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USJ 3
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黒冷side
「ほわぁッ!?」
「なっ!黒冷!!?」
黒いモヤに飲み込まれた先は中央広場の上空だった。相澤先生が私の声に気づいて見上げ、驚いたように声を荒げる。先生の背中を狙って銃口を向けるヴィランを見て、炎を噴射しヴィランに距離を詰めると勢いをつけたまま回し蹴りで気絶させた。
「お前なんでここに!!」
「ワープ野郎に飛ばされて来たんですッよ!!」
襲いかかってくるヴィランを殴って蹴って飛ばして炎で燃やして、時に先生を狙うヴィランをノす。先生も武器を使って捕縛して引き寄せ殴って蹴って気絶させる。
先生のスタイルに合わせてサポートしながら立ち回り、背中を預ける。
「うっわセンセーめっちゃやりやすい」
「言ってる場合か!隙が出来たら13号の元へ行け!」
「そうは言ってもこの人数じゃ…中々厳しいですよ」
気絶させても減らないヴィラン。
頭一つ二つ飛び抜けた実力のあるヴィランはパッと見て3人程。ワープ野郎と複数手を全身につけた気色の悪いヴィランとその隣に立つ脳ミソが剥き出しになった大男。
気色悪い奴は首をポリポリと掻いて笑った。
「へぇ…強いな…黒冷焔」
「!」
「てめぇ…何故うちの生徒を知っている」
「知ってるよ…だって俺らそいつが欲しいんだもん」
「え」
私が、欲しい?意味が分からない。
突然のことに驚いて身体が止まる。その隙を突かれて襲いかかって来たヴィランを相澤先生が横から飛び膝蹴りをかまして気絶させた。
「渡すかよ。雄英(うち)の大切な生徒だ」
「へぇ〜〜!かっこいいなぁ…」
「クソ共が黒冷を欲しがる理由は大体想像がつく」
「え?」
「なぁんだ…知ってたの…」
「ったりめぇだ。伊達にヒーローやってねえよ!」
2人の会話に置いてけぼりにされる。何一つ想像がつかない。全く分からない。
2人の会話を聞いてた私は止めていた足を動かした。ナイフを持って襲ってきたヴィランを一直線上に避けて懐に入り、右腕に炎を纏って鳩尾を思い切り殴り飛ばす。
「グハァッ!」
汚い声をあげて飛んでったヴィランはそのまま地に伏せた。
生徒用に掻き集めたチンピラのような戦闘力。質ではなく数でノそうとしたのか…焦凍は…皆は大丈夫だろうか。
「黒冷!!!」
「っ!」
呼ばれ振り向くと目の前には気色悪い奴がニヤリと笑って立っていた。
「(やばい)」
顔に触れようとする手首を掴み、左足で相手の右腕ごと横腹を蹴り上げて距離を取る。蹴った際に奴の首から下の右半身を黒い氷で凍らせた。
「っはは、氷!氷かよ!!お前炎だけじゃなかったのかぁ〜はは!こりゃすげえや!!!…………先生に報告しなきゃ」
最後のセリフは小さすぎて聞き取れなかったが興奮しているのは分かった。
氷に男の手が触れると氷が崩れる。
「オラァ!!」
男を観察していたら横から別の敵が襲いかかってきて咄嗟にアッパーを決めた。次々現れるヴィランと交戦していると視界の隅に緑谷と梅雨ちゃん、峰田が映る。
そして不気味な男は私から先生に標的を変えていた。よく見ると不気味な男に掴まれた先生の肘が崩れている。
「は?」
何やってんの?何やってんの??
ドクドクと脈を打つ心臓が痛い。チラつく地獄絵図が私の足を動かす。
「センセーから離れろ!!!」
炎を逆噴射して猛スピードで距離を詰め、奴の頭を狙って膝蹴りしようとした時、小さく「脳無」と聞こえた。
ドォンッ!
重たい一撃が奴の頭に……
「え…?」
不気味な奴と私の間に脳ミソ剥き出しの大男が居た。そして私の膝は奴の腹に入っていた。全く見えなかった。何が起きたのか分からなかった。
「脳無、そいつは絶対に殺すな」
不気味な男が言う。脳無と呼ばれた大男は私の足を持って力を入れボキンッと音を立てた。
「ァア″ア″ア″ッッ!!!」
一瞬にして折られた足を持ったまま振り上げられると
ドゴォォォン!!
加減無しに地面に叩きつけられて息が止まる。地面は地割れを起こした。
「黒冷!!!」
相澤先生の声が聞こえる。心配してくれてるのかな。そりゃそうか。先生と生徒だもん。心配しない訳ないか。
未だ掴まれている足から通じて脳無の全身を凍らせる。
「っぐぅ、ッ」
痛みに耐え、脳無から足を取り返し、距離を取っている隙に脳無は自力で氷を割って出てきた。
「嘘だろ…バケモノかよ…クソ!」
ボロボロと崩れ落ちる自身の身体を気にせず、ブクブクと身体が膨れ上がると崩れた部位が再生しドスン、ドスンと向かってくる脳無に相澤先生が突っ込んできた。
捕縛武器で脳無を絡めとり動きを封じるが腕力で引き千切られ、反応出来ない速度で先生の腹を殴りつけた。
「ガハッ!」
ピチャ
口から飛び出る血、倒れる姿が、脳無が、周りが、全てスローに見えた。
「せ……センセェエ!!!」
個性で脳無との距離を一瞬で詰めて顔面を力一杯殴りつける。脳無が衝撃に耐えきれず少しだけ、ほんの数センチ後ろに下がった。
ガシッ
「!」
腕を掴まれるとそのままボキンッと小枝を折るようにへし折られ、相澤先生に向かって叩きつけられる。
「だはッ!」
「グアッ!!」
バキ、と私だろうか、先生だろうか…骨が折れる音が聞こえた。口から流れる血が先生を服を汚す。