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学級委員長2
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午前の授業を終えて昼。私と焦凍は食堂に来ていた。
「今日は弁当じゃないのか?」
「うん」
いつもなら2人分の席を取って先に座っているのだが今日は弁当を作っていない為、一緒に列に並ぶ。
「本当は作る予定だったんだけど…叔父さんが…」
昨日あった出来事を思い出す。
『雄英は食堂があるんだからわざわざ弁当作らなくたっていいんだよ?』
『いや、だって…』
『だって?』
『………』
『もしかして食費代の事心配してる?あまり無駄な費用は掛けないようにって?』
『!』
『お金の心配しなくたって大丈夫だよ。これでもバリバリ稼いでるんだから』
『そうかもしんないけどさぁ…』
『子供が心配すんなって!雄英のシェフはランチラッシュなんだろ?あの人の飯食べたことあるけど物凄く美味しいんだよ。食べなきゃ損だ。これからは弁当作らないでちゃんと食堂の飯食べなさい。いいね?』
『わ、かった…』
「ってことがあったのよ」
回想を終えて焦凍に説明すると「なるほどな」と頷いた。
「確かにここの蕎麦は美味い」
「蕎麦しか食ったことねえだろ」
「ああ」
「堂々とすんな」
「焔は何にすんだ?」
「ラーメン」
「ラーメン」
「ちなみに塩。麺は熱々のラーメンに限る」
「は?麺は蕎麦が一番だろ喧嘩売ってんのか?」
「売ってねえわ買ってやろうか?」
お互いに言葉の殴り合いをしながらトレーにラーメンと蕎麦を乗せて丁度空いていた2つ分の席を取る。斜め後ろには緑谷と飯田、麗日が食事を取っていた。
ズズ
ズ
ズズズ…
無言で麺をすする。あまりの美味しさに言葉が出ず、食べ終わるまでずっと無言だった私に合わせて何も喋らずに蕎麦をすする。
「うま……」
「蕎麦がな」
「ラーメンがな」
ラーメンのスープを全て飲み干した頃には焦凍の食事が終わっていた。両手を合わせて「ご馳走様でした」と小さく呟きトレーを持って返却口に向かおうと席を立った瞬間、ウウーーーーー!!!と校内中に警報が鳴り響いた。
「!?」
「警報?」
突然の音に驚いて咄嗟にイスに座る。大きな音を聞くと瞬時にしゃがみこむ癖、治したいな……
《セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難してください》
「あの、セキュリティ3ってなんですか」
放送を聞いて焦凍が近くにいた先輩に尋ねる。
「校舎内に誰が侵入してきたのよ!今までにこんなこと初めてよ!アナタ達も早く避難を!!」
そう言って先輩は走り出して行ってしまった。カタンと立ち上がった焦凍につられて立ち上がる。
「だそうだ。俺達も一応避難するか」
「うん…けど皆パニクって大混雑してる。あの中に混ざるのはちょっと嫌だな」
「…あれは逆に入らない方が安全だろう。下手したら怪我じゃ済まされねえ。校舎内に侵入したって言ってたし…様子見してみるか?」
「そうしよ」
私達2人だけしかいない食堂の窓から外を確認すると崩壊した入り口から大勢のマスコミが校内に侵入し、先生達が対応に追われているのが見えた。
「マスコミ…?」
「可笑しくねえか?ただのマスコミに頑丈なセキュリティが施されている雄英に侵入なんて出来ねえだろ。それにあの崩れ方…不自然だ」
「法律上資格がない人間の個性の使用は禁じられている。それをマスコミの奴等がやるとは…………やりそうだな」
「連中はオールマイトが目的だ。それしか眼中にねえしあんな大勢だ。こっそり目を盗んで個性を使うことだって出来る。だとしても違和感が強い」
「うん」
「なんだか嫌な予感がする」
「同感」
押し寄せるマスコミ達を睨みつける焦凍を横目に見る。頭の奥でチリチリと何かが音を立てた。
「取り敢えず指示が出るまで避難しようか」
「ああ。ここで突っ立っててもしかたねえ。行こう」
皆が避難して行った方向へ向かって行く。暫くすると複数のパトカーが到着しマスコミが撤退していくのを廊下の窓から見ていた。
途中響香と常闇の2人と合流すると飯田が何やら大活躍したようでそのおかげで皆が冷静になったのだと聞く。その直後校内放送が入り教室に向かうよう指示が出て4人で教室へ向かった。
お騒がせな事態は少しずつ幕を閉じた。
教室に戻ってから午後の授業は委員決め。教壇に立つ緑谷が吃りながら指揮をとる。
「ホラ委員長始めて」
「でっでは他の委員決めを執り行って参ります!………けどその前にいいですか!委員長はやっぱり飯田くんが良いと…思います!あんな風にかっこよく人をまとめられるんだ。僕は…飯田くんがやるのが正しいと思うよ」
「あ!良いんじゃね!!飯田、食堂で超活躍してたし!!緑谷でも別に良いけどさ!」
「非常口の標識みてえになってたよな」
切島と上鳴を中心に多くの生徒らが賛同した。
実際に見てないからどうだったのか知らないので知ってる人同士で会話されちゃうとどうもついていけない。
「委員長の指名ならば仕方あるまい!!」
「任せたぜ非常口!!」
「非常口飯田!!しっかりやれよー!!」
委員長は飯田に決まった。緑谷が席に着き、代わりに飯田が教壇に立つと委員決めが再開される。
正直面倒臭いヤツじゃなければなんだってよかったので適当に選んだら爆豪と同じ委員になってしまい、物凄く嫌で「悪いんだけど爆豪と一緒は嫌だから誰が代わってくんない?」と言ったら「俺だっててめェとなんて嫌だわ死ね!!!」と倍になって返ってきた。
「お前がな」
「ァ″ア″!!?クソ能面表出ろや!!!」
「なに?女と連れション?やだわぁ……きも…」
「ざっけんなちげえわクソが死ね能面男女レイプ目殺すぞシネ!!!!」
「大切なことなので二回言いましたってテロップ流した方がいい?」
「流さんでいいわアホが!!!」
律儀に返してくる爆豪が面白くてからかってると爆豪の後ろの席に居る緑谷が恐ろしいものを見るかのように私達を交互に見る。
「凄い…かっちゃんとあんなに渡り合える人がいたなんて………!!」
「何見てんだクソデク!!!!」
「えっ?!とばっちり!?」
「あ″あ″!?」
「何でもないです!!!」
標的が私から緑谷に移ってギャーギャー騒いでいるのを眺める。
何だかんだ嫌なヤツだけど、あいつが丸くなる日が来たら…仲良くなれる気がするんだよなぁ……何となくだけど。好きになれるか分からないけど。
ちなみに爆豪と同じ委員になりたい人は現れずそのまま決まってしまった。