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雄英体育祭3
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《B組に続いて普通科C・D・E組…!!サポート科F・G・H組もきたぞー!そして経営科…》
見える範囲から会場を見下ろす。
「あ、あいつ普通科の…」
普通科C組の入口から出てきた先頭を歩く紫色の髪が目に入った。会場スクリーン前に設置されたステージに集まるA組を見ると女子達が大声で「焔ちゃーーー!!」と叫びながら手を振っていた。周りの男子達も見上げたり、女子に乗って手を振ったりと様々だ。手を振り返すと麗日がニッと笑ってステージの方を向いた。
ステージにはミッドナイトが仁王立ちし、手には鞭が握られている。
《選手宣誓!!》
ピシャンと鞭を振るう。ミッドナイトに取り付けられたマイクから会場に声が響く。
《静かにしなさい!!》
峰田が何か言ったな?
《選手代表!!1-A 爆豪勝己!!》
「えっ……え〜〜〜〜??え?え???」
1年雄英体育祭の代表はヒーロー科の入試で1位だった人が行う。私は1位の人と実技は同点、筆記に1点差で負けて2位だった。その…1位が、爆豪…?
「うっそぉ…爆豪に負けたのかよ…」
地味にショックを受けた。
ズボンのポケットに両手を突っ込んだ爆豪がステージに立つ。
《せんせー。俺が一位になる》
爆豪勝己は期待を裏切らない男だ。絶対にやると思った。
全生徒からブーイングを受けながらもステージから降りると首を切るような動作をする姿を見て、また喧嘩売ってヘイト集めてんだなと勝手に推測した。
「あ〜〜……超楽しそう…羨ましい…」
あの輪の中に入りたい。でもそれは出来ないのだ。諦めろ私。
スクリーンが輝いて目が爆豪から移る。
《さーてそれじゃあ早速第一種目行きましょう!いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が涙を飲むわ!!さて運命の第一種目!!今年は……》
ワクワクしながら待つ。
《コレ!!!》
スクリーンには障害物競走が映し出された。
《計11クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周約4km!我が校は自由さが売り文句!ウフフ…コースさえ守れば 何をしたって 構わないわ!》
「コレ絶対楽しい奴じゃん」
レースの入口が解放され、全生徒がゾロゾロと移動を始める。大分狭い入口だ…これは初っ端から仕掛けてくるね。頑張って避けろよ1A(みんな)
《さあさあ位置につきまくりなさい…》
入口門に設置された信号ライトの3つ目が点いた。
《スターーーーーート!!》
生徒達が一斉に走り出し、狭い門を通って行く。スクリーンを観ると既に焦凍が地面を凍らせ、後ろの生徒達を足止めしながら一抜けしていた。
私が焦凍でも同じことをしたと思う。
《さーて実況してくぜ!解説アーユーレディ!?ミイラマン!!》
《無理矢理呼んだんだろうが》
放送席から相澤先生の声が聞こえた。
レースの方は焦凍に引き続き、1Aほぼ全員が氷結を躱して障害物第一関門、ロボ・インフェルノに立ち向かっていた。
「あれ入試ん時のやつだ…」
どんな建物よりも巨大だった鈍。あの時は一撃で燃やしたんだったかな?
インフェルノは一台だけではなく、無数に設置され生徒達の足が止まる。焦凍は地面から空へ掬い上げるように右手を振るうとインフェルノの足元から氷が出現し、頭に掛けて凍らせた。
インフェルノの足元の隙間から駆け抜けていく焦凍。その後ろに切島ともう1人の男子生徒が続く。
不安定な体勢で凍らせたインフェルノはゆっくりと頭から地面に倒れ、会場にもその振動が伝わってきた。
《1-A 轟!!攻略と妨害を一度に!!こいつぁシヴィー!!!すげえな!!一抜けだ!!アレだな、もうなんか…ズリィな!!》
モニタリングしていると1Aはどのクラスよりも立ち止まっている時間が短い。一度敵と遭遇したおかげだろうか。
《第一種目は障害物競走!!この特設スタジアムの外周を一周してゴールだぜ!!》
《おい》
《ルールはコースアウトさえしなけりゃ何でもアリの残虐なチキンレースだ!!各所に設置されたカメラロボが興奮をお届けするぜ!》
《俺いらないだろ》
倒れされたインフェルノの一部がベゴベゴと音を立てている。なんだろう…と見ていればインフェルノの装甲を突き抜けて硬化した切島が飛び出した。
《死ぬかぁー!!》
えっ
《1-A切島潰されてたー!!》
《轟のヤロウ!ワザと倒れるタイミングで!俺じゃなかったら死んでたぞ!!》
下敷きになってたのかあいつ。
《A組のヤロウは本当に嫌な奴ばかりだな…!俺じゃなきゃ死んでたぞ!!》
切島同様に潰されていた下敷きになっていた生徒が装甲を突き破って出てきた。
《B組鉄哲も潰されてたー!!ウケる!!》
《個性ダダ被りかよ!!ただでさえ地味なのに!!》
どんまい切島。
B組の鉄哲より早く走り出した切島。カメラが変わって爆豪が映る。
ボンボンとリズムよく左右交互に爆破させてインフェルノの頭上に回って躱す。
《1-A爆豪、下がダメなら頭上かよー!!クレバー》
爆豪に便乗して後ろに続くのは瀬呂と常闇の2人だった。
《一足先に行く連中A組が多いなやっぱ!!》
インフェルノに限らず地面を蔓延る1P〜4Pロボだった鈍達を蹴り、殴り、感電させたり、切り落としたりと個性を使って対処する中、緑谷は焦凍が倒したインフェルノの装甲を拾い上げて自身を追ってくるロボを装甲で切り崩した。
「おい」
「!」
突然背後から話しかけられてビクリと肩を揺らす。反射的に後ろへ振り向くと轟々と炎を纏ったエンデヴァーが立っていた。
見下ろしてくる目が……違う。あの時と違って彼の目は揺れていた。