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no reason〈ちな〉
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……12月、会いに行くって言ったけど
スケジュールは山盛りなんだけど
絹にお手紙を書いたら
いてもたっても居られなくなって
千秋楽おわったのを良いことに
新幹線に乗ってしまった……。
顔をみて、
それから?
台風のとき電話したら
絹は元気なかった。
とりあえずLINEで
〈今晩は忙しい?
時間あったら会いたい。
東京に向かっています。〉
よし。完了。
……逢いたいな。ほんとに、すごく。
そう思って目を閉じる。
たちまち眠気に襲われて、
夢を、みた。
………………
「ちなつ!」
「…なに…」
制服を着た絹が
わたしの前を歩いてる。
ちっちゃいな。そっか中学生か。
ひとつにまとめた髪の後れ毛が
夕日できらきら光っててキレイ。
「ちなつと夏休み遊ぼうって言ってたけど」
「ん」
「引っ越すの、遊べない。ごめん」
「え?」
「親、離婚してまだ半年なのに
もう再婚するんだって」
「…絹…その相手って…」
「そう。あの気持ち悪い男。
娘になるんだからちゅーさせろって。
あんなのとファーストキスするなら
死んだほうがマシ。
でも、されそうな勢い。……さいあくっ」
強気な言葉を口にしながら
ふりかえった
絹の目に涙がたまってて。
「ダメだよ」
「…」
「絹、初めては、わたしとしよう」
迷わなかった。
絹の唇に
じぶんの唇を重ねた。
子供のキス。その先なんて知らない。
「///ち、ちなっ~」
唇を離して目を見つめる。
「もう、ファーストキスは無くなった」
「ちなつのバカーーーーぁ!!!」
バカって言いながら
笑顔だった#Name_3#の頬が赤く染まってて
好きだって思った。
今度いつ、あえるのかな。
……………………
そこで、目が覚めた。
…もう東京まであとすこし。
携帯を、見ると
絹からメッセージ。
〈いいも悪いも、新幹線なんでしょ?
残業断ったから家でまってる〉
胸がいっぱいになる。
ちゃんとわたしの仕事のこととか
ぜんぶ伝えて
…告白しよう……。
絹に似合いそうな
指輪の箱を持ってる。
手紙も買いたし
薔薇も買った。
まだ見ぬ千奈津くんにも
とりあえずプレゼントを買った。
いざ、
愛しい絹の元へ。