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愛想笑い
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「おはようございます」
「おはようございます」
「今日は良い天気ですね」
「そうですね」
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「なんで話したくないのに笑って話すわけ?」
ベッドに座っている私の隣に座って聞いてきた。どうやら今朝についての質問らしい。
「なんでだろう」
「焦らさないでよっ!」
別に焦らしたいわけではない。本当にわからないのだ。
今まで誰だろうとお構いなしに笑って話していた。
心当たりはない。ただ笑っていれば何とかなると思っているからかもしれない。
相手は私に気遣いをしないで済むため気軽に話せているらしい。
「てかずっと笑ってたら疲れない?」
「疲れない」
「えー?ほんと?」
「嘘ついてない」
「でも無理してたらいつかは疲れるでしょ。休みたいって思わない?」
「思わない」
「感覚が鈍ってるのかな?」
いつからだろうか辛い、苦しい、助けてというたった一言すら言えなくなったのは。
家族がいなくなった時だろうか。孤独になった時だろうか。悩みに悩んで結局出てこなかった
「どうかした?」
「何が?」
「悩んでそうな顔をしてたから」
「え?」
「図星?w」
「違う!」
「いつもだったらすぐに否定するのにね」
会って一日も経っていない彼に嘘を見抜かれてしまった。
今まで誰にも見抜かれたことがなく、驚きが隠せなかった。
「どうしたの?w」
「なんでもないから!!」
「はいはいw」
すっかり遊ばれてしまうようになった。
だが、孤独な時間よりは良いと思えた。