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『ふぅ…、やっと着きました』
イタリアから日本に直行便でさえも14時間。
もしも直行便ではなく乗り継ぎすれば30時間以上はかかってしまっただろう。
何時発作が起こってしまうか、ヒヤヒヤしていたが不思議な事に送られてきた携帯のメッセージをみれば大丈夫だと思えた。
__ヴヴッ
釦ではなく慣れない端末機の画面をスライドして、電話に出る。
『もしもし?』
『もしもし(名前)?着いた?体は大丈夫?』
『ええ、大丈夫ですよ。有難うございます』
『今から行くから、荷物まとめてて』
『はい。気をつけて下さいね』
そっと耳から離して、切った。
ガラス張りから見える空はあまりイタリアの空と変わりなく、此処が本当に日本なのか今更不安が襲う。ふと、掲示される大きなポスターに目が行く。
(りゅう、にそっくりだ)
『…TRIGGER?』
でかでかとポップな文字で書かれたグループ名。
日本では流行っているのかな?としげしげとポスターの三人組を見つめる。
中でも、右のいかにもワイルドな人物を見てしまう。
(…?)
誰だろ?とスマホでTRIGGERと検索を掛け、公式サイトに飛ぶ。
(え……)
そこに記載されていたのは確かな幼馴染の名前。
「(名前)」
『!?』
びっくりして振り返れば、ポスターと同じ人がそこに立っていた。
いや待って、この人は十龍之介で、僕の、幼馴染で、今迎えに行くって…。
くらりと眩暈がしてよろける。
「(名前)ッ」
がっしりと背に回された腕は僕のひょろっこい腕とは違って逞しくて、男からしてみれば羨ましい。
待って、頭が、追いつかない。
「ごめん、吃驚させちゃったよね」
ゆっくり息して、と擦られる背中。温かな彼の体温は良く知っているもので、涙がこみ上げて来た。
久しぶりに会えたね、変わったね、有名人になったの?
なんて全部頭から吹き飛んで涙だけがこみ上げてくる。
しがみつくとふわりと香る、匂いに更に涙腺が緩んでゆく。
「りゅう…!」
「久しぶり、(名前)」
笑った君は、変わらない笑顔だった。