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rotD:君の上書き
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「そうだ、レオとキスしてるとこ見たよ」
TVを見ながら何気ない世間話を振ったつもりだが、相槌を打ってこないドナテロの方を振り向くと驚愕といった表情で口をあんぐりと開けていた。
「え、なに?」
「……いや、え、だれ誰が? 誰に?」
「エイプリル」
珍しくキョドる彼に淡々と答える。なんかすごくよくできたドキュメンタリー見せてもらったの、と。
「ばっちりキスしてたね」
「〜〜……っ!」
顔を覆って呻くように喉から声を出すドナテロ。頭を振って一向に顔を上げない彼に話題を出さないほうが良かったかと慌てて軌道修正を図る。
「でもまさかお父さんがもろ出しになってるとは思わなかった。エイプリルもよく撮ってたね! 年頃のよその女の子の前であんな格好になるなんて、お父さんもだいぶ変わってるよねー……」
だめだ、全く効果がない。
いよいよ何も反応がなくなった彼に私は小さく声をかける。
「ご、ごめんね? ……でもカッコよかったよ」
そう言うと彼は大きく溜息をついて、ようやく顔を上げた。
「…………せっかく忘れようとしてたのに」
「ごめんなさい……」
ふざけて言う話じゃなかった。語尾を小さくしながら謝ると、彼はムスッとした顔で言った。
「思い出したらムカムカしてきた。ルリ、消毒させてもらうよ」
「消毒……? っんむ、ん!」
いきなり頭を引き寄せてキスをされた。唇を舐められ、薄く空いていた歯にも舌が這う。
そのまま閉じ込められるように口内へ潜り込んだ熱が、唾液とともに快楽を塗りつける。
「ん……ァむ、んぅんー!」
逃げようとするとより強く頭を抑えられ、更に舌を絡め取られる。文句を言おうにももごもごと遮られて全く意味をなさない。だんだんと気持ちよくなって、頭のスイッチが切り替わりそうになる直前でドナテロが離れた。
「ン……美味しかった」
ペロリと唇を舐めるその仕草は私と同じように熱を帯びているようで、ぞくりと腰の辺りが騒いでしまう。
それに気づかないように目を逸らしながら明るい声で話し出す。
「よ、よかった! それならよかった! そうだ、消毒ならレオにもしないと、ねー……」
チラとドナテロを見ると先程の熱を帯びた目で獲物を見つけた狩人のように口が弧を描く。
「そんなことしたらルリの全身を消毒してあげるよ。くまなく。じっくり。余すところなく」
なんだか本当にやりそうな気配だ。怯えたウサギのように私は、「ジョ、ジョウダンデース」と呟いた。