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七不思議
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学校の七不思議なんてよく聞くが、私には七不思議に加えたい程の不思議が一つある。
それは今目の前にいる太いゲジ眉が特徴的な彼、鵺野鳴介である。
何を七不思議の一つにしたいのかと言うと、彼のあまりにもモテなさ過ぎるところ。
彼女の私からしたら好都合なことではあるが、この見た目と中身でどうしてなのかと、逆に魅力がわからない人達に怒りたくなるのだ。
「すまんな、いつもいつも。」
「このくらい平気だよ。」
申し訳なさそうな顔をした後、いただきまーす!と私の用意したご飯を食べ始めた男。
彼は少し…いやとんでもなく生活態度がだらしない。お金がなくてまともに生活必需品も買えなければ食べる物も。何に使ってるのかと思いきやパチンコなんて通って。
そんなことで教師をやってられるなんて本当にびっくりである。
そんな彼の世話をしに、私は度々このアパートを訪れているのだ。
しかし彼の受け持つ児童達に会ったこともあるが、厚い信頼を寄せられているようだった。
その持ち前の霊能力で数々の問題から皆を守ってるのだろう。
詳しい話を聞いたわけではないが、時々とんでもない傷を負って帰ってくるのが物語っている。
真っ直ぐで素直で、だけどだらしないところがあって。その全てに惹かれて、今、私は彼と一緒にいる。
「ねえ、なんでモテないの。」
「へ?」
唐突な私の質問に食べる手を止めた彼はキョトンとした顔で見つめてきた。
「急にどうしたんだ?」
「だってこんなにいい人なのに…。」
「なんだなんだ急に〜!」
キョトン顔から徐々にゲジ眉をだらしなく下げてデレデレとした表情に変わる。
「責任感強くて意外としっかりしてて、けど金銭面も衛生面もだらしなくて、綺麗な女の人いればすぐデレデレしちゃうし、ことある事に幽霊の話しだすけど、でも見た目も性格もいいんだからモテても良くない?」
「???」
さっきの表情とはまた変わり、困ったような焦ったような表情。
「えーとつまり、褒められてるのか?」
「んー…んー? 褒めてる、かな?」
「なんじゃそりゃ。」
困ったように笑う彼に釣られて私も笑った。
彼の悪い所はもちろん嫌だけど、それを上回るくらいに良い所が好き。
「名前くらいだよ、俺と一緒にいたいなんて言ってくれる人は。」
「『人は』ね。 それ以外はどうだかなー。」
「待て、誤解するな、俺には名前しか…。」
「私には見えないからなー困ったなー。」
茶化すとこうやってすぐに慌てふためく。
こんな風に表情をころころ変える所も可愛くて好き。
こんな人を独り占めできるならモテてくれなくて構わないし、寧ろモテてほしくない。
有名になったらそれこそモテてしまう。
やっぱり七不思議には追加しないでおきます。
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