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世界はあなたの隣〜another sky〜【進撃trip/リヴァイ】
旅立ち
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『んー…!!疲れたぁー…』
今日の仕事はこれで終わり。
夕暮れ色に染まりつつある社内を目的地まで歩く。
土曜日のこの時間、残っている社員の数も少ない。
食堂の入口横にある紙コップの自販機。
いつものように、お気に入りのキャラメルマキアートのボタンを押し、カップに注がれるのをじっと待つ。
甘い香りが漂い、その場で一口コクンと飲むと、一瞬で疲れた頭を癒してスッキリさせてくれるんだ。
全面ガラス張りの窓際のテーブル席に座り、外を眺めながら、早めのペースで紙コップの中身を空にした。
――ブーッブーッブーッブーッ
マナーモードにしておいたスマホがバッグの中でブルブルと震えて着信を知らせる。
〈今日、夜そっちに行ってもいい?仕事の疲れをユズアで癒したい〉
同じ社会人の彼氏からのメッセージ。
彼、修司とは、1年の付き合いになる。
大学の同期で、いつの間にか想いを寄せていて…。
卒業直前、彼から突然の告白を受けて、付き合うようになった。
――〈うん、いいよ。夕飯作って待ってるね〉
良くできた可愛い彼女みたいな文面のメッセージを書き込み返信する。
本当の私は……まぁそこまで出来た可愛い女じゃない。
会社を出て、夕飯のメニューを考えながら、駅まで歩く。
毎日通る落ち着いた静かな街並みに立ち並ぶ、セレクトショップ。
ふと、何気なくショーウィンドウに視線を移した。
もう、閉店時間を迎え、店内の明かりは消えて、代わりに街灯の光が外の宵闇を映したガラスに、私の姿をぼんやりと浮かび上がらせた。
――あれ…?
ガラスに映された私の背後。
その景色に違和感を覚え、ついショーウィンドウに近づき目を凝らす。
そこには、見慣れない造りの建物が建ち並び、行き交う人々も日本人の顔立ちとは違うようだった。
そもそも、今、私の周りには誰もいない。
勢いよく後ろを振り返ってみる。
そこには、街灯に照らされた道路と歩道。
人の姿は見えない。
もう一度、ショーウィンドウに視線を戻しても、ガラスの中の景色は変わっていなかった。
相変わらず、大勢の人々が行き交い、馬車が通る。
不思議…。
こういうディスプレイが内臓されているショーウィンドウなのかな…?
吸い寄せられるようにガラスに手を当てた。
その刹那。
『…え…ひゃあ…!』
ガラスを捉えたと思った手は空を切り、グニャリと視界が歪み、身体に感じる浮遊感。
反射的に目を瞑る。
身体全体を纏う浮遊感に、意識が遠くなっていった…――
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