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「バイト?休養の為に帰国したんだから、しなくてもいいんじゃないかな?」
『でも、ずっとりゅうの家にいて過ごすよりは良いと思うんですよ』
そうかな?と腑に落ちない顔をしながらも龍之介は、パスタを咀嚼する。
因みに(名前)は消化の良いうどんを、ふーふーと冷まし冷ましにゆっくり食を楽しんでいた。
「深夜のバーでの演奏...か…」
『素敵でしょう?』
ふふっと花を咲かせるような笑みを零す(名前)に、まぁ演奏する事が彼にとって生きがいのようなものだからな、と不屈ながらも納得せざるを得ないようだ。
それに自分はTRIGGERとしてあちらこちらに引っ張りだこで、まともに帰って来れる日が少ない。
一人家にいるよりも、ある程度人と話せる方が彼にとってもプラスになるだろう。
「(名前)が良いって思うなら、俺は反対しないよ」
『…!、有難うございます。りゅう』
会話が一段落ついたことにより、テレビの音が鮮明に聞こえ始める。
<台風の中に突如巻き起こったアイドルグループ!!その名もIDOLiSH7!!>
テレビから聞こえたアナウンサーの明るい声が部屋に木霊し、二人して自然とテレビの方を向いた。
画面にはどこかのアイドルグループが土砂降りの中、ライブを行っている中継映像が流れ始める。
ちゅるちゅるとうどんを啜った(名前)は、画面の中の彼らをまじまじと眺めた。
(名前)は特にアイドルに興味がなかったが、これまた同居人が有名なアイドルグループの一人だとすればアイドルそのものに敏感になってしまうのも仕方無い。
『風邪引かないといいですけど……』
しかしダンスのキレだとか、歌声とかの以前の(名前)の着眼点はやっぱり変わっている。苦笑しながらも龍之介はこれが、噂の子達か、と内心思っていた。
『…あ』
大きくズームされた一人、赤髪をしたセンターが大きく画面に映し出されたタイミングで(名前)が目を見開いて固まっていた。
「どうしたの?」
『……、この赤髪の子。…病院で話しました…!』
「へぇ、運命的じゃないか」
『でも、この雨の中大丈夫でしょうか?会話した限り、呼吸系に少し問題があるって言ってましたし…』
大丈夫でしょうか?とテレビの中の彼に釘付けな(名前)。
降りしきる雨の中、満面の笑みを浮かべて歌う彼を龍之介も(名前)に釣られるように視界に収めるのだった。