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雄英体育祭4
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「なんでしょうか、エンデヴァー」
「お前がアオスビルフの娘だというのは本当か」
来た
「ええ。本当です」
「っ…なぜ、今まで俺に伝えなかった…!」
「なぜ…と言われましても…私はあなたを知りませんので…」
「!!!」
信じられないようなものを見るかのように見開くエンデヴァーに構わず続ける。
「私は警察に保護管理されている身です。自分の勝手な判断で警察官(かれら)の努力を無下にしたくはありません」
アンタだって私の事覚えてなかっただろ。お互い様だ。
「警察?なら警察から報告があったってよかっただろうに……」
ボソボソと小さく言う。私には聞こえなかった。
「聞かせてほしい。あの事件から今までのことを。そしてお前の見た目の説明もな」
「……見た目?」
「昔と違う」
「え…?何を…?私はずっと、これですよ…?生まれた時からずっと……」
「記憶を弄られてるのか!?」
「なん、のことですか…?」
エンデヴァーの言葉に頭が混乱する。この人は一体何を言ってるんだ。私は私だ。昔からずっと何一つ変わっちゃいない。
「はぁ………」
長く重たい溜息を吐いたエンデヴァーが膝を折って私に目線を合わせた。
「今ので大体想像はついた。確かにお前はこのまま警察に保護されていた方がいいだろう。だが俺を除け者にしたのは許せん。今の保護者は誰だ」
妙に強い威圧感に負けてしまい正直に答えた。
「霧灯将樹、です」
「あいつか。分かった」
エンデヴァーは立ち上がり、私の元から去ろうとするが足を止めて振り返った。
「……名は?」
今かよ
「黒冷焔です」
「黒冷………早くそのケガを治せ」
それを最後に彼は完全に姿を消した。
「……はぁ」
無意識に身体に入った力を抜く。
「なんだったんだあの人…」
帰ったら叔父さんにエンデヴァーと接触したって教えなきゃ。
スクリーンを見ると丁度最終関門中だった。何時の間にか焦凍は爆豪を追い抜かれていて、後ろの方で緑谷が装甲で地面を掘って何かを掻き集めいてた。
緑谷が装甲を盾にして地面に倒れると大爆発が巻き起こった。会場に居ても外からの爆音が鳴り響く。
《後方で大爆発!!?何だあの威力!?》
爆風に乗って緑谷が空を駆ける。
《偶然か故意かーーーーA組緑谷、爆風で猛追ーーーーー!!!?っつーか!!!!》
「あっ」
《抜いたあああああー!!!》
焦凍と爆豪を抑えて先頭に躍り出た緑谷。まさか緑谷が2人を抜くとは思いもしなくて固まった。
スクリーンの向こうにいる2人も驚いて固まるがそれは一瞬のこと。爆豪は《デクぁ!!!!!俺の前を行くんじゃねえ!!!》と怒鳴りながら速度を上げ、焦凍は氷を地面に張って道を作って走る。
《元・先頭の2人!足の引っ張り合いを止め緑谷を追う!!共通の敵が現れれば人は争いをやめる!!争いはなくならないがな!》
《何言ってんだお前》
緑谷は爆風に乗って抜けたものの、着地を考えていなかったようで徐々に落下していき、2人に抜かされようと3人が横に並んだ瞬間、空中でくるりと回転し装甲から伸びた紐を握って地面に叩きつけた。
カチカチとスイッチが入るような音が複数。再び爆発が起こり、真横にいた焦凍と爆豪が被害にあった。
爆風に押し出された緑谷は走る。
《緑谷間髪入れず後続妨害!!なんと地雷原即クリア!!イレイザーヘッドおまえのクラスすげえな!!どういう教育してんだ!》
互いに互いの火付けあってるだけよ。3人共理由はともあれトップを目指してるんだから。
《さァさァ序盤の展開から誰が予想出来た!?今一番にスタジアムへ還ってきたその男ーーーーー…緑谷出久の存在を!!》
トンネルを潜ってスタジアムに姿を現した緑谷に会場中が大歓声に包まれた。
息を切らしながら観客席をきょろきょろと見渡し、教師用観客席にいるトゥルーフォームのオールマイトを見つけるとニッと笑ってガッツポーズ。
緑谷に続いて焦凍、爆豪…次々とゴールを決めた。
「緑谷…オールマイト、かぁ……」
強いなぁ、あそこの2人は。
予選通過した42人がステージに集まる。A組の数を数えると20人全員が通過したようだった。
再びステージに立ったミッドナイトの声が響く。
《予選通過は上位42名!!!残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい!まだ見せ場は用意されてるわ!!》
毎年恒例のレクのことかな。
《そして次からいよいよ本線よ!!ここからは取材陣も白熱してくるよ!キバリなさい!!!》
観客性の前の方にズラリと並ぶマスメディア。あんなのに囲まれるなんて真っ平御免だ。
《さーて第二種目よ!!私はもう知ってるけど〜〜〜〜…何かしら!!?言ってるそばからコレよ!!!!》
ステージ前のスクリーンに「騎馬戦」の文字が映し出された。
《参加者は2〜4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ!基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど一つ違うのが先程の結果にしたがい各自にポイントが振りあてられること!》
なるほど。つまり組み合わせによって騎馬のポイントが変わってくるわけだ。
《あんたら私が喋ってんのにすぐ言うわね!!!》
また誰が注意されたな。
《ええそうよ!!そして与えられるポイントは下から5ずつ!42位が5P、41位が10P…と言った具合よ。そして…1位に与えられるポイントは1000万!!!!》
「……雄英らしいわ」
ハハッ…と苦笑いが溢れた。
カチンと固まる緑谷に正直同情する。
《上位の奴ほど狙われちゃう下克上サバイバルよ!!!》
頑張れ緑谷。