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still wating〈ちな〉
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絹。
まさか偶然あうなんて。
似すぎてる、
でも人違いだと思った。
すっかり忘れていたと言えば
嘘になるし
いつも想ってたと言えば
それも違う
正確に言うと
「わすれたことにしていた」
そして
「とてもあいたかった」
絹は
中学校の同級生で
2年間をともにした。
となりでリズムに乗ってる絹。
なんで普通にしてるの?
昔わたしたち
初めてキスしたんだよ。
覚えてない?覚えてる?
……て聞けない。
絹はキラキラの目はそのままに。
…すっかり大人だね。
でも、わたしも
もう中学生じゃないからね?
せめて独身なのか聞こう。
「あのさ絹……」
そこでバン!とドラムがなって
あ。
sum41だ……しかもいまどきやる?
still wating…古い。
これ聞いてた夏が一気に甦る。
あ。
絹がほっそい身体で
フロアに降りて
もみくちゃにされに行くつもりだ。
わたしの手をひっぱる。
ごめん、だめなんだ。公演中だから。
怪我とかできないんだ。
て、いってもどうせ聞こえない。
さっき、階段から落ちそうになったくせに。
あぶないなぁ。もう。
ひっぱりかえして
隣に戻す。
「な ん で?」
その形に、絹の唇が動く。
「あぶないから、ね」
聞こえるように
耳に口をすれすれまで近付けて答えた
瞬間
たしかに
絹がハッとして
ライトのせいじゃなく
赤くなった…ように、見えた。
絹に惑わされる。
あの頃よりは
成長してるよ?わたし。
そう言おうとしたとき、
更に大音量で次の曲がかかった。
Over My Headだ。
どーなってるんだ今日は。
運命の女神様は味方なのかそうじゃないのか。
ほんとわからない、今晩。
絹が我慢できなくて
飛び出していってしまう。
なるほどね。見た目だけ大人になって
中はあの頃のままなのか。
仕方ない、
絹の後ろをついていく。