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すれ違いと…
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ピリリリ…
「スティーブン」
《申し訳ありません、見失いました》
カジノに通う血界の眷属を倒した後、後始末を隊員に指示していた俺は電話越しに聞こえるその言葉に
[やっぱりか]と溜息を吐いた。
《捜索しますか?》
「いや、いいさ…多分今頃飛行機の中だ」
《ですが…》
「犯罪者や化け物じゃないから安心してくれ、すまないね…こっちは済んだから合流してくれ」
それだけでもないのだが、敢えてここはぼかしておく
なんせあの人を探してるのは俺だけじゃない、俺の探し人が誰なのか本部に知れたら彼に迷惑をかけてしまう…それだけは避けたい。
電話を切り、ふと横を見ると緑の目と目があった。
「スティーブン、何かあったのか?」
「いや、探してた人があの避難客の中にいた気がしてね…」
「君の探し人?」
「ああ、もう14年会ってないかな…ううんそうだな…養父であり、師匠…かな?」
うん、説明するならば養父であっている。
小さい俺の願いを聞いて、鍛え育ててくれたのだから…しかし今一つしっくりこない違和感に首をひねっていると、クラウスが眉をしかめて少し声を荒げた。
「お父上…それは探した方がいいのでは…」
「いやぁ、無理だよ。あの人は世界中を変装しながら飛び回ってる。痕跡を見つけた時にはきっと別の国にいるさ」
「しかし…」
「クラーウス、大丈夫だ僕は…」
「…わかった」
「さぁ、後片付けしちまおう」
全く、見た目に似合わず気遣いのある男だ。
俺より強面で大柄のこの相棒は何より家族の絆とか友情とかを大事にしているのだから、しかもその[家族]や[友情]の範囲が広い。
さぁさぁとクラウスの大きな背中を押して、怪我人のチェックに向かう。
本当は少しショックだったが、とてもじゃないが顔に出すなんて出来なかった。
だって父親に無視されてショックですなんて、数日後には27にもなる大人の男が言う事じゃない。
あの時顔を見たわけじゃない、目が一瞬合っただけ。
それでも彼だと直感したのは、その目が幼い頃から好きだったとても綺麗な青銀だったからだ。
[俺が強くなったら一緒に戦う]と言う約束…
それを忘れるような人ではないと言い切れる。
つまりは…彼にはまだ俺が未熟に見えるという事。
ならもっと強くなってやろうじゃないかと、何だかやる気がみなぎってきた。
「君!そこの彼に手を貸してやれ!そっちは…」
ピリリリ
「?スティーブン」
《あの、さっきの対象人物が乗った便を調べたのですが》
「一応聞こうか、行き先は?」
《…フロリダのオーランドです》
「……は?」
《オーランド国際空港行きでした》
「…そ、そうか、ありがとうご苦労だった。合流はいいから、戻って休んでくれ」
ピ…
「夢の国でバカンス?まさかなぁ…」
その頃
「え……」
思わず声が出た。
慌ててチケット買って乗ったし、荷台に荷物置いてそのまま寝落ちしたから何処行きとかよく見てなかった。ゲートと出発便Noしか見てなかった。
ので…寝惚けた頭のままゲートをでて看板を目にして固まった。
[オーランド国際空港]
嘘やん
ここ…夢の国の本拠地や……
え、これ行かなきゃ負けじゃね?