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『おっと、つい手が出ちまったぜ』
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『…で、客間に上げたはいいがどう対応していいのか分からず私にメールを打ってきたのは良いけど、私が到着するまでこの部屋ん中2人っきりで無言の状態を過ごした…と』
客間で、お客さんがいるにも関わらず私は兄貴への説教を始めた。
『おかしいなぁ、時計が間違ってないなら1時間近く無言の空気の中で過ごしたことになるんだけど?』
状況は、お客さんである黒スーツの男の人がしてくれた。
私と会話する時、やっぱり兄貴を相手にする時よりも落ち着いていた…そりゃそうか、空気や雰囲気が違うもんな。
『ヲィ兄貴やい、黙っとるって事は肯定とすんぞ』
『……………』
『ばっきゃろー!!』
『∑ごはぁっ!!』
「∑えぇぇぇぇえ!?」
『おっと、つい手が出ちまったぜ』
“手”…と言っても、“孫の手”だがな。
あ、孫の手って本当は“まこの手”って言うんだぜ!(どやぁ
…じゃねーや、話が逸れた。
『そんでさ、オニーサンは何処の誰様?』
「え?あっ、ハイ。私、こういう者です」
『んー…時の政府、審神者捜索課、1班班長、椿?』
「はい」
どうやら、オニーサンの名前は、椿というらしい。
『“時の政府”だぁ?』
「∑ひぃっ!!」
『はいはいはーい、そんで椿さんは兄貴の蓮に用なんですか?それとも私、槭に用なんですか?』
「えぇっと…その、お兄さんの蓮さんに…」
『あ゛?』
「∑ゴメンナサイ!!」
『とりあえず話が進まんから黙ってろ兄貴』
『∑ぐふぉっ!!』
今度は傍にあったハエたたきで兄貴の脇腹を突き刺せばジタバタと悶絶し始めた。
ピンポイントで突き刺さると地味に痛いよねアレ…て、また脱線しとるがな。
『それで、兄に何用ですか?』
「えー、ゴホン。早速なんですが、本題に入らせていただきます」
そう言うと、椿さんは持参しただろう黒の鞄から紙束を取り出した。
「蓮さんに、審神者になっていただきたく、ご説明をと思い参りました」
『そんで玄関で出迎えた兄を見て「あ、人生オワタ…」と思ったと』
「ハイ…∑じゃなくて!!」
『おぉ、ノリツッコミ!私は嫌いじゃないぞ?』
「もうヤダこの兄妹…」