-
海司で7年前のリクエスト消化してみた。「キスで栄誉を示してやる」
-
7年前のリクエスト消化しました(ドヤ!)
もう謝らない!ごめんなさい!!←
リク内容は【海司なら何でもいいから書いて欲しい……!】です。
※管理人、海司はイベントでしかやった事ないでよぉ~!ご容赦くださぁい;;
勇気の塊、初書き海司……参る!まるで愛が無いから結果はお察しよ!><!
海司が傷を負う度にあいは酷く悲しい顔をする。あいと海司は恋人同士なのだから、好きな人が傷付けば悲しむのは当然のことだった。
だから海司も、そんな表情をさせない為にケガをしないよう気をつけるが、どうしても職業柄ケガをする機会は一般人よりは多い。
病院の世話になる程の大きな怪我は少ないが、あいの護衛中に大きなケガを負った事がある。それ故にあいは海司の怪我にはどうしても敏感になってしまっている。
そして最近また、総理の娘という立場に付随する危険が及び、今日はそんなあいを護って海司が右腕に軽傷を負った。
あの謎の組織から解放されたというのに、未だにあいは平和な生活とは言い難い生活を送っている。
年頃の女の子が得体のしれない組織から狙われて怖くないはずがない。それでもあいはみんなの前では気丈に振る舞い良く笑う。
だがそんなあいも今日はそうはいかずに。落ち込んで黙ったままのあいの腕を引きながら戻って来た官邸で総理と桂木に報告を済ませ、官邸内に用意されているあいの部屋を目指す。
ドアを閉めてふたりだけになれば、あいは堪えていた涙をようやくぼろぼろと零すことが出来たようだ。
「……悪かったって、」
あいに泣かれると弱い海司は頭をかきながらもなんとか泣き止ませようと左手であいの頭を撫でてやる。
しかしあいは頭を左右に振りながらそれを拒む。海司が謝る理由などどこにもない。悪いのは全て、自分の身ひとつ守れないあいだ。
「……海司は何も悪くないでしょ、」
本当はあいの方こそ謝りたかった。謝って楽になりたかった。だけど謝れば海司を困らせるだけ。
それがわかっていたからあいはただ海司は何も悪くない、とだけ口にした。ついでに涙も止められれば良かったのに、この部屋に入った瞬間涙腺が一気に緩んで一粒だけ許してしまった。一粒零れればその後はもう決壊したかのように。
謝るのもズルい。けれども泣くのはもっとズルい。傲慢にも慰めて欲しいと思っている証明だ。悔しい、悔しい、そう思えば更に涙があいの意志に反して零れていく。そんなあいの苦悩や自責の思いは海司にも十分すぎるほど伝わっていた。
「そうだな、誰も悪くねぇよな」
海司は右腕を伸ばしてあいを抱き寄せようとするが、この傷を負った右腕はあいを泣かせている理由そのものだったので一度は躊躇い引っ込める。だが結局泣き続けるあいを見れば反射的に手を伸ばしてあいを抱き寄せてしまったが。
あやすように頭を撫でてはみるが、これが正解なのかはわからない。あいはどうしたら泣き止むのか。頭を使ってもそれはわからないままだった。
腕の中で声を殺し、肩を震わせて泣き続けるあいに海司は何も言えない。きっと、彼女は優しい言葉を求めてはいない。あいは普段から必要以上の甘やかしを嫌っているのだから。
「……ね、海司、」
「なんだ?」
この沈黙を破ったのはあいの方だった。例え涙声でも漸くあいの声が聞けた安堵に海司の声が嬉々としたものになってしまったが、もうその事に関してはどうでもいい。
あいの小さく、か細い声を聞き逃さないように耳を傾けて続きを促す。
「……なんて言って良いかわかんないし、どうしたいかすらわかんないんだけど、」
「ん、」
「でも、今はこのまま海司と話をしてたい」
「……おう」
傍に居てくれるだけで正解だ、とあいに答えを貰い海司は引き寄せる力を強くする。腕の中のあいがほぅ、と安心したように小さく息を吐き出したのでこれも正解なのだろう。
涙自体は止まったようだが、泣いた直後の苦しげな呼吸をしているあい。でもそれでも会話を止めたくないのか口から深く酸素を取り込み、深く深く呼吸する。
「なんか目がとけそう……、鼻から息出来ないし、泣くってしんどいよね」
「そうだろうな」
「赤ちゃんとか生まれて直ぐ泣きじゃくるけど、しんどくないのかなぁ」
「覚えてねぇけど……まぁ、しんどいかもな」
適当なあいの発言に適当に返事をする海司。しかしあいを甘やかす手は休めずに。ぎこちなく、滞りなく万遍なく甘やかしていく。
結局甘えてしまった、でも大好きなものをおかわりしたいあの気持ちと一緒であいはもうちょっと、もうちょっとだけだから……と、海司に甘える自分を止められない。
「あー……海司が怪我しただけでこんなにしんどいんだから、海司が死んだら私、死ぬのかも……」
「縁起でもない事言うなよ」
「やだなぁ、海司が苦しかったり怪我するのやだ」
海司の胸に顔を埋めて、存在を確かめるように、海司の心臓に語り掛けてくるようなあいの声音にどう答えてやれば良いのかわからない。
