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戦闘訓練3
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「では次の対戦相手は〜〜〜〜!こちら!Bコンビがヒーロー!Iチームがヴィランだ!!!」
私は思わず両手で顔を覆って天を仰いだ。
「さいっあくだ……」
「宜しくなヴィラン」
「くたばれヒーロー」
ポンと肩を叩かれ励まされる。
ヒーローに励まされるヴィランってなんなの??
「Bチーム、Iチームは集まれー!移動するぞーー!!」
招集がかかり、オールマイトに向かって歩む。彼の元に集まったのは葉隠と尻尾がある道着を着た男子、それなら腕が複数ある大柄の男子生徒だった。
地上に出て別のビルへ移動する。ヒーロー側は外で待機、ヴィラン側は建物内に入って核の設置を行う。
焦凍側は他に大柄の男子生徒。私の方は葉隠と尻尾がある人だった。
「まだ挨拶してなかったよね、俺は尾白猿夫。個性は尻尾。こいつがあるだけであとは特に無いかな。武術が得意だよ」
サラリと自身の尻尾を撫でる。
「じゃあ次私ー!私は葉隠透!個性は透明化!偵察や密偵が一番得意かな!宜しくね!!」
「宜しく」
「宜しく」
靴と手袋だけを身につけた葉隠が元気に言う。
「黒冷焔。個性は炎魔。炎系の個性。宜しく」
「炎か〜かっこいいね」
「ほんとほんと!個性把握テストのとき凄かったもん〜〜!!」
「そうかな?ありがとう」
喋りながら核を持ち上げて移動を始める。尾白が「俺が持つよ!」とかって出てくれたが意外にも軽く問題ないので「大丈夫」と返した。
「核どこに置く?」
「窓がない部屋がいい。空を飛ぶ機動力があるやつがいたとして外から目視されたら窓から侵入されるだろ」
「なるほど。じゃあ階段近く?」
「まぁそうなるかな。最上階でいい?」
「全然いいよ!」
「いいよ。このメンバーで主力になるのは黒冷さんだから黒冷さんのやりやすい方法で」
「ありがとう」
最上階の5階に着くと窓と階段の中央辺りに位置する部屋に核を置く。
「よし。じゃあ手っ取り早く迅速に説明する」
「え、うん」
「ヒーロー側にいる半分野郎いただろ?白と赤の」
「「うん」」
「あいつの個性は半冷半熱。右側で氷の個性、左側で炎の個性が使える奴なんだ」
「「えっっ」」
驚く尾白と葉隠。
「つってもアイツは左側を使う気がない。右だけでやってくるだろうから私が相手をする。相性がいいからな。大柄の方の個性は分からないから何とも言えないが始まったら熱いし冷たい。アイツの気は私が引き受けるから大柄の方を頼みたい。2階3階辺りで足止めするよ。誰か大柄の情報持ってる人いる?」
尾白が手を挙げる。
「俺知ってるよ。障子目蔵。個性複製腕。触手の先端に自分の体を複製できる個性だよ」
「そうか…情報収集力が高そうだな」
「索敵なら私だって負けないよ!!」
「そうだね、けど葉隠には奇襲に回ってほしい。それとこの確保テープ、食える?」
「「えっ?」」
先程オールマイトから受け取った3人分の確保テープを配りながら聞くと何言ってんだコイツみたいな顔をされた。
「言葉が足りなかった。葉隠は透明人間だろ。個性を活かすにはほら…その、アレじゃん。確保テープ持ってたらバレるから口ん中隠しとけば見えないかなって」
「あー!なるほど!!おっけー!皆私ちょっと本気出すわ!!手袋もブーツも脱ぐわ」
「うん…(葉隠さん…透明人間としては正しい選択だけど女の子としてはやばいぞ倫理的に…)」
「女の子にこんなことさせたくないんだけど、ごめん」
「いいよ!気にしないで!」
ポンポンと手袋とブーツを脱ぐ。
「うん、ってこで半分野郎は私。尾白は核守りながら障子。尾白のサポートしながら葉隠は奇襲。それからこの核めちゃくちゃ軽いから障子に持ってかれそうになったら移動させちゃっていいよ」
「おっけーー!!!」
「んじゃやろうか。私は移動するからあとは宜しく」
「おう」
「任せてよ!」
核が設置された部屋から出て駆け足で3階に移動し、着いた瞬間にヒヤリとした空気が頬を撫でた。
「やべ!」
パキパキとビル全体を覆う氷。
「まじかよ、そう来るかーーー」
