-
rotD:猫の爪はすぐに出てくる
-
※ハロウィンネタ
「ルリー、トリック・オア・トリート!」
ハロウィンなので彼らの家に遊びに行くと、声を合わせて合言葉を言ってきた。
「はいどうぞ。みんなよく出来てるよー、すごく怖い。……ドニーは猫さんなんだ、可愛いね」
順繰りに彼らの南瓜バケツへお菓子を入れていく。最後のドニーも褒めてあげると目に見えて不機嫌そうに眉を寄せた。
「……ルリそのお菓子、僕らが食べて大丈夫?」
「え?」
ワントーン低い声で小分けになったマシュマロやキャンディを指差した。大丈夫、とは?
「ルリは僕らのアレルギーを確認していないだろう? それなのにそんな市販のお菓子ばかりで、うっかり過剰な免疫反応が出たらどうするつもりなんだい? なにより僕らは亀だよ、人間のお菓子じゃ食べられないものがあるかもしれないじゃないか」
「えっと……」
スラスラと理由を挙げ連ねてお菓子を受け取る気はないみたい。でもあなたの兄弟はすぐ受け取ってくれたのに。ドニーだけアレルギーがひどいのかな。
「その危険性を踏まえて僕らに渡せるものはある? ない? ないよな? なら仕方ないイタズラだルリ」
早口でまくし立てて私を圧倒する。私が二の句を継げないでいる間にドニーは私を抱え上げた。
「ちょ、持ち上げないで! どこ連れてくのってば! 誰か、誰か助けて!」
「おいドニー待てって! も、者共出会え出会えー、ご乱心だ!」
サムライの格好をしたラフが慌てて引き止めてくれるけどドニーはずんずん進んでいく。ラフに呼ばれてるのにレオもマイキーも止めに来てはくれないらしい。
「薄情者ー……」
私の最後の叫びが下水道にこだました。
「ドニーのやつマジもんのモンスターの顔してんな」
「可愛いって言われたから拗ねちゃったのかな」
「あいつがくじ引いて自分で当たったんだろーに」
「ねえ。ルリ可哀想に」