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第1話
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高校時代の恩師に誘われ、ミッション系の女子高校に専属講師として就職した私…
今年で2年目。
学園は夏休み目前。
生徒達は浮足立っている。
しかし…
私は出勤である。
でも会社員だって普通に出勤してるし。
3年前まで私もOLしてたし。
あまり変わらないかな…
「おはようございます」
色々考えながら職員玄関へ向かっていると、敷地内にある礼拝堂の前で、穏やかな朝の挨拶を投げかけられた。
「おはようございます」
軽く会釈しながら挨拶を返す。
「今朝は風が吹いているので涼しいですね」
箒片手にニコニコしながら話し掛けてくる外国人男性。
彼の名前は”レオポルド・ゲーニッツ “。
ロシア出身の39歳独身。
髭、ピアス、ツーブロックと三拍子揃った、超コワモテの牧師様である。
しかも髪がツートンカラー…
トップが金髪でサイドが黒。
髭が黒いから地毛は黒いのかと…
これで身長が193cmもあって、美術室の石膏像も真っ青になるような彫りの深い顔立ちなのだ。
視覚的な意味での迫力が半端じゃない。
「確かに今日は涼しいですね」
少し離れた距離から返事をして、その場を離れる。
別に怖い人じゃないんだけどね。
信仰してない人間から言わせたら、やはり話し方や物腰などが穏やか過ぎて違和感が凄い。
そのギャップが更に追い討ちをかけるのだ。
「おはようございます」
受付の事務員に挨拶して、職員室でまた同じ挨拶をする。
「おはよう、随分ゆっくりね…
朝の礼拝準備があるんじゃないの?」
「はい
さっきゲーニッツさんに会いました」
「さっさと行かないと、全部ゲーニッツさんが終わらせちゃうわよ」
そう言って朝から絡んでくるのは、ゲーニッツ さんと同じ年齢の女性教師。
良い女風のキャリアウーマンみたいな見た目をしている。
ちなみに私を講師に誘ってくれた恩師とは彼女の事である。
「いつだってゲーニッツさんが殆どやってるじゃないですか…」
「アンタねぇ…
そういう問題じゃないの」
呆れた声で腕組みする恩師。
彼女はゲーニッツさんを狙っていると思う。
このネタは生徒達も噂していたし…
「すいません、もう行きます」
そそくさと職員室を出て礼拝堂へと向かう。
私がゲーニッツさんに指名されたのを僻んでるな…