足元を凍らされ身動きが取れない、が壁に片手を触れて個性を発動すると一瞬にしてビルが黒い炎に包まれて覆っていた氷が溶ける。
2人のことも考えて彼等の周りだけ熱さは調整してあるので大丈夫だろうと考えているうちに下から階段が勢いよく凍りつき、襲いかかってくる氷に触れて溶かすと氷は私を避けるように周りを凍らせた。
「やっぱりお前ならそうくるよな」
「やだなぁ焦凍くん。当たり前だろ?」
私にしか分からない、無表情でありながら悪どく顔を歪ませる焦凍に私も顔を歪ませて笑い返した。
*****
轟side
時間は数分遡ってヴィラン側のIチームがビルに入った頃。オールマイトからの説明と建物の見取り図、確保テープと無線機を受け取る。
「さっきみたいな戦い方したらすぐに中止させるからね!」
と言ってオールマイトは駆け足で地下のモニタールームに戻って行った。
「お前、個性は」
同じチームメンバーである腕に触手を生やした大柄の男に問う。
「複製腕。触手の先端に身体を複製することができる。索敵が得意だ。お前は」
「半冷半熱。右が氷、左が炎だ」
「分かった」
「お前はヴィランチームの透明だった奴と尻尾の奴の個性知ってるか?」
「透明だった奴は恐らくそのままだろう。尻尾の方は尻尾が個性だ。武術が得意とか言ってたな」
「そうか」
触手の先端に複製された口が喋る。
2人共見た目に現れてる個性なら厄介なのは焔ただ1人。ならば俺がアイツの相手をするのが妥当だろう。コイツには残りの2人を相手してもらった方が良い。
「作戦がある」
「なんだ」
「紫の奴いただろ、アイツの個性は炎魔、炎系の個性で氷も使えるがそっちの方は使う気がない。俺も左は使う気がない。実質俺とアイツのタイマンになる。アイツのことだから俺を足止めしようと考えんだろうから初めに乗り込むのは俺1人でいい。暫くしてから別の場所から乗り込んでこい。隙は作るからその隙を突いて核を取れ」
「分かった」
グラウンドに設置された時計を見ると丁度5分が経過した。
「俺の個性で聞き取る。待て」
触手の先に耳や目、口を増やしてビルに近づける。
「5階北、中央辺りの広間に2人。その内1人は素足だな……4階の中央に1人。これは階段か?駆け降りてるぞ」
「やはり紫の奴が足止めとして来たようだ」
複製された2つの口が交互に喋る。右腕を上げてそっ…とビルの壁に触れる。気休めにしかならねえが…
「離れてろ。危ねえから」
パキ、パキ、個性を発動するとビルを一瞬にして氷が覆うが覆ったのと同時にビルの氷が黒い炎によって溶かされた。
「なっ…」
「気休めにもならなかったな。4階にいた奴今どこだ」
「3階だ。そこで立ち止まっている」
「分かった。俺はもう行く。お前は中の様子を見つつ潜入してこい」
「あ、ああ…」
戸惑うように目を見開く奴を横目に窓からビルに侵入して一目散に階段に向かって走る。1階2階の階段を走り抜けると3階の階段前で焔の紫色の髪が見えて考えるより先に個性を発動して氷を襲わせるが一瞬にして溶かされ、溶かされなかった氷は焔を避けるように辺りを凍らせた。
「やっぱりお前ならそうくるよな」
「やだなぁ焦凍くん。当たり前だろ?」
そう言って黒い炎を片手に纏わせながら笑ったアイツは、さながら魔王のようだった。
「障子は来てないんだな。別行動か」
「障子?」
「お前のチームメンバーだよ。ちゃんと把握しとけ」
「アイツ障子ってんのか」
「バカかよ」
最後の階段に足を掛けると同時に凍らせるが炎を纏わせた左腕で一撃粉砕され、その勢いで距離を詰められ顔を殴られそうになるが咄嗟にしゃがみ焔の足を凍らせ、腹に蹴りを入れるとそのまま脚を掴まれ、物凄い力で振り回され床に叩きつけられた。
「ぐっ」
「女だからって舐めんなよ」
凍らせた足は既に溶けていて、脚を振り上げ腹を狙って踵落とししようとした軸足を払い、転ばせたと思ったらそのままの勢いで回し蹴りが飛んできたのを掌で受け止めたついでに凍らせようとすると炎を纏った拳が飛んできて瞬時に顔を逸らして避けた。左足で焔の横腹に蹴りを入れて距離を取る。
「舐めてねえよ。お前が鍛えてんの知ってんだから」
「そう」
「まさかここまでとは思わなかったがな」
「私もだよ。久々に楽しくなって来た」
フッと笑う焔につられて俺も笑った。