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パパ。
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エースを解放した途端、白ひげ海賊団はこの場から素早く離脱する。
私もエースの背中から降りてルフィとエースと共に仲間の元へと走る。
この戦争開始から止まることない足はもうパンパンで正直止まって休みたいが、一刻も早くこの場から離れたかった。
早くここから離れて、パパと仲間と....エースと。
またモビーでいろんな所を冒険して...。
でもこの先の未来を変えなきゃ、それは叶わない願い。
頭の中で笑っているエースがマグマに覆われることを想像して拳をギュッと握りしめる。
そんなことさせない。
そのために私はこの戦場に来たの!!
「「「おやじぃ!!!!!」」」
涙ながらに叫ぶ兄弟達。
目の前でパパが海兵と戦っているのがみえる。
その大きな体には既に無数の傷ができていて
その痛々しさに顔を歪める。
最後の船長命令。
私はそれを聞くつもりは無い。
「オヤジィ!!!!!」
エースは足を止めてパパの傷一つ無い大きな背中を見つめている。
『エース、私、....』
「わかってる。」
『え、、エース!まっ』
「無駄にはしねぇ。」
そう言ってパパの背中を狙う海兵に炎を浴びせる。
「お前らどけえぇぇぇっ!!!!!」
エースの暑い炎に包まれたその場に
エースとパパと私が残る。
パパに向かって土下座をするエース。
メラメラと燃える炎の中、先に口を開いたのはパパだった。
「...言葉は、いらねぇぞ。」
今だに頭を下げているエースにまるで頭を撫でるかのような優しい声色でそう言うパパ。
「....ひとつ、きかせろエース。
....俺が親父でよかったか?」
その言葉に歯を噛み締めて涙を堪えるエースを見て私の心臓がズキリと痛む。
物語が原作通りに進んでいる。
私がエースを処刑台から解放して、少しは歯車のズレが生じれば良い。と甘んじていた。
サッチの時だって、私が助けて
物語は変わると勝手に思って、
それでもエースはティーチを追いかけて....
変わらない確率の方が高かったのに。
ここにきても私は....。
甘い。
そんなにこの世界は甘くはない。
このままでは_____パバとエースは....。
「っ......勿論だッ!!!!」
このままでは、、。
エースを置き去りにしてパパの所へ走った。
「ッ!!!!.......ユカコ!!!!!待てっ!!!!」
エースが私を捕まえようとした手をスルリとかわしてパパに駆け寄る。
わかってる。
大事な息子たちを逃がすために一人この戦場に残って戦おうとしているパパの心を踏みにじろうとしている私の行動。
それでも、
私は
失いたくない。
せっかくパパとエースを救えるかもしれないチャンスを捨てたくない。
漫画を手に何も出来ない苦しみ。
相手に届くことないこの感情も涙も。
でも今は違う。
目の前で、今、現実でおきている。
手の届く距離にいる。
『パパッ!!!!!!』
「っ....ユカコ。オメェ...。」
私はパパに抱きついた。
『パパ、死なないで。私達と一緒に生きて。』
その言葉にパパは私に目をあわせる。
「ユカコ戻れ!!!!」
後ろでエースが叫んでいるが、ここでパパを見捨てるなんて私にはできない。
「ユカコ、エースと早く行けェ。」
『......パパ。たしかに私はエースを助ける為にここに来た。....けど、エースを助けてもパパをここに置いていくような、親不孝なことを私はしたくない。』
「オメェはエースを助けるためにここに来たんだろう。それに、親不孝なんて思わねぇさァ。
オメェに傷がつくようなことがあった方が、親不孝だぜ。」
『....パパ。お願い。私たちはまたパパを失いたくないよ。』
「....ユカコ。」
後ろからエース肩を抱かれて後ろに引き寄せられる。
「ユカコ。」
『...エースだめっ!!私はパパをっ』
「....わかってる。俺だって....」
私に目線を合わせて真剣な目をしたエースに私は黙り込んだ。
エースの目は何かを決意したようだった。
「オヤジ。」
「....エース、ユカコを連れて早く行けェ。」
「オヤジ、俺は、、、親父も連れて帰る。」
「....。いったろうがァ、この先の時代に俺の乗り込む船はネェ。」
「そんなもん!俺らが作る!!!」
「!!!」
パパは私たちをみつめて驚いたように目を見開く。
『...エース。...そうだよ!パパ!!!居場所ならあるよ!!!ずっと、私たちの“親父”でしょ?』
エースと2人でジッと目をパパから話さずに話す私たち。
後ろからも兄弟達の同意の声が聞こえてきた。
「オヤジィーーー!!!!まだ俺らの傍にいてくれ!!!」
「オヤジ!!まだ俺は恩を返してねぇよ!!」
『パパ。』
「オヤジ。」
『「一緒に帰ろう。」』
目から涙を流すパパにエースと笑顔でそういった。
私も涙で視界が歪んでいて、エースはそれを見るとポンポンと頭を撫でてくれた。
「....この、バカやろうどもがァ。」
パパは手で涙を拭うとニヤリとわらって
「こんな泣き虫な子供をまだ置き去りにはできねぇな。」
そういった。
『パパ、帰ろう。私たちと、いっ...』
「あきれたもんじゃのォ。」
『ッ...!!!!』
この声はっ!!!!!
「こんな家族ごっこをみせられるなんぞ、」
私の血の気が一気に引いていくのがわかる。
「反吐がでる。」
やめて、
「まだ、ひとり戦場に残り、戦うなら格好もついたじゃろうが」
それ以上、言わないで。
「結局は腰抜けの集まりっちゅうことじゃろう」
また、良からぬ光景が頭をよぎる。
「白ひげは先の時代の敗北者じゃけぇ。」
「______取り消せよ。今の言葉。」
背筋が震えあがる覇気を感じた。
私は、赤犬を見据えて、拳の震えをもう一つの手で抑えた。
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....To be continue.