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「そこで問題です。木村君。この四本の触手のうちの仲間外れは?」
4限の英語の授業。先生が木村くんを指名する。
「………青い、触手?」
「正解!!青の例文のwhoだけが関係詞です……」
朝礼の後の寺坂くん達と東西南北さんの口論(?)はまさに東西南北さんの正論だった。
そもそも───何で僕等がこんな状況になったのか
「ね、渚。昼だけど出てるね、三日月」
と茅野に声をかけられ窓の外の三日月を見る。
──3年生の初め、僕等は2つの事件に同時に遇った。
【月が爆発して7割方蒸発しました!!我々はもう一生三日月しか見れないのです!!】
朝のニュースでやっていた月の破壊。別に自分に関係のない事でサラリと流した。だけど、
「初めまして。私が月を爆った犯人です。来年には地球も爆る予定です。君達の担任になったのでどうぞよろしく」
担任としてやって来たのはまさかの月を破壊した犯人。その姿と経緯に『まず5・6か所ツッコませろ!!』とクラス全員そう思った、はず。
「防衛省の烏間という者だ。まずは、ここからの話は国家機密だと理解頂きたい。単刀直入に言う。この怪物を君達に殺して欲しい!!」
「………え。何スか?そいつ攻めて来た宇宙人か何かスか?」
防衛省の人の緊迫した物言いにそれとなく突っ込みを入れる前原くん。
「失礼な!生まれも育ちも地球ですよ」
生まれも育ちも地球な未確認生物っているのかな。しかもなんか、タコ?っぽいし………
「詳しい事を話せないのは申し訳ないが、こいつが言った事は事実だ。月を壊したこの生物は、来年の3月に地球をも破壊する。この事を知っているのは各国首脳だけ、世界がパニックになる前に……秘密裏にこいつを殺す努力をしている。つまり、暗殺だ」
と烏間さんは胸元からナイフを取り出し先生に切りかかる。
「だが、こいつはとにかく速い!!殺すどころか眉毛の手入れをされてる始末だ!!丁寧にな!!」
ヒラリヒラリとナイフを躱され、先生に眉を手入れされる烏間さん。
「満月を三日月に変えるほどのパワーを持つ超生物だ。最高速度は実にマッハ20!!つまりこいつが本気で逃げれば我々は破滅の時まで手も足も出ない」
「ま。それでは面白くないのでね。私から国に提案したのです。殺されるのはゴメンですが……椚ヶ丘中学校3年E組の担任ならやっていいと」
だから何で!?その要求になるの!!
しかもそれを承諾した理事長も凄いと思う。
「こいつの狙いはわからんだが、政府はやむなく承諾した。君達生徒に絶対に危害を加えない事が条件だ。理由は2つ。教師として毎日教室に来るのなら監視ができるし───何よりも30人もの人間が………至近距離からこいつを殺すチャンスを得る!!」
「何で怪物がうちの担任に?」
「どうして僕等が暗殺なんか!?」
そんな皆の声は……烏間さんの次の一言でかき消された
「成功報酬は百億円!」
「「「「¥!?」」」」
ひゃ、百億円!?そんな単位宝くじとか国家予算とかでしか聞いた事ないよ!!?
「当然の額だ暗殺の成功は冗談抜きで地球を救う事なのだから。幸いな事にこいつは君達をナメ切っている。見ろ緑のしましまになった時はナメてる顔だ」
先生の顔は黄色の緑の縞模様になっており、こちらをニヤニヤと笑って見ている。どんな皮膚なの!?
「当然でしょう。国が殺れない私を君達が殺れるわけがない。最新鋭の戦闘機に襲われた時も……逆に空中でワックスをかけてやりましたよ。」
だからなんで手入れするの!?可笑しくない!?
「そのスキをあわよくば君達に突いて欲しい。君達には無害でこいつには効く弾とナイフを支給する。君達の家族や友人には絶対に秘密だ。とにかく時間がない地球が消えれば逃げる場所などどこにも無い!」
「そういう事です。さあ皆さん、残された一年を有意義に過ごしましょう!」
こうして、僕たちの暗殺ライフが始まった。
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