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復活の予感
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俺とアイツはすむ世界が違うから、
結ばれることはないと思ってた。
俺はヤクザで、アイツは違って。
ヤクザの世界に、真っ白なアイツを巻き込む訳にはいかねぇ。
ずっと、そう思ってた。
だってそうだろ?
アイツが傷つくかもしんねーんだ
そんなところにアイツを連れ込むわけにはいかねぇ。
…そう、心の中ではわかってんのによ。
「…なーんでこうも理解できねぇんたろうなぁ…」
吐いた煙草の煙が静かに空へと上がっていった。
ー…
「…ふわ、ねみぃ…」
その日は欠伸を噛みころしながら歩いていた。
くそ…合歓のやつ夜中まで電話してきやがって…
しかもその内容は、みのりのことだった。
ー…
〈ねぇ、お姉ちゃんの元気がないのってお兄ちゃんのせいなの…?〉
「…しかたねぇだろ」
〈何があったの…?〉
「…この間、みのりが事故に遭っただろ」
〈うん…〉
「それをたくらんだと思われるやつらの行動が活発化してきててな。…アイツを…みのりを、巻き込みたくねぇんだ」
〈だから、別れようっていったの?〉
「…しかたねぇだろ。アイツは、俺とは住む世界がちげえんだ」
〈…なにそれ。お兄ちゃんはそれでいいの?お兄ちゃんは、それでもお姉ちゃんが好きだから付き合ったんじゃなかったの?〉
「っ!!」
〈お姉ちゃんはお兄ちゃんを信じてたから事故に遭っても平気だったのに。…お姉ちゃん言ってたよ。お兄ちゃんに別れようって言われてから、ショックで食事すら取れてないみたい〉
「!そこまできてんのか…?」
〈うん、そうみたい。…もう一度言うけど、お兄ちゃんはそれで良いの?〉
合歓はそう言うと電話を切った。
「…どうしろってんだよ…」
俺は頭をかいた
ー…
「…潮風がすげえな」
みのりとデートできた港まで来た。
二人で見た景色
目を閉じれば頭のなかに浮かんでくるのは、アイツの笑った顔、照れた顔、寂しそうな顔、はにかんだ顔、そしてー…
「…ああ」
俺は間違ってたのかもしんねぇな。
お前が傷つくのが怖くて、逃げてただけなのかもしれねぇ。
左馬刻様が聞いてあきれる。
今行く。
復活の予感
(待ってろよ)