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きっと何十年、何百年と幾度となく荒波に揉まれながら成長してきたであろう傷跡を残し、周りの木々よりもはるかに背が高く幹がどっしりと風格あるおもむきをかもちだしそこからでた枝は上に上にまるで天に届かんばかりの強さを見せつけていた。
この樹木の丁度、他の木々と重なり合わさり人がいるのかどうなのか判りにくい大の大人が2人乗っても折れそうにない程の細い木なら幹であってもおかしくない枝の根元で、
風になびく木の葉の擦れあう音を目をつぶり体で堪能しながら、樹木の中を流れ落ちていく水の流れを聞き体全身で先ほどまで任務で嫌というほど浴びた敵の飛び血や切り裂く感覚をこの瞬間だけはまるでなかったかのように
悪い夢であったかのように
ゆっくりゆっくり癒されていくそんな日々。
今日もまた誰も知らない、邪魔も入らない
此処で毎日と断言してもいいほど入り浸ってもう何年前につけたかも忘れた“蝦蟇‐ガマ‐”という名前をぶつぶつ呟きながら鶴音は幹を優しく、まるでペットの犬か猫をなでるかのように触っていると…
「い…おい…おいッ!!」
声をあらげて命令にも聞こえる口調で誰かを呼んでいる声が聞こえるが今は癒される時間なんだと自分には関係ないんだと、無視を決め込む鶴音
なかなか、相手からの反応が返ってこないことに痺れを切らした声の主は鶴音の丁度斜め下、お互いに相手の全身が見える距離まで移動してもう一度鶴音に声を大にして
「おい!聞いてんのか!鶴音!」
「…ん?、あっ!サ…「ん?、あっ!じゃねぇだろ。」
まだ、言い終わちゃぁいないアタシの声に重ねて、ツッコミしてくるとは、ホントせかせかした男だ。
「で、用はなんなんだい?」
「おまえ、気づかなかったんだからもう少し悪びせてみせろ。」
ため息まじりに、謝罪を要求してくるサソリは、理不尽な奴だ。もちろん、サソリが自分の名を呼んでいたことに気付かなかったのは悪かったと思っているがアタシと蝦蟇の癒しの時間を奪ったアンタの罪は重いんだからな。
「悪い、わるい。で?」
心なしの謝罪と、要件を述べて消えろと言わんばかりの継ぎ足した一文字。
「せっかちめ。もっと悪びてみせろ。」
「あっ?な…ぶはっつ!!」
“なんだって!?”と、不機嫌な声で喧嘩を売ってやろうかと発すれば、その言葉を遮るかのように顔をめがけて何かが飛んできた。
もちろん避けきれずに顔にヒット…なんてこともなく、片手の掌キャッチしたものの勢いよすぎた為に、自分の手の甲が顔にあたり変な声を発してしまう。
「いててっ…」
と掴んだ何かを確認しようとする前に、目の前で人を馬鹿にしたかのような爽やか笑顔を向けてくるサソリに、『鼻で笑われるよりはマシだ。』と少々折れそうな心に言い聞かせて掴んだモノをみる。
「……」
「鶴音それ、くれてやる。」