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05(side:陸
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「お大事に」
「有難う御座いました」
新曲発表まで後3日…。
絶対、絶対皆にはバレないようにしないと。
いよいよ迫り来る新曲発表日にオレは緊張とは違うプレッシャーを日に日に感じていた。
「あっ!りっくん!!」
「りくお兄ちゃんだ!」
オレのもやもやを晴らすような明るい声に、顔を上げれば長い病院生活で知り合った子達が駆け寄ってくる。
最近は本格的に活動し始めたし、顔を見せなくなった寂しさからか思わずと飛びついてきた二人に咄嗟にやばいと思った。
飛びつく2人の重さに尻もちをついてしまう。
「うわぁ!?」
「こら、病院では静かに」
「「はぁーい」」
看護師さんに怒られながらも、ニコニコしている二人。何だ何だと視線を集める周りの人にもすいません、と謝る。
『その人が、陸君ですか?』
落ち着いた声が、聞こえた。
咄嗟に声の主を見れば、そこには車椅子に乗って微笑を浮かべた人がいた。
その微笑は慈愛を慈しむかの様でとっても優しそうだった。病衣からすらりと覗く腕の白さとか、彫刻の様な整った顔立ちは何処か西洋人を思わせる。
ハーフのナギとは違うタイプの顔の彫りにオレは釘付けになってしまったのだった。