それでも何か応えてやりたくて、自分にできる精一杯で、努めて優しく……言葉を選びたい。だがそれは海司の苦手分野だ。
だからもう怪我をした腕だとかそんなのどうでも良いからあいに触れて、気持ちが伝わるように念じてみる。
大丈夫、死なない。腕だって痛くないし動く。だからお前は何も気にするな。
そんな思いを込めて、あいを抱きしめ頭を撫でてやるがそれは他力本願だと気づく。
今度は海司が小さく息を吐き、なんとか喋ろうと心を落ち着ける。
「……あい、俺はこういう時どう慰めればいいかとかわかんねぇ」
「うん……大丈夫、知ってる」
「じゃあ泣き止めよ。俺は気にしてねぇし、死なねぇし」
「……うん、そだね」
ぶっきらぼうに、だけど彼なりに優しくしようと頑張ってくれているのが感じ取れてあいはクスクス笑いだす。
漸くあいに笑顔が戻ったところで、今日はあまり彼女の顔を見ていないことに気付く。気付いたらもうあいの顔が見たくて堪らなくなったのに、彼女は海司の胸に顔を埋めたままだ。
「顔、見せろよ」
「なんで?」
「いい加減顔見たいだろ」
「まだ駄目」
あまりにも即答で海司は先ほどのちょっとセンチメンタルな空気を忘れて、いつもの態度で不満を漏らす。しかしあいが顔を上げる事はない。
「なんでだよ」
「泣き顔見せたくないもん」
「俺は見たい」
「やだ」
話している内に笑っている気配が強くなってきたあい。顔は見たかったが、あいが笑っているならそれでいい。あいには絶対笑っていて欲しいから。
泣いてばかりいたあいがやっと笑った。それが嬉しくて海司も自然と笑い出すとあいが突然ひょこ、と顔を上げる。
見たかったあいの目は先程まで泣いていたせいで赤い目だったが、いつも以上にキラキラして見えた。
「ゴメン、海司。次は気を付けるから、私」
怪我をさせたことに対する後悔や謝罪だけならただ後ろを振り返るばかりで、ただの自己満足になるけれど。
反省して、前へ進もうと思えた今なら謝っても許される気がした。それすら自己満足だと言われても仕方がない、だけど。いつだってケジメだけはつけていたい。
シャドーマンやら意味の解らない組織に狙われたり、突然お前は総理の娘だと言われても何だかんだ順応してきたあいの根底は矢張り強いのだろう。海司は安心したようにニカ、と笑う。
「怪我くらい気にすんな。男の勲章って言うだろ?」
「怪我なんて勲章にしないでよ。そんなの勲章にするくらいなら私がなんか作るし」
泣きはらした瞳で、だけど笑いながらあいは海司をまっすぐ見る。やっといつもの調子を取り戻したあいに嬉しくなり海司は触れるだけのキスをした。何度も。何度も。
うさぎの目のように赤くなった瞳に負けず劣らず、恥ずかしさに紅潮するあいの頬にもキスを落とす。そして最後に未だにしょっぱい涙の名残を舌で掬って、コツンと互いの額を重ねた。
「ありがと。海司……」
「つーか。勲章作るって何作るんだよ?」
「えぇ……考えてなかった。じゃあ、最近小杉先輩が作ったおしりワッペン、」
「要らねぇ」
即答。海司が本気で嫌な顔をするとあいがもう一度じゃあ、と悩み出すがどうせろくでもないのは解っている。
「この前やっぱり小杉先輩が、」
「お前が作れよ!」
みなまで言わせるか、と思わず海司がツッコむとあいがケラケラと大笑いしている。未だ目は真っ赤に染まったままだが笑っているあいに、海司はもう大丈夫だなと安堵した。
が、しかしだ。それはそれ、これはこれ。勲章は欲しいから引き下がらない。次の案を待つようにじ、とあいを見てやるとあいが笑うのを休んで仕方ないなぁ、みたいな顔をする。解せない。
「えぇー……そんなに勲章欲しい?」
「もらえるもんはもらっとく」
「何それ……まぁ良いけど……」
それじゃあ目を閉じて、と言われるがまま海司が目を閉じれば、頬にあいの手が添えられる。それから、チュ、と軽いリップ音を立てて控えめに唇に唇をくっつけられた。
貴重なあいからの可愛らしいキスだったが物足りず、再び自分からキスをした。深く重ねられた唇に、あいも抵抗なく受け入れる。
「……勲章ってこれか?」
「文句あるなら問答無用でおしりワッペンだけど?」
「いや。これで良い……けど、もう少しおまけつけろよ」
「勲章におまけとか……でも、」
いいよ、と少し恥ずかしそうにしながらもあいが海司にキスをする。あいからまたキスを受けて満足げに笑う海司。
怪我は出来るだけ最小限に、出来る限り無くす努力はする。それが出来たらあいがまた勲章をくれるのだろう。
それでもこの先も海司はあいの為なら何度だって傷を負う。あいを守れたなら傷跡だって海司の誇りとなる。あいを守った証として。
だがその度にあいは傷つくだろうし、怒るかもしれないし、泣くかもしれない。でも、どうか最後には笑っていて欲しい。
そう、切に願いながら海司はあいの頭頂部に頬を寄せるのだった。
キスで栄誉を示してやる
どうかずっと隣で笑っていて
リクエストありがとうございましたー!