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19(Side:龍之介
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「(名前)?」
返信をしたら寝室に行くと言っていた(名前)の動きが完全に止まっていた。テレビから視線を外し、横顔を見ればすぅすぅと目を閉ざす幼なじみの姿に表情筋が緩んでゆく。
軽くウェーブの掛かるミルクティー色の髪を梳いて堪能し、端末をそっと手から抜き上げた。
電源を落としてローテ-ブルに置く。
寝室に運ぼうと膝裏に手を回し、持ち上げようとした矢先にふと首筋の痣が目に付く。
バイオリンが顎当ての形状(首に当たる部分)に因ることで出来てしまうらしいそれは、白肌には目立ち過ぎてしまうのだ。昔から出来ていたもので、コンクール前などは紫にまで変色してしまう程だった。ある意味これは彼の努力の結晶だと思い込むしか無いのだが、今は休養中だと首を捻る。
バイトも週に2日3日ある程度で、弾く回数を減らしているにも関わらず変色は激しい。
昔から見てきたのだ、度合いくらいは判るようになっている。
(自主練習のし過ぎ?…だとすれば、少し休むように言っても良いかも知れないな)
全く、熱に気づかない程にバイオリンを愛でるのだから嫉妬してしまう。
だがその姿に惚れているのも事実ではあった。
アイドルとはまた違う魅力が惹きつけてやまないのだ。
静寂を滑らかに滑る彼の旋律の前ではどんなダンスや歌も通用しないような気がする。
(以前それを言えば、「歌いながらダンスを踊っているりゅうの方が、格好いいよ」なんてとんでもない爆弾が返って来た)