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次男の苦悩
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「それでは、私達もそろそろ行きましょうか?」
「そうですね」
「そ、それでは…」
『はい。この間は本当にありがとうございました』
私は改まって頭を下げた
「ふふ、いいんだよ」
『観音坂さんも、ありがとうございます』
「い、いえ!俺は、何も…」
『そんなことないです!沢山元気付けてもらいました。飛びっきり美味しいお菓子作りますから、待っててくださいね!』
「…あぁ。待ってるな」
『はい!』
私がそう笑いかけると、独歩は少し照れくさそうにはにかむと、穏やかに笑って頭を撫でてくれた
「それではまたね」
「また会いましょうね、寂雷さん」
「ふふ、そうだね」
一郎くんとそんな話をして寂雷先生たちは去っていった
『…さてと、帰ろうか?』
「あぁ、そうだな」
「帰ろうぜ」
「勿論、御菓子の材料は買って帰るんでしょう?」
『うん。まだ働いてないから一郎くんたちのお世話になっちゃうけど…必ずバイトして返すから!』
「はは、期待しないで待ってるな」
一郎くんは笑って私の頭をくしゃくしゃと撫でてくれた
「それじゃあ近くのスーパーに寄りつつ帰ろうぜ」
『うん!』
一郎くんと二郎くんが隣で、私を二郎くんと三郎くんが挟み、三人で帰り道を歩いた
何を作ろうか、そんなことを考えながら
『ねぇ、シンジュクの皆さんに作るお菓子、何が良いと思う?』
二郎視点
『ねぇ、シンジュクの皆さんに作るお菓子、何が良いと思う?』
「え!?…そ、そうだな…姉ちゃんが好きなのでいいんじゃない?」
いきなり姉ちゃんに話題を振られてどもる
そんなの知らねえよ…!
正直な話をすれば、姉ちゃんには自分だけを見ていて欲しいし、兄ちゃんや三郎はいいとして、他のディビジョンの奴にお菓子なんか作って欲しくないのが本音だ
…だが、そんなことを言えば、姉ちゃんを困らせてしまう…
『…二郎くん?』
「え!?な、なに?姉ちゃん」
『なんだか静かだから…なにかあった?』
「い、いや、なんでもないよ!」
「二郎はいつもこんな感じですよ」
そう言った三郎に、"気持ちは良くわかるぞ、二郎"と言いたげな視線を送られて、兄ちゃんにまでうんうんと頷かれてしまった
『そ、そう…?』
姉ちゃんは姉ちゃんで納得してるし…
俺そんなにわかりやすいか!?
なんて絶望を味わいつつ、俺はため息をついた
次男の苦悩
(帰り道、次男の苦悩)