▽にしおりをはさみました!
- しおりがはさまれています
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今日から新学期。
絶望の1年が幕をあける。
元はと言えば、自業自得なんだけれど本校舎の篩にかける授業についていけなくなった僕は、学内最下層の──〝エンドのE組〟に転属になった。
本校舎から山道を登ること1㎞、僕らE組の学び舎である旧校舎に着く。
教室に入ると、先客がいた。
しかも、絶対にE組(ココ)にいるはずのない人がいた。
「───………東西南北……學瀬、さん?」
思わず口に出してしまった名前に反応した〝彼女〟は視線をノートから僕に移し、ペンを置いて〝笑った〟。
「───おはようございます、潮田 渚くん。1年間よろしくお願いします」
流れるように紡がれた言葉は朝の教室の静寂の中に溶けた。
おはよう、としどろもどろに返したのを聞いた東西南北さんは視線をノートに移し、ペンを動かし始めた。
席に着いて、音を立てないように振り返り、クラス後方に座る東西南北さんを見ると涼しい顔で問題集を解いていた。
その姿を見て湧いた疑問は解決することなく、更に大きくなった。
なぜ、彼女が最下層のE組にいるのだろう。
───1年生の頃から学年2位から落ちたこともない筋金入りのエリートの彼女が。
確かにE組には成績不良生徒だけでなく、素行不良生徒も堕とされる。けれど、彼女は品行方正、謹厳実直、清廉恪勤、清廉潔白………ケンカのけの字も、不良のふの字も出てこない程の大変温厚な人だったと思う。
教師の〝理想の生徒像〟が服を着て歩いていると言われるほどの成績優秀、品行方正で優等生な彼女が何でE組に───?
ずっと考えていたら隣の席の茅野が声をかけていたのに気付かず茅野に怒られてしまった。
みんな、異質な人物(東西南北)さんの存在に困惑していた。
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