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USJ 5
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「氷結……!!(焔ちゃんと轟少年か!!私が凍らないギリギリの範囲をうまく調整して…!!全く無理を…!おかげで!手が緩んだ!!!)」
オールマイトは力づくで脳無の腕を引き剥がして4人の前へ移動した。
出来ることなら私もそっちに行きたい。けど行けないもどかしさ。せめて片方足が生きていれば……
「………出入口を押さえられた………こりゃあ…ピンチだなあ…」
「このウッカリヤローめ!やっぱり思った通りだ!モヤ状態のワープゲートになれる箇所は限られてる!そのモヤゲートで実態部分を覆ってたんだろ!?そうだろ!?全身モヤの物理無効人生なら《危ない》っつー発想は出ねぇもんなあ!!!」
「ぬぅっ…」
「っと動くな!!《怪しい動きをした》と俺が判断したらすぐに爆破する!!」
あいつ本当にヒーロー志望かよ…言動は気をつけた方がいいぞ爆豪……
「攻略された上に全員ほぼ無傷……おまけにお目当ての一つは向こう側。すごいなぁ最近の子どもは…恥ずかしくなってくるぜ敵連合…!」
「てめェらが黒冷を狙う理由を教えろ」
「「「「!」」」」
死柄木を睨みつける焦凍が言った。
「そんなの一つしかないだろー?こっちの仲間になってほしいからさ!脳無。爆発小僧をやっつけろ。出入口の奪還だ」
死柄木に命令された脳無は上半身を戻す。バキバキに凍らされた右半身は無理矢理動かしたせいでボロボロと崩れ落ちる。
痛いはずなのに何も言わず平然と動く脳無に危機感を感じて身体にまだ残っている氷を炎に変換して燃やし尽くそうを試みるも炎は広がる所か鎮火してしまった。
「!?」
私の炎は対象を定めて使用すると全て燃えて灰になるまで消えないはずなのに、何故鎮火したんだ。
「無駄だよ黒冷焔」
ニヤニヤと楽しそうに笑う死柄木が憎い。ヴィランが憎い。崩れ落ちた部位がブクブクと膨れ上がると
「身体が割れてるのに…動いてる…!?」
「皆下がれ!!なんだ!?ショック吸収の個性じゃないのか!?」
「別にそれだけとは言ってないだろう。これは超再生だな」
脳無の身体が再生した。
「「「「!?」」」」
「脳無はおまえの100%にも耐えられるように改造された超高性能サンドバック人間さ」
完全に再生した脳無が爆豪に向かって猛スピードで走り出す。
ドォン!!!と大きな音と共に暴風が巻き起こって身体が後ろへ軽く吹き飛ばされる。音が聞こえただけで何が起こったのか分からなかった。何も見えなかった。目が追えなかった。
「かっちゃん!!!かっちゃん!!?避っ避けたの!?すごい…!」
「違えよ黙れカス」
私と同じく爆風に飛ばされた4人は何時の間にか傍まで来ていた。
「焔…そのケガ…!」
痛々しそうに顔を歪ませた焦凍が膝をついた。顔を隠すフードを取ると口から流れる血を見て更に眉間の皺を深くした。大丈夫だと伝えたくて近くにあった焦凍の手を撫でる。
「クロロンそのケガは一体誰に…」
「のーむ」
「のーむ?」
脳無を指差すとその先を追って4人が脳無を見た。
「! 能面アレとやったんか!?」
コクコクと頷くと爆豪は腑に落ちたように冷静な目で見つめ返してきた。
「僕何もできなかったんだ。黒冷さんは相澤先生を助け出そうとして脳無と戦って……それをずっと僕は見てたのに、怖くて何もできなかった。黒冷さんが傷ついていくのを…見てることしかできなかったんだ…!!」
「緑谷…」
「だ、じょぶ」
パシパシと緑谷の足を叩く。あわわ!と慌てる緑谷に「喉!喉やられてるんだから無理して喋らないで!!」と言われた。
砂埃が晴れると脳無の直線上には爆豪を庇って殴られたオールマイトの姿があった。
「………加減を知らんのか…」
ドバッと血を吐くオールマイト。
「仲間を救ける為さ。しかたないだろ?さっきのだってホラそこの…あーーーー…地味なやつ。あいつが俺に思いっ切り殴りかかろうとしたぜ?他が為に振るう暴力は美談になるんだ。そうだろ?ヒーロー?
