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「今日は久々のヒーロー基礎学だねー!クロロン!!」
「久々も何もあれからまだ2日しか経ってないよ」
「まぁそう言うなってクロロン!な!」
「そうだぜクロロン!」
「切島、上鳴…」
「「「クロロン〜!クロロン〜!」」」
「お前ら仲良しか」
芦戸、切島、上鳴の3人が楽しそうに声を揃える。
現在午前中の授業と昼飯を終えて教室、午後から始まるヒーロー基礎学の為に待機中だ。しかしまだ昼休みが残っているので何故かこうして3人が集まった。と言っても切島と上鳴の2人は前の席の奴らだから話しかけられることは何かと多い。
「次のヒーロー基礎学はどんなことをやんだろうな!」
「ヒーローになるため!どんなこったろうと全力でやることには変わらねえぜ!」
「もしかしたら前と同じような内容かもしれないよ!」
「一度対人戦を経験してるからそれはないな」
「「「なんで?」」」
3人が同時に首を傾げた。
「ヒーローは対人戦することだけが仕事じゃないからだよ」
ヒーローの仕事はただヴィランをぶっ飛ばせばいいって言うものではない。ヴィランから守るのは勿論のこと、災害や人命救助、街の安全、そして私達のような表で生活している人間が一生知ることのない、裏で国や人々を守ろうと命を懸けているヒーローもいるように…ヒーローの仕事は様々だ。
「そっか!そうだよな…ヒーローは奉仕活動!」
「もしかしたら次の授業はレスキューだったりしてなあ!!」
「まっさか〜〜〜」
「そろそろ時間だよ」
時計を指差す。
「あっいけっけね」
「サンキュークロロン」
「ありがとー!」
3人が席に戻ってから数分後、チャイムと同時に相澤先生が教室に入ってきた。
「今日のヒーロー基礎学だが…俺とオールマイト、そしてもう1人の3人体制で見ることになった」
「ハーイ!なにするんですか!?」
「災害水難なんでもござれ。人命救助(レスキュー)だ!!」
「「「レスキューだ!!?」」」
「なんだ」
「「「なんでもありません」」」
RESCUEと書かれたプレートを見て3人が立ち上るが相澤先生に一睨みされてサッと座る。
「今回コスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を限定するコスチュームもあるだろうからな。訓練は少し離れた場所にあるからバスに乗っていく。以上準備開始」
相澤先生がリモコンで操作し壁から棚が出てくる。自分のケースを引っ張り出すと途中で芦戸と合流して更衣室へ向かった。
更衣室から出ると案の定、焦凍の姿があって芦戸と3人でバスが待機している広場へ向かうと飯田が何かを指示している。
「バスの席順でスムーズにいくよう番号順に二列で並ぼう」
そう言って並ぶ羽目になったのだがいざバスに乗ると完全に自由席で適当に2人席の廊下側に座っていると焦凍が一直線にやってきた。
「いいか」
「もち」
一度立って譲ると窓側に座ったのを見てもう一度廊下側に座る。
「着いたら起こしてくれ」
「寝不足?」
「ん…」
「昨日長電話したのが悪かった?」
「いや、それとこれとは全然関係ない」
「お父さん?」
「ああ」
「分かった。おやすみ」
「ん」
私の肩にもたれかかるように眠り始めた焦凍の頭を撫でる。サラサラしていて気持ちがいい。
焦凍から目を逸らして前を見ると何時の間にか前の席には爆豪と響香の2人が座っていて尚且つ爆豪以外の周りの生徒らが皆私のことを見ていた。
「え…何みんな…怖いよ」
「焔さぁ…轟と付き合ってんの?」
「……エ?」
「だって今のこれ、完全にカレカノじゃん」
「付き合ってないけど…」
「「「「嘘だー!!」」」」
「うっせェなクソモブ共!!!」
「お前が一番うるさいよ」
「黙れ能面!!」
付き合ってる…?付き合ってるように見えるものなのか。まだコイツと知り合ってから1年と半年と数週間。ここまで仲良くなるとは私も思ってなかったけど…男女でこういうことをすると恋人だと勘違いされしまうものなのね……別に悪い気はしない。
____悪い気はしない?
なんで、そう、思ったんだろ……
悪い気はしないと思えたのも、胸がきゅんってしたのも今までに焦凍だけ。なんでだろう。分からない。
「焔?」
「っ、何?響香」
「何回か話しかけても返ってこないからどうしたのかなって」
「あ、ごめん…考え事してた」
「悩み事があるなら幾らでも聞くからウチで良ければ相談してよ」
「ありがとう」
響香は口角を上げて笑むと前を向いた。考え事をしている間にバスは発進していた。
「私思った事を何でも言っちゃうの。緑谷ちゃん」
「あ!?ハイ!?蛙吹さん!!」
「梅雨ちゃんと呼んで。あなたの個性オールマイトに似てる」
「!!!そそそそそうかな!?いやでも僕はそのえー」
「待てよ梅雨ちゃん。オールマイトはケガしねえぞ。似て非なるアレだぜ。しかし増強型のシンプルな個性はいいな!派手で出来る事が多い!」
梅雨ちゃん、緑谷や切島達の会話聞きながら私は膝の上に乗る焦凍の手を使って遊んでいた。触ったり撫でたり手繋いだり、ちょっとばかり好奇心で恋人繋ぎしてみたり。
「落ち着く…」
誰にも聞こえないような小さな声で呟く。肩から伝わる熱が、握られた手から伝わる体温が気持ち良くて自分の方から焦凍に擦り寄った。もっと熱を感じたかった。
「俺の硬化は対人じゃ強えけどいかせん地味なんだよなー」
「僕はすごくかっこいいと思うよ!プロにも十分通用する個性だよ」
「プロなー!しかしやっぱヒーローも人気商売みてえなとこあるぜ!?」
「僕のネビルレーザーは派手さも強さもプロ並み」
「でもお腹壊しちゃうのはヨクナイね!」
「派手で強えっつったらやっぱ轟と爆豪とクロロンだな」
窓の外を眺めていたら名前を呼ばれて切島達を見る。
「ケッ」
「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なさそ」
「んだとコラ出すわ!!」
「ホラ」
「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されるってすげぇよ」
「クハッ」
「てめぇのボキャブラリーは何だコラ殺すぞ!!能面笑ってんじゃねえ!!」
上鳴の言葉に思わず吹き出した。いやだってクソを下水で煮込んだって笑うなって方が無理でしょ!
「(かっちゃんがイジられてる…!!信じられない光景ださすが雄英…!)」
「低俗な会話ですこと!」
「あっはっはっ!でもこういうの好きだ私」
「爆豪くん君本当口悪いな」
「もう着くぞ。いい加減しとけよ…」
「「「「ハイ!!」」」」
皆一斉に返事をする。バスが施設に着き、手を離して太ももを叩くと眠たそうに起きた。
「着いたか…」
ゾロゾロとバスから降りていく様子を見て立ち上がる。後ろを振り返ると立ち上がった焦凍が手をグーパーと握ったり広げたりしていた。
「どうした?」
「お前…あんな可愛いことすんなよ」
「は?」
何を言われたのか理解できなくて立ち止まる私を追い抜き、先にバスを降りる。
…………まさか、起きてた?
今になって恥ずかしくなってきた。
「おい黒冷なにをしてる。体調でも悪いのか」
「あ、いえ、すこるぶ良いです。今降ります」
バスを降りると相澤先生が中を確認して降りてきた。さっさと施設内に入っていく背中姿を追って施設内に入る。
可愛いなんて初めて言われた。
焦凍に触れてた肩と手が熱い。