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呪術高専
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「有り得ねー。小学生の子供にいきなり攻撃するか?」
バリバリと煎餅に噛みつきながら、真希ちゃんが呆れた様に言う。それに横に座った五条先生がだって〜と声を上げた。
「この子が呪霊を操れるって聞いた時点で、こっちとしては即刻保護対象なんだよ。下手したら特級呪霊になる可能性もあったし」
「それは分かるけど……ってか、お前何でそんな呑気な顔してられるんだ。危うく死ぬところだったぞ、あいつ」
「んー、僕最強だからさ。手加減はちゃんとしたし」
真希ちゃんが、チッと舌打ちをして、お茶を一気に飲み干した。
私はと言うと、2人が話している内容の半分も理解できなくて、ただポカンとしていただけだった。
「で、今までこいつんちに住んでたって訳? 教師が生徒に手を出すって最低だな」
「ちょっと待った。手どころか足も出してないよ僕は。人聞き悪いなぁ。それに一緒に住んでたっても部屋は別」
「お前こいつに変な事されなかったか?」
真希ちゃんが心配そうに私の顔を覗き込む。
「それは、うん……大丈夫。むしろ先生のが危なかった」
「どういう意味だ?」
「先生、サナちゃんを怒らすの上手なんだもん。いつサナちゃんが先生を食べるかヒヤヒヤしてたよ私」
「……は?」
信じられないものを見るような目でこちらを見つめる。
「いや、マジの話。あの時さすがに肝が冷えちゃったよ。あ、ちなみにその時の写真がこれ」
そう言ってスマホを取り出して、写真を見せてくる。そこには、サナちゃんの口に頭を半分食べられながらピースをする先生の姿が。
「いや、全然余裕じゃん」
すかさずツッコミを入れる真希ちゃん。
「サナちゃんいつも優しくておっとりしたいい子なんだけど、先生が私の近くに来ると嫌みたいなの。でもそれを面白がって先生が私に抱き着いてくるから、いっつも喧嘩になるんだよね」「……なるほどねー……」
はははっと乾いた笑いを浮かべる。すると今度は横に座っている棘くんが自分の口元を指差しながら、「しゃけ」と言った。
「棘くんはサナちゃんと仲良しだから大丈夫だよ。サナちゃんも棘くん大好きだって。真希ちゃんも好きだって言ってたよ」
「おかか」
「かわった呪霊だよな……いや、ミナトも相当な変わり者だけど」「え、私?」
「自覚なしとかどんだけだよ」
「ツナマヨ〜」
「うーん、自分じゃよくわかんないや」
えへへ、と笑うと皆が一斉にため息をつく。なんだろう?
「そう言えば乙骨くん何処に行ったの?」
ふと思い出したので聞いてみると、パンダくんが答えてくれた。
「憂太なら里香とデートだよ」
「里香さんと!?︎ 2人ともお似合いだね!」
きゃっ!っと両手を合わせて喜ぶと、またもや深い溜息が周りからもれる。
え? え? 私なんか変なこと言った?
「特級術師ってのは、変わり者の集まりか?」
「へ? どういう意味?」
「乙骨は呪霊とデート。お前は呪霊と家族だのお友達だの……」
「私だけじゃないよ? 先生も変わってるもん」
「そういう問題じゃねーんだよ」
「すじこ!」
何となく会話が噛み合わないまま、その後も暫く4人で喋っていたけど、結局最後まで真希ちゃんが何を言おうとしてたか分からず仕舞いだった。
「そういえば、今日ってどんな授業するんですか?」
お昼休みが終わって。午後の授業が始まる前に、私は五条先生に質問をした。
呪術高専に入学して1ヶ月程経ち、学校にも慣れてきた頃。学校に来る前は呪術師の事も力の使い方も五条先生に個人的に教わっていて、実践的な物はまだ教わってはいなかった。
まずは体力作りから、と言われてこの5年間はずっと走り込みだの体術だのを教わっていた。
ようやっとこの学校に入れる年齢になって、これから本格的に修行が出来ると思っていたから凄くわくわくしていた。
「んー、そうだねぇ。とりあえずミナトには呪具の扱い方を覚えてもらおっかな」
「じゅぐ?」
初めて聞く単語に首を傾げる。何それ?
「簡単に言うと武器だね。刀だったり槍だったりするけど」
「へえ〜すごーい。ゲームみたいだ。ね、サナちゃん」
私の肩に乗りかかるようにしているサナちゃんに同意を求めると、うんうんとうなづいてくれる。
「でしょ? まあ実際ゲームの装備みたいな感じだし。でも扱い方を間違えると大変な事になるから気をつけて」
「は〜い」
「呪具については、真希が一番の詳しいエキスパートだ。教えをこうてみるといい」
「そうなんだ。真希ちゃんお願いしてもいい?」
「ああ、別に構わないぞ」
やったぁ、と手を叩いて喜んでみせる。