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『言ってくれれば良いのに…アイドルなんて聞いてないですよ』
「(名前)のおばさんからきつく言われててね。隠してて本当ゴメンって」
車の助手席に乗せて貰っている僕は、眉を下げて困った様に笑うりゅうの横顔は安易に見れた。
いやいやいや。そういう問題じゃ無くて、本題はこれからの向かい先だ。
『有名アイドルの家に住ませて貰うとか、……ファンに申し訳ないです』
「そこは気にしないで。セキュリティーとか万全な所だから」
『そうじゃなくて…』
社会的に抹消されそうですよ、とは言えない。
「お袋も(名前)なら大歓迎だって喜んでるよ」
『母さんも”龍之介君が一緒なら心配無いわね”って、』
「お互い様だね」
母さん達も、心配してくれているんだ。帰ったらお礼のメールをしないと。
でも、本当はそっちが気掛かりなんかじゃない。
『でも、絶対、僕。……りゅうに迷惑かけます…』
「……」
『此処最近...調子が良くないんです、』
「……」
『でも…、』
手で胸を抑える。痛みは無い今、そっと手を添えるだけ。りゅうはそんな僕をちらりと運転の合間に垣間見る。
「__尚更、連れてく」
『…?りゅう、忙しいじゃないですか』
「だとしても、体調が悪い(名前)を放っておく事は俺には出来ないよ」
嗚呼、もう。また泣きそうだ。
「家事は半分こ、で良いよね?」
『……はい』
「俺この後収録なんだけど、このまま家行く?念の為病院行く?」
『家、で寝たい……です』
移動だけでも疲れるものだ。
ふぁと我慢出来ず欠伸をすれば、寝ても良いよと微睡みの中で言われる。時差ボケも相まってそのまま僕は眠りの波に身を委ねるのだった。