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USJ 4
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「脳無。そいつの足もう一本折っとけ。動けないようにな」
脳無によって身体を持ち上げられ、生きてる足をボキンと折られると地面に投げ捨てられる。
不気味な男がニヤニヤと笑いながら「残念だったなぁ…センセーを救えなくて」と私の足をグリグリと踏みつける。
薄れようとする意識を必死に掻き集めて先生を見ると男によって崩された腕を脳無に折られていた。
「〜〜〜っ!!!!!」
「個性を消せる。素敵だけどなんてことはないね。圧倒的な力の前ではつまりただの無個性だもの」
まだ生きている先生の腕がグシャと折られる。
「ぐぁ…!!」
「せ、せ…」
「おっとやめとけよ。抵抗したらお前のセンセー殺すぞ」
「ッ!」
グリッとさらに強く頭を踏みつけられた。脳無が先生の頭を持って持ち上げる。その時に目が合ったがすぐに脳無が地面にのめり込むほどの威力で先生の頭を地面に叩きつけた。
「ぁ…」
ダメだ、やめてよ、先生の個性は目なんだよ、それはダメ、やめて。先生が、失明したら、
「死柄木弔」
不気味な男の名前は死柄木弔というらしい。ワープ野郎が傍にやってきた。
まさか皆…やられてしまったんじゃ……焦凍は…、
心が不安に覆い尽くされる。
「黒霧。13号はやったのか」
「行動不能には出来たものの散らし損ねた生徒がおりまして……一名逃げられました」
「…………は?」
黒霧と呼ばれたワープ野郎の報告に苛立ちを見せ始めた死柄木。ガリガリと片手で掻いていた首を両手で掻き始める。
「はーーー…はあーーーー黒霧おまえ…おまえがワープゲートじゃなかったら粉々にしてたよ…」
首を掻くのと合わせてゴッゴッと頭を何度も踏みつけられ、終いには腹を思い切り蹴り飛ばされた。
「ゴハッ」
先ほどと比にならない量の血に噎せて咳き込む。
「さすがに何十人ものプロ相手じゃ敵わない。ゲームオーバーだ。あーあ…今回はゲームオーバーだ。帰ろっか」
は?帰る?
「欲しいやつも手に入ったし。けどもその前に平和の象徴としての矜持を少しでも…へし折って帰ろう!」
強く踏みつかれると死柄木はこの場から消え、咄嗟に目で探すと奴等は緑谷達の目の前に移動していた。奴の手が梅雨ちゃんに触れたが崩れなかった。
「本っ当、かっこいいぜ。イレイザーヘッド」
先生が柄木の個性を消していたみたいだ。けれどすぐ様脳無に頭を叩きつけられてそのまま気を失った。緑谷が死柄木を殴ろうと腕を伸ばした瞬間に先生の元から脳無が消えた。再び緑谷を見ると奴は緑谷の前に立ちはだかっていた。
あれじゃ私の二の舞だ。逃げて、緑谷…!そう叫びたいのに声は出てくれなかった。
バァン!
「「「「!!」」」」
USJの入り口方面から轟音が鳴り響いた。どうなっているのか分からないがとても安心する声がした。
「もう大丈夫。私が来た!」
オールマイトが、来てくれたんだ。安心するのも束の間、あるはずのない風を全身で浴びた。じんわりとした熱が身体を温め、驚いて目を見開くと視界いっぱいにオールマイトの顔があった。笑っていないオールマイトの顔だ。
「焔ちゃん…遅くなってすまない…腕と両脚を…!」
「だ、じょ…だ、から、せ、せ…あぃ、ざ、せ…せ」
「っ!喉まで!!」
直接喉を攻撃された記憶はないが痛みが酷くて喋りにくい。さっき先生と叩きつけ合わされた時に聞こえた音は私の方だったのかもしれない。
再びヒュンッと風を全身で受け止め、止むとオールマイトの腕の中には相澤先生に緑谷、峰田と梅雨ちゃんがいた。そっと地面に寝かされる。
「皆入口へ。相澤くんと黒冷少女を頼んだ。相澤くんは意識がない早く!!」
「え!?え!?あれ!?速え…!!」
「焔ちゃん!!」
顔を歪ませた梅雨ちゃんが私の傍に膝をついた。
「オールマイトだめです!!あの脳ミソ敵!!ワン…っ僕の腕が折れないくらいの力だけどビクともしなかった!!きっとあいつ…」
「緑谷少年。大丈夫!」
ピースしてニカッと笑った瞬間にオールマイトは敵に向かって猛スピードで消えていった。
「緑谷ちゃん!峰田ちゃん!見てないで早く行きましょう!!」
「え!うん!!」
「お、おう!!けどこの人数だと1人運ぶので精一杯だぞ!」
そう言った峰田のマントを引っ張る。
「わ、たしは、い…から、せん、せー、さ、きに」
「黒冷…!」
「黒冷さん!!喉が…!」
「酷い…!酷すぎるわ…!!」
「い、か…ら、はや…せ、せーを…は、やく」
「わ、分かった!相澤先生置いてきたら急いで戻ってくるから!それまで耐えろよ黒冷!!」
緑谷が相澤先生の上半身をおぶって峰田が両足を持って急ぎ足で入口へ向かっていった。4人の後ろ姿を見届けてからオールマイト達の様子を伺う。
脳無にバックドロップを決めてズドン!!!!と施設中に音を轟かせた。衝撃が地震のようになって伝わってくる。土埃が晴れるとバックドロップの体制のまま黒霧のワープで脳無の上半身はアーチの中に移動し脳無の指がオールマイトの左横腹に刺さっていた。
「あ、そこは…」
そこはダメだ。オールマイトの唯一の弱点なんだから。どうしよう、どうしたから彼を救えるか、何をすれば助けになれるか!今出来ることを、考えろ、考えろ!!
「オールマイトォ!!!!」
緑谷の叫び声。相澤先生を梅雨ちゃん達に任せて戻ってきたんだ。オールマイトに向かって飛び出してった緑谷と偶然タイミングが重なり全身で氷を発動する。仕向けた先は脳無。
「どっけ邪魔だ!!デク!!」
ボォォン!!
突然横から飛び出してきた爆豪が勢いつけて黒霧を爆破すると首根っこ抑えて地面に押し倒し上に乗っかった。パキパキと音を立てて脳無だけを凍らせる白と黒の氷。
「だあー!!」
切島が死柄木に向かって攻撃を繰り出すも余裕な素振りで躱された。
「くっそ!!!いいとこねー!」
「スカしてんじゃねえぞモヤモブが!!
「平和の象徴はてめェら如きに殺れねえよ」
「かっちゃん…!皆…!!」
「……黒い氷…焔?………!!!!」
ヴィランの近くにいた焦凍が私の氷に気づき、それを追って私を見つけると幽霊を見たかのように目を見開いた。
そんな表情初めて見たよ。
ちょっとだけ面白くて鼻で笑った。
「能め、…おま、なんで、てめェが…!!」
「っだよそのケガは!クロロン大丈夫なのか!!?」
「おー…」
ズキズキと走る激痛に耐えて必死に意識を保ちながらヒラヒラと手を振る。
全然大丈夫じゃねぇんだよなぁコレが。
皆に見られないように苦笑いした。