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手紙
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多分運命なんて感じないだろう。
でもこんなにわかりやすい運命ならいっそ変えてしまいたい。
「おぉ?これなんだ?」
年末の掃除中おそ松兄さんが押し入れからボロい箱を見つけた。
「なんだ、なんだ」と集まる兄弟。
僕もなんだろうと思い、歩み寄った。
「ねぇこれ、僕らの御先祖様からじゃないの?」
チョロ松兄さんがそう言うと、「なら開けてみようぜ!」とおそ松兄さんははしゃぐ。
それにあわせみんなも開けよう、開けてみようと楽しそうに話す。
なのに僕はなぜだか胸騒ぎがしたので、近くにいた十四松にぼそっと話した。
「なんか変な予感する・・・・・。」
「兄さん楽しみじゃないの?」
「う・・・・・。」
十四松が天津無垢な目をキラキラさせて聞いてきた。
その目を見てあぁ、こいつの期待は裏切っちゃいけないなぁ。
なんて思ってしまった。
「楽しみ・・・・・だけど」
「よっしゃ、開けるぞ!」
おそ松兄さんの周りを兄弟が囲む。
見たくないって言ったら嘘になる、けど・・・・・なんか。
なんだろう、この胸騒ぎ。
紐を解いて箱の蓋を開けた。
ぽんっといい音がして蓋が空いた。
「手紙?」
中には手紙が入ってた。
「なんて書いてあるのかな?」
「んー、紙が古くてボロボロだから読みづらいよ。」
「おぉ?ラブレターか?」
「黙れクソ松。」
おそ松兄さんから手紙のようものを取り上げ、チョロ松兄さんがなんとかして読もうとする。
隣で見てる僕はなぜかそれが読めた。
「ちょっと貸して。」
「一松?」
「『貴方がこの手紙を読んでる時はもう私は貴方の隣にはいないでしょう。
帰ってきて他の女の方に目移りして忘れてしまったのかもしれないし僕はなんかで死んだのかもしれない。
それでもいっぱいそばにいたのになにもしてあげれなかったのが心残りです。
最後にこれだけは聞いてください。
貴方が僕のことを忘れたとしても僕はずっと何年も、何度生まれ変わっても探し続けます。
想いを伝えたいので。』」
手紙にはそう書いてあった。
「一松、これ読めるの?」
「なんか読めた。」
「なんかこの人すごいね。」
これを僕が読んだ後にぬも話せずにみんながしん、としてる中トッティが呟いた。
「なんかここまで愛してくれる人いないと思うよ。僕だったら嬉しい。」
しんみりしてるときに突然十四松が大きい声を上げた。
「一松兄さん、どうしたんですかい!?」
「え?」
「だって、兄さん泣いてるから・・・・・。」
確かに頬が冷たく目からは何故か水が零れている。
なんで泣いているんだろう?
「うわ、マジだ。」
滝のようにボロボロ流れる涙はいつの間にか鼻腔を塞いだ。
「うっ・・・・・ひっく」
「一松、大丈夫か?」
慌ててカラ松が背中をさする。
その時に頭の中に何故か違う景色が見えた。
『から松さん!』
走ってある男の所に行く紫の服を着た人。
から松とかいうやつはそいつを見てにっこり笑う。
『あぁ、いち。』
『お久しぶりです。』
紫の服を着た人は男なのに頭にリボンを付けていた。
『いち、今日も可愛いな。』
『んなわけないでしょ!』
と男の手を手を払う。
なんなんだ、これ、なんでこんなのが流れるんだろう?
「『ずっと続くと思ってたのに・・・・・!』」
『から松さん!』
『いち!?どうしてここに・・・・・?』
また紫色の服を着た人はその人のところへ走る。
形相を変えて。
『戦争に行くって本当なんですか!?』
そいつは白い服を着て、帽子を被っていた。
『まぁ、そうなんだ。』
そう言って照れたように頬を指で掻く。
『なんで・・・・・!?しかも特務士官なんて!』
『上官の命令なんだ。』
『嫌ですよ!僕からいなくならないで・・・・・!』
『いち』
から松という人は泣きそうな顔のいちという人をぎゅっと抱きしめていた。
『絶対帰ってくるから、それまで待っててくれないか?』
『必ず、ですよ・・・・・?』
『任せろ。必ずお前の元へ帰ってくる。』
そしてから松は最後にこう言った。
『もし、帰ってこなかったら俺はお前をいつまでも探す。そして戦争のない平和な時代で俺達は式を挙げよう。』
『ばか・・・・・!』
そういちが言うと急に景色はガラスが割れたように崩れて真っ暗な世界に僕だけがいた。
暗いけれど怖いとは思わない。
あぁ、この手紙は僕の前世か、なんかなんだろうな。
フラッシュバックというものなのかもしれない。
『僕はずっと待ったのにあの人は気づいてくれないんですね。』
と暗闇から紫の服を着たいちだけが僕の目の前に来た。
てか想いを伝える必要なかったんじゃないかって思う。
もう相思相愛だったよ。
『でもいいんです。僕は男だしあの人は他の方と幸せになってるならそれで。』
いちは泣きながらにこっと笑っていた。
待ってよ、まだ諦めないでよ!
「から松ってカラ松だろ!?」
僕は声を振り絞った。
いちははっとした顔で僕を見た。
『知ってるんですか?』
「知ってるよ!だってあいつはニートでバカでかっこつけてて今じゃこんな僕の兄貴になってる!」
声を上げる、こんなに話したのは初めてだ。
でも伝えないといけない。
お前はもうそいつを見つけてるって。
僕はあいつが好きだって。
「痛いし私服くっそだせぇし力はゴリラ並みだし兄弟のことしか考えてないし!」
お前は見つけたよ、お前の声は届いてるよ。
まだあいつに届いてなくても僕には届いてる。
だって時代も全部通り越してもあいつが好きってすごいじゃん。
「でも僕はあいつが好きだ。」
そう言うといちは嬉しそうに涙を流しながら笑った。
今度は、辛そうな顔じゃない。
『ありがとう。』
そうしていちは暗闇の中を歩いていた。
歩いている先にから松のような人が見えて、いちは嬉しそうに走っていった。
良かったな、と思っていると僕はいつもの世界へ帰ってきた。
「んん・・・・・。」
「あ、起きた!そしてまた涙出てる!」
「泣きすぎだよ一松、はいお茶。」
「うん、ありがとう。」
いつの間にか寝ていたらしい僕は目を開けた瞬間みんなの顔が見えて少し面白かった。
でも肝心のバカは見えない。
「一松、大丈夫ー?具合は?」
「うん、大丈夫。ありがとうおそ松兄さん。」
「兄さん1回涙拭きなよ。」
トッティはそう言うと僕の涙をティッシュで拭った。
僕もー!と十四松も反対側を頑張ってくれる。
落ち着いた後端っこにいたカラ松に声を掛けた。
多分僕が怒るからそっとしてろってチョロ松兄さんにでも言われたんだろう。
なんかしてやりたいけど何も出来ないって顔してた。
「ねぇカラ松、ちょっといい?」
「え、なんだ?」
ぐっと服を掴んで僕はカラ松にキスをした。
「え?」
他のみんなも呆気に取られてる。
「やっと見つけた、バカラ松。」
ほら、いち。
やっとお前の願い叶ったね。