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girlfriend〈you〉
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ちなつの手紙にはいろいろなことが
丁寧に手書きで書いてあった。
(今時、まだ手書きの手紙ってあるのね?)
役者をしていること。
だいたい、男性を演じていること。
(なるほどね……納得のハンサムぶり)
プライベートもかなり制限されていて
自由な時間がとてもすくないこと。
(だから時間の感覚が変なのね?)
今度いつか、舞台を見にきてほしいこと。
(タカラヅカって昭和のものだと思ってた……)
息子の、
千奈津と仲良くなりたいこと
それから
引っ越して音信不通になったわたしを
とても心配した、と
連絡をずっと待っていたと
風の噂で留学したと聞いて
もう会えないのかな、と思ったと
そんなことも、書いてあった。
なんていうか
ちなつ……乙女なのね。
不思議なバランスの
ものすごく綺麗な生き物。
外見だけじゃない。
中身も、だ。
まっすぐな愛の言葉に
胸に甘さが広がるけど
突然
わたしがちなつを
傷つけやしないか
心配になった。
わたしはガサツでバツイチ
シングルマザーよ?
ちなつがわたしのgirlfriend?
すきだからって………そ…
かたんと音がして
ちなつが戻ってきた。
「絹、さっぱりしたぁー」
すっぴんのちなつは
昔の面影そのままで
つるつるのほっぺが光ってる。
「ふは。そんなにみないでよ」
嬉しそうに、ふふっ、と笑って
抱きついてきた。
ちなつの嬉しい心が
伝染してきて
…思考を奪われてしまう。
「ね、絹」
「?」
「きょう、たくさん名前を呼んでくれた」
「え、そうだった?」
「うん!」
この上なく自然に
優しく両手に顔をつつまれて
その手の動きに乗って、
少し上をむいたら
ちなつのキスがはじまった。
そっと重ねて
あたたかくて
やわらかかくて
…巧み…。
あ。
背中にちなつの左手が回ってる。
右手はわたしの頭を引き寄せてる。
それだけなのに
もう熱い。
頭の芯まで。