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緩やかな昼下がり
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昼休みになった
「ジロちゃーん、昼メシはー?」
「あー、わり、今日はパス」
「?おう、わかった。じゃあなー」
ダチに断りをいれてから、俺は中庭に向かった。
中庭でしばらく待ってると、江藤が走ってきた
『ご、ごめん…!お待たせ…!』
「おー、来たかー。つかそんな走ってこなくて良かったのに、律儀な奴だな」
と俺が笑うと、彼女もへにゃりと笑った
『だって、待たせちゃうの申し訳ないし…』
あー…くそ…そういうとこだっつの!
なんて内心思いながら、
「おら、座れよ」
と自分の隣をバシバシ叩く
『う、うん…』
中庭に置いてある二人用ベンチに腰かけていたので、必然的に二人の距離は近くなる
ドキドキと脈打つ心臓を抑えるのに必死だった
『…あ、そうだ、山田くんお昼御飯は?』
「…は?」
唐突に江藤が言ったのですっとんきょうな声が出た。
『え?だって、いつも山田くんお昼は女の子達のお弁当なのに、今日は断ってたし、持ってきてるのかなーって』
「…いや、持ってきてねぇ」
だって、お前と二人にきりになりたいのに弁当なんてもらったら二人もなにもねぇだろ…
と言いたいのをこらえ
「お前腹へってんだろ?食って良いぞ」
『え?私だけ食べるわけにはいかないよ!』
「あ?だって俺が弁当持ってきてねぇし…」
『じゃあ、私の半分あげる』
「え、まじ?いいのか?」
『うん、私ので良ければ』
突然に舞い降りた、好きなやつの手料理を食えるイベントに、胸が高鳴る
「…じゃあ、もらう」
『うん、どうぞ』
なんと、わざわざ江藤は、自分の食べる分を蓋に移し、弁当箱の方を俺に渡してきた
「…は?逆じゃねぇの?」
『山田くん育ち盛りでしょ?食べなきゃダメだよ』
と江藤は笑った
…こいついいやつ過ぎんだろ…
「…おう、ありがとな」
ほほを染めつつ、江藤から弁当箱とたまたま持っていたらしい割りばしを受けとる
「…頂きます」
『はい、どうぞ』
卵焼きに、タコウインナー、ミートボール、卵とほうれん草の和え物など、旨そうな具材が入ってる
ためしに卵焼きを食ってみる
「…!…旨い」
『!…よかった』
俺がそう呟くと、江藤はほっとしたように笑った
緩やかな昼さがり
(俺らしくねぇって?たまにはいいだろ)