俺はなオールマイト!怒ってるんだ!同じ暴力がヒーローと敵でカテゴライズされ善し悪しが決まるこの世の中に!!何が平和の象徴!!
所詮抑圧の為の暴力装置だおまえは!暴力は暴力しか生まないのだとおまえを殺すことで世に知らしめるのさ!」
なんてめちゃくちゃな。今まで見てきたヴィランの中でも最高に最低な、いや…子どもだ。
「めちゃくちゃだな。そういう思想犯の眼は静かに燃ゆるもの。自分が楽しみたいだけだろ嘘吐きめ」
「バレるの早…」
両手を広げて語った死柄木はニタ…と笑った。
「3対5だ」
「6だよ」
「モヤの弱点はかっちゃんが暴いた…!!」
「とんでもねえ奴らだが俺らでオールマイトのサポートすりゃ…撃退出来る!!」
「ダメだ!!!逃げなさい」
構える4人の前に腕を伸ばしてストップをかける。
「………さっきのは俺らがサポート入らなきゃやばかったでしょう」
「オールマイト血……それな時間だってないはずじゃ…ぁ…」
時間?待てよオイ緑谷お前……知ってるのか?オールマイトの秘密を、…知ってるのか?まさか、まさかまさか……!!お前の個性がオールマイトに似てるのは……つまり、そういうことなのか…?
「それはそれだ轟少年!!ありがとな!!しかし大丈夫!!プロの本気を見ていなさい!! (入口の生徒らか轟少年達に焔ちゃんをここから連れ出してほしいのは山々だが敵との距離が近すぎるせいでそれができない!)」
「脳無、黒霧。やれ。俺は子どもをあしらう」
「(確かに時間はもう1分とない…!力の衰えは思ったよりも早い!しかしやらねばなるまい!!何故なら私は)」
「クリアして帰ろう!」
「おい来てるやるっきゃねえって!!」
こっちに向かって駆け出した死柄木に戦闘態勢を取る4人。腕からパキパキと個性を発動して凍らせる準備を行う。
「(平和の象徴なのだから!!)」
ゾワッ
顔を上げたオールマイトに呑まれ、全身の鳥肌が立つ。脳無に向かって駆け出したオールマイトと脳無の拳が合わさった。
「ショック吸収って…さっき自分で言ってたじゃんか」
「そうだな!」
重量のある派手な音を響かせて脳無と正面からの殴り合い。それによって巻き起こる信じられないくらい強い風に押されて後ろへズルズルと下がっていく。
「危ねえ」
側にいた焦凍が再び膝を付くと優しく上半身を起こして座らせ、上半身を支えてくれた。
「あっ、とー」
「喋るな」
「ん」
左腕で私を支え、右腕は常に何が起きてもいいように戦闘態勢を取っている。私も動けなくとも個性の発動は出来るのでいつでも立ち向かえるように準備だけはしておく。
「無効ではなく吸収ならば!!限度があるんじゃないか!?私対策!?私の100%を耐えるなら!!さらに上からねじふせよう!!」
血を吐きながらも更に加速する殴り合い。
「ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの!ヴィランよ、こんな言葉を知ってるか!!?
Puls Ultra!!」
最後の一発に全身全霊の力を込め、空に向かって殴り飛ばすと脳無はUSJの天井を突き抜けてぶっ飛んでしまった。
「……コミックかよ。ショック吸収をないことにしちまった…究極の脳筋だぜ。デタラメな力だ…再生もまにあわねえ程のラッシュってことか…」
「(これがトップ…)」
「(プロの世界か…!)」
あんな凄いのは久々に見た。