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すれ違い
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あなたには、幸せになってほしかったんです。
ー…
誰もいないふ頭、倒れてる人たち…
『…左馬刻…』
「…あ?…あぁ、なんだ、てめぇか」
ー貴方に幸せになってほしいから
ーお前を巻き込みたくねぇから
『…さよならしよっか』
「…おう」
ー私はそう言った
ー俺はそれにうなずいた
『ー…さよなら』
ー涙がこぼれるのもそのままに、その場を立ち去った
ー追いかけたくても、とどまった
「ちっ…なんで泣いてんだよ…!」
すれ違い
(こんなに近いのに、こんなに遠い)
「…ちっ」
あれから、俺の機嫌は言うまでもなく悪かった。
銃兎のヤローからは、
「そんなになるならなんとかするか仲直りしろやバカヤロー!」
って言われたが、んなことできるわけねぇ。
もともとサヨナラを告げたのはアイツだ。
少なくとも俺に問題があったのは間違いねぇ。
…けど…
「…あぁ、くそっ」
なんで…
なんでアイツがいないだけで、毎日がこんなに色褪せて見えんだよ…
ー…
左馬刻と別れてから数日、私は仕事に打ち込んでいた。
『部長、例の書類、出来上がりました』
「あぁ、わかった。今持ってきてくれる?」
『わかりました』
前に左馬刻と会えないときだって、仕事に打ち込むときはあった。
でも、今回は、左馬刻はヤクザで、もし一般人の私を人質に取られるようなことがあったら…そう思って、別れた。
なのに…
左馬刻とサヨナラしただけで、なんで…
どうしてこんなに、毎日が色褪せて見えるのでしょうか…
ー貴方のためを思って別れたのに
ーお前のためを思って別れたのに
ーなにも満たされない