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モンペではありません
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『今すぐダルマになるか、ミンチになるか選べ』
「わ、悪かった!悪かったって!だからナイフをしまえっ!」
皆さんこんばんは、
イケメンなのに苦労人のアレクセイです。
ただ今嫌悪感丸出しでブチギレ中で御座います。
高速列車に揺られ約2時間、マドリッドについて
可愛いスティーブンの安全の為ささっといつもより格段に良いダブルの部屋を取り。
スティーブンにお留守番をお願いして偽造パスポートと身分証明書その他諸々を頼みに来ています。
金さえ払えば1日で出来るという仕事っぷりには感心せざるを得ません
この、クソ男を除いては…
『ルシオ、どちらか、選べ』
単語単語を区切って至近距離でハッキリハキハキと問いかける。
今まさに私にダガーを突きつけられているのが
ルシオ・ブルゴス
またの名を[何でも屋のルシオ]
スペインの闇に生きる者なら名前くらい聞いたことのあるだろう。
殺し以外はなんでもやる、裏での仕事をメインにしてる奴だ。
見た目はスペイン人らしい濃い顔立ちの色男だが、節操無しのバイでその色男ぶりを壊滅させるくらいのクズ。
老若男女関係なし、好みだったら直ぐお手つきにし、そのくせ飽きるのが早くて直ぐに捨てる。表向きの仕事が小さな書店なのだが、その理由も[好みの奴が来た時にそいつが興味があるものが丸わかりになって口説きやすい]というもの…ザップの方がまだまだ可愛い位のこのクズに私はここ数年言い寄られているのだ。
最初に出会ってから数時間後に番号教えてもいないのに電話がかかってきた時はぞっとした…
毎度毎度セクハラ発言はするわ、尻は揉むわ、腰を引き寄せるわ…
これがまぁ私が情報収集や潜入してる最中の相手ならまだ我慢するが。コイツはそれに掠ってすらいない、却下、断じて却下である。
まぁそれはいつもの事だからまだいい、
私がいつも通りルシオの手首を捻りあげればそれだけで済むのだが…
今回、コッソリ隙を見て撮ったスティーブンの写真と共に身分証明書、パスポートその他を頼んだら…
[おいおいアレクセイ、いつからショタに目覚めたんだ?まぁこのガキもあと6年もすりゃ食べごろだろうけどよ…そうだなぁこのガキの目の前でナニしてくれたら…]
まぁ最後まで言わせませんでしたよね?
私はいいんだよ私は、慣れっこですからね?
イケメンの星の下に生まれた宿命ですから。
しかし、スティーブンの目の前で…と言われて思わずプッツンしてしまい、一瞬でルシオを壁に押し付け頭スレスレにダガーを突き立てていた。
最悪コイツを殺しても身分証明書やパスポートは他のやつを探して頼めばいいのである。
本気でヤッてしまおうかとダガーを握る手に力を込める。
「わ、わかった…二度と言わねぇ…金もタダでいいから…勘弁してくれ…」
ホールドアップの体制で本気で怯えるルシオを見て、頭が徐々に冷めてきた。
『…金は払う。二度とその子供について下品な口を叩くな』
いいな、と念を押して睨みつけ、押さえつけていた手を離してからダガーを消すと、ルシオはコクコクと何度も頷いてから腰が抜けたように椅子に座り込んだ。
「ふぅぅ……で、そのガキの詳細はどうする?」
『出身はスペイン、誕生日は6月9日、8歳だ』
「詳しくは訊かねぇでおくよ…俺もまだ命が惜しい。明日の夕方取りに来てくれ」
『ああ…』
書類なんて証拠になりそうな物でのやり取りはしない、写真だけはデータ送信しかないがあとは全て口頭のみのやり取りを終了し店の出口へと向かう。
「…しっかし、こんなガキ連れてたら足手纏いにしかならないぜ?」
ドアに手をかけたところで後ろからかかったルシオの声に足を止める。
失礼な!うちの坊っちゃまは優秀ですわよ!
『ならないさ…彼は優秀だ』
これから鍛えるしね!難点はエスメラルダ式の使い手がどこにいるかなんだけど、それは今は置いておく。
情報屋にコンタクトしなきゃかなぁ…
「そうかい…楽しみだよ」
お前なんかの所に誰が連れてくるかと思いながら、今度こそドアを開けて外に出た。
奥まった路地から出てホテルに繋がる大通りを歩く、途中チュロスとホットチョコが有名な店を見つけた。
この店は前世でもあった、老舗の店で混む時は長蛇の列らしい有名店だ。
前世の同僚が彼氏と行ったと聞いた時はリア充爆発しろと思った記憶がある。
スティーブンは甘いものが好きだろうか…
まだ子供だし、喜んでくれるといいのだが
苦手なら私が食べればいいかと自分の分とスティーブンのお土産に、チュロスとホットチョコを二つテイクアウトで頼んだ。
喜んでくれたらいいなぁ…