に着いてきてくれた。
「王様、今日は作曲しないのね?」
「うん、今日はもう疲れたからしないぞ!」
少しいつもの元気が出てきて皆嬉しそうだ。
…あれから、もう一週間たっているけれどまだ、王様は作曲ができないらしい。みんなはストレスとか疲れすぎて出てこないとか言っていたっけ。
「月永君、紅茶は飲むかぇ」
「…」
急に喋らなくなる。さすがにびっくりして王様のほうを見ると寝ているようだ。
「この一瞬で寝たの?このあほ」
「まあ、疲れていたんじゃないかしらね」
「そうだね、今は寝かしてあげよう」