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プロローグ
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煌々と輝く炎が施設を舐め尽くす。
俺たちは死にたくないと叫んで逃げ出した。
見つかれば捕まる、殺される。
皆必死に逃げた。
俺は、生きたくなんて無かった。
けれど、本能には逆らえなくて。
「死にたくない」と呟いてしまった。
……いつの間にか、俺は山の森の奥深くに立っていた
モノクロの視界で見えなかった。
俺の、足下にあった大きな穴に気づかずに。
俺は頭から落下した
不思議と、恐怖はなかった。
*****
ふと目を開いた。
花が俺の鼻先を擽って。
俺は生きていることを知った。
そして、次はその地獄の様な激痛と嘆きに生を感じた。
うつ伏せから横になることで、多少痛みを和らげる
「……こっちから声が聞こえた」
「本当? なら急がなきゃ!」
遠くから声がする。
近づいてくる足音に、昔を連想する。
……やめろ、思い出すな。
深呼吸して、落ち着かせる。
「君、大丈夫かい?」
誰かが俺に声をかける。
俺は一言呟くだけで良い。
俺は眼の焦点があわないままこう告げた。
「助……け、て……くだ、さ…い……」
「……アズ、そっちのゴツい鞄持ってきて」
「え? わ、分かった!」
誰かに担がれる感じと揺れる体に、眠気が襲う。
俺はそのまま目を閉じて意識を手放した……。